小説における、演出の手法について解説します【小説家は自作の演出家!】

2022年12月30日

 あなたの小説のクライマックスで読者を盛り上げ、感動させ、伝えたいテーマを伝えるための手法について考えています。ストーリーやキャラクター、世界観も重要なのですが、それらと同じくらい大事なことが「演出」です。

 このエントリーでは小説の演出について考えていきます。

演出とは

 まずは演出の定義について書いていきます。辞書によれば演出の意味は下記の2つです。

 演劇・映画・テレビなどで、台本をもとに、演技・装置・照明・音響などの表現に統一と調和を与える作業。
 効果をねらって物事の運営・進行に工夫をめぐらすこと。「結婚式の―」「―された首班交代劇」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

 1の意味は要するに、複数のメディアをあわせて、統一感をもたせることですね。小説で言えば、本文で書かれているキャラクターと、表紙絵や挿絵で描かれるキャラクターのイメージを一致させるような作業です。デザインや色、振る舞いまで、統一感を出すためには調整が必要です。おしとやかで清楚な少女という設定なのに、ヘアスタイルが天に向かって髪を巻き上げる盛り盛りのデザインだと、アンマッチですよね。また、今だとTwitterで作者が発信する情報も、作品の演出の一つとして捉えられるかもしれませんね。不適切なツイートをすると、作品の昇華まで貶める可能性があります。

 2の意味は小説の内容に関わる部分ですね。冒頭で書いたように「小説のクライマックスで読者を盛り上げ、感動させ、伝えたいテーマを伝える」ため、ストーリーの進行に工夫を巡らせることです。作家にとって重要で、身につけるべきはこちらの力です。

 小説は、映画のように音楽や映像はありませんが、読者の想像力を刺激することで映像を作ることが可能です。そのために必要となるのが、作者の意図が正しく伝わる文章であり、それこそが小説における「演出」となります。

小説家は物語の演出家

 先ほど作者の意図が正しく伝わる文章こそ、演出であると書きました。

 だとすれば演出をつかって作品を盛り上げる小説家=演出家ではないでしょうか?

 もともと演出家は、演劇やオペラ、バレエなどの舞台をまとめ上げる専門家でした。作品の芸術性を引き出し、作品全体の責任者となる存在です。

 演出家は、演劇、オペラ、バレエなどの舞台をまとめ上げる専門家。作品の芸術性を引き出し、作品全体の責任者となる。演劇の場合、まず戯曲を選定し、プロデューサー、脚本家と舞台の方向性、演出のコンセプトなどを固めていく。次に劇場を決定し、舞台装置から客席、楽屋まで劇場のすべてを把握する。もちろん、脚本のチェックも欠かせない。戯曲のメッセージ性、演出家の個性を鮮明にするため、脚本家と打ち合わせを繰り返し、台本を完成させていく。なかには、脚本を自ら手がける演出家もいる。演技者、俳優の選定も大切な仕事だ。所属する劇団の俳優たちから作品に合った者を選んだり、オーディションで新人を発掘したりする。並行して、舞台美術、照明、音楽、衣装などの専門スタッフと演出プランを確認し、制作を指示する。稽古が始まると演出家は演技指導にあたる。舞台表現は、俳優のセリフと動きが重要なので、演技指導は最も大事な仕事といえる。劇場・舞台のほか、テレビドラマや映画などの映像分野、イベントステージの企画・演出などで活躍している演出家もいる。

演出家の仕事内容 – マナビジョン – ベネッセ

 では小説家はどうでしょうか?

 作品の芸術性を引き出し、作品全体の責任者である点は同じです。テーマを選定し、物語の方向性やコンセプトを高めていき、舞台となる世界観から、舞台装置であるキャラクター、脚本たるプロット、キャラクターのセリフと動きを作者の意図が正しく伝わる文章で書く……似ている部分ばかりですね。

 小説家は物語の演出家である必要があります。

 

小説の演出方法

 ここからは小説の執筆で利用できる演出方法をご紹介します。演出とは「小説のクライマックスで読者を盛り上げ、感動させ、伝えたいテーマを伝える」ため、ストーリーの進行に工夫を巡らせること……いうなれば「物語をよりいっそう効果的に見せる」ことです。

 「演出」することで、読者の心に、しっかりと届くようにするのが目的です。

物語の画角

 物語の画角とは、作家が物語を書くときの「視点の位置、解像度の高低、解釈の差異、独自要素の投入」を総称した概念です。

 これは歴史小説を題材にするのがわかりやすいです。

 信長や秀吉や家康といった超有名どころを主役として扱った小説はいくらでもあります。何年に生まれて、どんな出来事があって、いつ死んだかは歴史の教科書にも載っており、誰でも知っていますね。それでも信長や秀吉や家康を主役にした小説は今も作り続けられています。なぜなら「視点の位置、解像度の高低、解釈の差異、独自要素の投入」といった物語の画角が違えば、物語も違って見えるからです。同じような物語を作り続けても、それは縮小再生産にしかなりません。しかし新鮮な角度から物語を再構築することで、古びた題材が急にきらびやかに見える場合があります。

 例えば大河ドラマ「麒麟がくる」においては、「明智光秀という、世間的には「反逆者」「裏切り者」のイメージが強い人物を主役に添え、義の人として描いたこと」が新鮮でした。長谷川博己さんの好演もあり、この大河ドラマの明智光秀は、「正直者で義に厚い人、応援したい人、いつまでもいて欲しい人」に変わりました。裏切り者のハゲから、とんでもないパラダイムシフトではないでしょうか。

※母親に愛されず愛を渇望し続けた織田信長、決してひょうきん者ではない豊臣秀吉という独自の解釈もあり、非常に面白かったです。物語の画角は、その差配一つで史実の人物に新しい色をつけられます。歴史小説を書く上では非常に重要な技術ですね。

 

始点と終点

 始点と終点とは、物語をどこから初めてどこで終わるかを決めることです。何を言っているのか? 例えば恋愛小説で「主人公とヒロインが出会うところから、恋人になるところまでを書く」のか「恋人になってから、結婚するまでを書く」のかは全く違う物語になります。

 つまりどこを「切り取る」のが一番盛り上がりそうか(ハイライトになるか)を考えることが重要です。思いついたの全て書こうとしたら起伏がなくなってしまうし、永久に終わりません。

 しかし1つだけ鉄則があるとすれば、オリジナル小説で書くべきは「歴史的事件の始まりか終わり」です。先ほどの恋愛小説であれば、主人公とヒロインが出会うのは、二人の人生にとって「歴史的事件の始まり」ですよね。結婚にしても「歴史的事件の始まり」です。それらは人生のハイライト足り得ます。

 一方、結婚したあとの夫婦生活を描写するだけの物語は、ハイライト足り得るでしょうか。日常系として受け入れられるかもしれませんが、起伏がなくつまらないものになりがちです。どうやって盛り上げるか考えてみてください。

 盛り上げるために、最後に離婚する展開を書いてしまうと、それは「歴史的事件の終わり」を書くことになります。そう言われると、盛り上げるためには歴史的事件の始まりか、終わりを書く必要があるのかも?と感じていただければ嬉しいです。オリジナル小説で書くべきは「歴史的事件の始まりか終わり」という話は以下のエントリーも参考になります。

 

多重構造・対比構造

 多重構造とは、物語に二面性を持たせることです。登場人物を、ある感情や概念を擬人化したものとして描いたり、舞台を象徴として用いたりします。そうすることでひとつのエピソードに、もうひとつの側面を付け加えます。表面上の物語と、その水面下で進行する物語。表面上の物語は、純愛だったり、悲恋だったり、アクションだったり、バトルだったり、分りやすいものにする。そして水面下の物語を、社会批判や、死生観、愛することとは何なのかという教訓めいたものにすると、物語に深みがでます。

 また、多重構造を深化させるのに必要不可欠なものが対比構造です。物語の中で対立する概念や、感情を擬人化させて動かして、ぶつかり合わせることで、どちらが正しい?と読者へ疑問を投げかけ、物語の中で議論を進行させます。

 例えばリコリス・リコイルにおける千束と真島の対決なんかはまさに多重構造・対比構造の成功例です。表向きはガンアクションですが、水面下では以下のツイートにもあるとおり、「尊い日常を生きる(悪く言えば)生活保守VS血の雨降らせてでも欺瞞に満ちた安寧をぶち壊し正義を通す」という思想の対決が行われていました。そしてこの対比構造を成功させるためには、日常の尊みを活写しないといけなくて、そしてそれは成功していました。

 

伏線と回収

 続いて、伏線について。伏線については様々な考え方があります。

・最初から伏線をすべてばら撒いた状態で回収していく形が望ましいという意見……ミステリー小説などで「答えは全て冒頭に書いてある」という形式を目指し、推理に必要な情報や小道具は最初からばら撒かれていて、後付けや、小出しの回収は極力避ける考え方。

・後付できる空白をつくりながら進めていくという意見……ワンピースの尾田栄一郎先生は「僕は伏線を張ってるんじゃなくて、後付けできるように空白を作っておくだけ」ということをインタビューでおっしゃっています。これってアイデアを閃く上でとても重要なことだと感じます。例えば空白を10個つくっておいて、その10個の空白が1つにつながるようなアイデアが生み出せたら、過去にばらまいてきた10個の空白が壮大な伏線のように感じられます。

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※ワンピースにおいては、ヒトヒトの実モデルニカの伏線として、以下のような意見があります。過去に描かれていた絵に意味が付与されて、伏線のように感じられます。
 54巻531話の扉絵に「カニ」が描かれていて、この扉絵には「太陽」と「紙(神)」そして、「カニ」が描かれている……さらにチョッパーの切る絵がちょうど反転しているのが「鏡」の代わりになっていてカニを反転してニカ、つまり「太陽の神ニカ」を表している。

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https://koukogaku-onepiece.com/nika-rufi1045/

・風呂敷を徐々に広げていき、最後には綺麗に閉じられていく形がいいという意見……私自身はこの意見です。例えば1話の冒頭が最終話の最後とつながっているような、対比構造の伏線が好きです。改めて1話から見たときに、すべての展開に意味があり、演出上の意図もあったのだと、納得がいくからです。そして風呂敷の広げ方とたたみ方として、例えば全10話の物語ならば、7話までは広げて残り3話で畳んでいくくらいのペース配分が好きです。広げる速度の2倍程度のスピードで閉じていくのが心地よいと感じます。

 

フィードバック

 物語を展開させるときに、自分の想定する読者フィルターを通すというものです。地の文や台詞が、読者に「その後の展開をどう予想させるか」を操作できるようにし、構想の中に「読者が予想するであろう展開」を組み込みます。「読者の期待と満足度の関係(読者は期待外れなストーリーを嫌う)」の記事でも書きましたが、読者に予想させることは「期待通りだけど、期待を上回ってきた」もしくは「予想できたはずなのに、予想できなかった」ポジティブな結果を作り出す技になります。

 

リフレイン

 リフレインは作中で同じセリフを、別の視点や角度から幾度も、時間軸とともに繰り返すことです。よくあるのは、作中で出てきた謎かけ。抽象的な内容で、一度読んだだけでは分らないような文章を台詞や地の文に仕込んでおき、その真意が明らかになった瞬間に、もう一度ぶり返す。名探偵コナンで、謎がすべての謎が解けた瞬間に、犯人の怪しい言動や、現場の不審点がフラッシュバックして頭の中にずらずらと並びたてられるようなイメージです。リフレインは、読者が忘れているかもしれない設定を、リフレインして、そういう設定あったねと思い出させる場合に使うこともあります。

 

シンクロ

 シンクロはまったく違う箇所で、同じタイミングで別々のことが起こる展開です。それによって事実を濁して伝えることができます。別々のことは、対比するようなことであったり、一方がもう一方を匂わせるようなものにします。例えば、戦争に行った夫が心臓を撃たれた瞬間に、帰りを待つ妻の靴紐が切れてしまうといったもの。この演出は、悪いことが起きると靴紐が切れる……といった伏線を手前で書いておくことで、より効果的に働きます。

 

ぼかし、婉曲

 ある事柄を表すのに直接的な表現をわざと省くこと。あえて、明確には書かないこと。または、前提としてある設定を伏せた上で物語を展開させ、その伏せた前提を読者に読み取ってもらうという形で書くこと。キャラクターの内面を吐露しないで心理を読者に読み取ってもらうように書くこと。一人称に見えていない全てのこと。

 これは読者にとってはある意味の読みにくく、伝わりづらい危険性がありますが、効果的に働けば余韻を与えられて味わい深い文章になるはずです。

 リコリス・リコイルのヒロイン錦木千束の描き方は、前編を通してこのぼかし、婉曲がありました。本編ではキャラクターの内面をあえて吐露させず、仕草や他のキャラクターから見た姿だけで描いていました。それによって千束は内心にどんな闇を抱えているか描かれず、完全な光として描き切られました。小説ではこのような表現は難しいかもしれませんが、キャラクターの描き方として参考にしたいキャラクターです。

 

隠喩、暗喩、情景描写

 「暗に何かをほのめかすような文」のことです。キャラクターを暴れ馬に喩えたあとで、主語が「この馬」に置き換わっていたり、ニンジンをぶら下げたら喜んで走るか?などと馬に関する逸話や寓話を引用したりすることです。また、キャラクターが落ち込んでいるときは雨が降っていたり、キャラクターの迷いが晴れたときに雲間に太陽の光が指したり……と風景描写と心理描写をリンクさせて描くこともあります。

 心理描写、人物描写、状況描写の3つの描写の使い方については下記のエントリーも参考になります。

 

倒置型演出

 倒置型演出とは、「セリフや地の文でルールや設定を説明することを省くため、そのルール、設定を実際のアクションに起こしてまず読者に見せつける」という演出方法です。例えば学校を舞台にしたデスゲームの説明で、学校の外に出たら死ぬ……というルールを主催者がわざわざ説明するのではなく、学校の外に出るモブキャラが死ぬことで見せつけるのも倒置型演出の1つです。「アクション→説明」と説明の順番を倒置することで、読者に情報を効果的に伝える手法ですね。

 

置換型演出

 置換型演出は説明を描写に完全に置き換えることで、読者に情報を効果的に伝える手法です。セリフを使わずに、〇〇がXXであることを伝える手法とも言えます。
 リコリス・リコイルばかりを例にあげて恐縮ですが、錦木千束の描写にも、この置換型演出は使われていました。彼女は令和にアップデートされたスーパーヒーロー像であり、強くて優しいを具体的なエピソードを踏まえて表現したキャラクターです。このキャラクターがどんな人柄であるか?は言葉でなく、行動で完全に描かれています。現代における強さと優しさをどう表現していたかは以下のエントリーに書いています。これだけ丁寧に描写すれば、令和のスーパーヒーロだと読者に感じさせることができますね。

 

ヘイト管理

 近年、Web小説で重要視されている演出がヘイト管理です。ヘイト管理とは読者が見てイライラするキャラクターに対して、罰を与えたり名誉挽回のチャンスを与えて読者のイライラを緩和することです。例えば主人公を冒険者パーティーから追放した悪人に対し、読者のイライラが消えないうちに罰を受けさせるなどです。

 また、主人公の凄さ書いたり、敵を強く書くために、味方のモブキャラをあえて無能に書くことがあります。しかしあまりに主人公の足をひっぱるキャラクターは見ていてイライラします。どこかで活躍の場をあたえて読者の好感度を高めるのも、ヘイト管理のポイントです。

 

感情曲線

 どんな小説でも漫画でも、ストーリーが含まれたエンターテイメントは必ずと言っていいほど、「感情曲線」が戦略的に入っています。そしてこのストーリーを決定づける「感情曲線」は、6パターンしか無いことがわかっています。6パターンのどの感情曲線を使えば、作家の書きたい物語を書けるのかを事前に抑えておくことはプロットづくりや物語づくりの基礎となります。6パターンの感情曲線については以下のエントリーが参考になります。

 感情曲線6パターンから、まず読者が物語にどのような展開を期待しているか?を考えます。

 そしてその期待に対して、
・期待に応える(プラス要素)
・期待の裏切り(概ねマイナス要素)
・失望の維持(マイナス要素)
・失望の裏切り(プラス要素)
という4つの期待値管理をどう行っていくかが重要です。期待値管理については以下のエントリーが参考になります。

 読者の期待と満足感はリンクしています。「期待通りだけど、期待を上回ってきた」もしくは「予想できたはずなのに、予想できなかった」ポジティブな結果を目指すことを心がけるといいですね。期待と満足感の関係については以下のエントリーを参考にしてみてください。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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