リコリス・リコイルが最高に面白い4つの理由 | 私はここが好き

2022年9月27日

 #リコリコ #リコリス・リコイル 最終回、第13話を観ました。
 この作品に出会えてよかったと心から思えるラストでした。
 素晴らしい作品を作ってくれた制作スタッフの方々に心から感謝です。

 このサイトは物語の書き方、面白さや楽しさを追求していますので、作品感想はただの感想で終わるわけにはゆきません。私自身、久しぶりに心からハマることのできたこのアニメ。何がそれほど琴線に触れたのか、リコリス・リコイルが最高のアニメになった理由を4つ書いていきます。

何より上品であった

 私がリコリス・リコイル最終話を観たあとに、この作品で一番好きだった部分は何か?と考えて、一番ピンときたのは「上品な作品だった」ことです。

 ぶっちゃけ12話を見終えたとき、錦木千束と井ノ上たきなは最終話で感情の一線を越えてほしかった(お互い泣きながら殴り合うとかね)ですし、何なら千束と真島で感情の一線を越えてくれてもよかった。というのも1話から12話までを観たときに、キャラクターの喜怒哀楽が豊かに盛り込まれている作品だとわかったので、最終話までで描かれていない千束とたきなの泣き顔が、最終話で登場するはずだと予想していたからです。千束は、真島との対話か、たきなとの対話で泣くんだろうと漠然、感じていました。

 ですが、スタッフは千束もたきなも泣かさなかった。感情の一線を越えなかった。

 凡庸な作品であれば、最終回、千束とたきなが顔を赤らめて百合的関係を示唆するようなことをしたでしょう。たきなは視聴者の代弁者です。3話で千束が好きになったし、8話の頃には本気で千束の身体のことを心配していました。9話で千束のために千束と別れて、12話でたきなが「千束が死ぬのは嫌だ」と激重感情をぶつけたとき、視聴者の誰もがこう感じたでしょう。

「たきなの想いが千束に伝わらね―!!」

 つまるところ視聴者の想いが一切千束に伝わってないんですね笑

 その12話を経ての最終13話ですから、私たちはたきな(視聴者)の想いが千束に伝わってほしい、伝わるはずだと願って観ていました。しかし結果は伝わらず。千束も、たきなもお互いを見るときに顔を赤らめたりすることなく、あくまで相棒で友人関係のまま完結しました(千束と真島も間接キスのシーンこそあれ、恋愛感情に発展するような様子はないまま終わりました)。

 消化不良……そう感じる視聴者もいたはずです(私も1回目の視聴では消化不良を感じました)

 しかし改めて考えると、私はこの上品さが好きだなと感じました。

 たぶん千束とたきなの間に恋愛感情などなくて、若者ならではの煌めく一瞬の青春の中で、お互いを本当に大事にできる最高の友達と会えた……そういう真っ直ぐで純粋に相手の幸せを願うプラトニックな感情なんだと思う。それを、欲望と性欲にまみれた視聴者がはたから見て、もっとくっつけ、一線超えろと煽っているだけで笑

 結局、リコリス・リコイルのテーマってミカの台詞に現れていると感じます。

「導いてくれるのは子どもたちなんだ。私たちが知らない世界に。彼らの選択を邪魔してはいけない」

 これ、視聴者の願望に対しての手強いカウンターパンチですよね。

 大人になると、親しい2人の間には身体的な関係があることを知ってしまうし、身体的な関係があってこそ繋がっていられるとうそぶく。家族とは、身体的に繋がっていて子供がいることだと考える。

 しかし、「愛の形は様々なんだよ」「何はいてようが、たきなの自由だろ」に代表されるように、リコリス・リコイルは作品の節々で多様性の許容を投げかけてきました。ですから、最終回の展開は、愛の形や家族の形って、おっさんおばさん世代の考える関係だけじゃないよと示されたように感じています。ただ、プラトニックな愛って脆いもので、千束とたきなの関係が、真島の一物ひとつでひっくり返る危ういバランスにあります。そんな本来アンバランスなものが、最後まで「バランス」をとっている点も、リコリス・リコイルの魅力です。私は、この性欲に堕ちていないバランス感覚に、上品さを感じました。

 真島は善悪のバランスといった大きな話をしていましたが、Twitterで反応を見ているとポカンとした視聴者さんもいたようです(私は世界レベルの話も大好きですけど)。ただ、そういった視聴者さんにスタッフが示したものが、千束の物語にフォーカスすると見えてくる、男と女のバランスなのかなと思いました。色恋ざたのほうがわかりやすいし、この作品の上品さを示していたなと感じます。

 最後までバランスを取りきったスタッフが凄いですし、監督が凄いです。
 欲望に満ち溢れた現代に、プラトニックを貫いたことが、この作品の価値だと信じます。

※リコリス・リコイルが上品?4話のパンツ回や8話のうん○回は?と思われる方もいるかも知れません。ですが私はどちらも下品なネタを上品に扱った回だと感じます。4話で女性ものの下着をはいた姿は描写されていませんし、「何はいてようが、たきなの自由だろ」という、くるみの名言もありました。8話については実際にあった商品に近いものですし、8話自体が千束と真島、千束とたきなのそれぞれに見せ場があり、激しくバランスの取れた構成でした。まさに欲望だらけの現代に撃ち込んだ弾丸。

 私が生涯で一番好きなアニメは「ふしぎの海のナディア」というNHKでやっていたアニメ(エヴァよりこっちが好き)なのですが、理由は子供にも見せられる真面目で健全で学びのあるアニメが好きなんですね。リコリス・リコイルも13話を経て、同じくらい真面目で健全で学びがあるアニメだと感じています。NHKで再放送やってほしいです(たぶん、やるでしょう?)。

時代性のある世界設定

 世界設定にも触れておきたいです。私がリコリス・リコイルを観始めたとき、一番最初に心惹かれたのは冒頭の世界設定でした。

平和で安全、きれいな東京。法治国家日本、首都東京には危険などない。
社会を乱すものの存在を赦してはならない。存在していたことも許さない。
消して消して消して綺麗にする。
危険はもともとなかった。平和は私たち日本人の気質によって成り立っているんだ。
そう思えるのが一番の幸せ。

 明るいストーリーでごまかされていますが、凄いディストピアですよね。笑 そして私はディストピアものが大好きなんです(理由は、幸せな今の先には不幸な未来があるという推測が働いているから。そもそも生物学的なつくりとして、人は幸せに満足するようにはできてないそうです。人類は将来のリスクを見越せるから生き延びてきたので、いまが幸せであればあるほど、ディストピア的な未来を考えてしまうのは仕方ないようです。私は今ちょっと幸せなので、ディストピアものに興味があります)。

 そしてリコリス・リコイルについては、ディストピアをつくる側を主役にしたところが、現代的だなと感じます。

 例えば10年前、堺雅人主演の「リーガル・ハイ」というドラマがありました。この作品において主人公は一見悪徳弁護士ですが、実は熱い魂を持つ男で「人間の愚かさを愛せ」と皆に説く場面があります(これは名シーンとしてネットで語り継がれています)。

 このリーガル・ハイの記憶が焼き付いていた私は、10年前は悪に見せかけた善の主人公がいたなと感じており。リコリス・リコイル1話冒頭を観て、いまは善に見せかけた悪の組織(DA)が主人公側になり得るんだと感心しました(しかも13話までDAは一貫して主人公側の組織として描かれ、守られました)。

 作中では善も悪もなく、誰もが自分を善人だと思って生きていると表現していました。ただ、一般人からすると怖い存在ですよね、リコリスって。下手したら殺されますし……。そして相手の言い分は「自分が善だと思えば、なんでも許される」です。これはディストピアの極みだと思います。このリコリスのいる組織が主人公側で、正義として描かれるくらいに、時代は変わったのだなと。

 おそらく似たような設定の組織を使った作品はこれまでもあったと思います。ですがリコリス・リコイルは、ドローンや街中のカメラを使った監視社会が現実のものとなり、捏造・隠蔽が実際の政治でも横行する現代につくられたからこそ現実味があって、時代性を感じます。早すぎても遅すぎても時代性はもてなかったと思います。

 そして、主人公側に敵対する真島はリコリスの存在を暴くことで、人々に真実を見て自分の頭で考えろと主張します。このアニメの放送期間中に安倍元首相の死というイベント(と宗教関連の暴露)が起きるなんて……時代を切り取った作品になったなと感じます。厄災をテーマにした、まどかマギカの放送期間中に東日本大震災が起きたのと同じですよ。象徴的なイベントと同じ時期に、象徴的な作品は生まれます。

 この時代性をもってしまった世界設定も、リコリス・リコイルの魅力です。10年くらいは古臭くならないと思います。

 この時代性や、裏社会で暗躍するリコリスという設定の魅力(都会の迷彩服は女子高生の制服、という設定からリコリスは少女であることに強い説得力が生まれている)が、2期や劇場版を作れる余白となっています。ラブライブシリーズのスクールアイドルという仕組みと同じで、世界観が魅力的なので、1期の主要キャラクターを使わなくともスピンオフが成り立つレベルです。素敵。

二項対立(対比)の仕掛け

 二項対立とは、言語学者フェルディナン・ド・ソシュールが提唱した概念で、対立する2つの要素のペアのことを指します。例えば人間は「男と女」という2つの要素でできています。この世界は沢山の二項対立で成り立っていることがわかるはずです。

 人は物事を理解するとき、二項対立に沿って考えることがよくあります。例えば光と闇の戦いというと、何と何が戦っているのかがわかりやすいですよね。また、対比する表現がでてくると、両者が引き立つというメリットもあります。

 リコリス・リコイルは、物語を理解するための二項対立が至るところに仕掛けられていました。例えばいくつかあげてみましょう。

・太陽のように自由で明るい錦木千束と、泥臭く地面を這う井ノ上たきな
・感情を表に出せなかった1話たきなと、感情を破裂させる12話たきな
・居場所を失った1話たきなと、居場所を得た3話たきな
・実は一番スタンドプレーに走る錦木千束と、チームプレイ第一の春川フキ
・天才のウォールナットと、凡人のロボ太
・目がいいという光のある環境で最強の能力と、耳がいいという光のない環境で最強の能力
・DAの目的(隠蔽)と真島の目的(暴露)
・4話で千束が切り出したデートと、9話でたきなが切り出したデート
・7話の覚悟と、13話の覚悟
・正直者のシンジと、嘘つきのミカ
・泣かない子どもたちと、泣く大人
・現状維持しようとする千束と、世界を元の姿に戻そうとする真島
・朝の静けさが好きで物語が始まり、夕暮れの静けさが一番好きで物語が終わること

 千束とたきなの対比は言わずもがな。視聴者は千束目線でも物語を観られますし、千束に納得できない部分ではたきな目線で物語を観、感情移入することができました。(2人のキャラクターを同調させず、別の視点から物語の見方を提供するのは、バディものの正しい使い方な気がします)

 また、私なんかは1話と13話で対比する表現がでてくると、最初から1話から13話まで設計されて作られたのだなと感じます。また、錦木千束と真島の設定自体が対比的に作られており、設定の時点から二項対立が徹底されていることを理解できます。

 例えば私が自分で物語を書くとき、どうしても場当たり的にストーリーを進めてしまうことがあり、思ってもみなかったところに着地することがあります。それが楽しくもあるのですが、最初と最後がうまく対比されていて綺麗に着地している作品に憧れがあります。リコリス・リコイルの13話Bパートで夕暮れのシーンを見たとき、見事な着地だったなと胸が熱くなりました。

枠外の物事とのシンクロ

 この記事では最後のパートになります。リコリス・リコイルの魅力としてぜひ紹介したいのは、枠外の物事とのシンクロについてです。例えば公式のキャラクターなりきりTwitterアカウントが、作中でネットに上げた写メをツイートしたり、最新話の内容を告知したりする。例えば喫茶リコリコのTwitterアカウントが、10話のあとで閉店したりする。

 これら作中の出来事を現実とリンクさせることで、視聴者はリコリス・リコイルのキャラクターをよりリアルに身近に感じることができました。そして非公式のなりきりアカウントも大量に生まれました。

これ、公式がキャラクターのなりきりアカウントで発信しているからだと思うんですよ。あわよくば公式と間違えてフォローしてもらえないかな……という下心をいだくアカウントは大量にあるはずです。

 土曜日に最速配信、次の火曜日にAmazonプライムなどの動画配信サイトで配信、木曜日に次回予告、金曜日にラジオ配信というスケジュールも素晴らしくて、1週間毎日リコリコを楽しめる仕組みがつくられていました。

 そして枠外とのシンクロという意味合いで外せないのは、EDテーマである「花の塔」です。この曲、第1話から聞いておくと第3話で、あー、たきなの曲だったんだと視界が完全に開けます。そして花の塔の歌詞を調べて、2番の歌詞は誰視点だ?と考察するところまでがセットでしょう。2番は千束かな?やっぱりたきなかな?と推察しながら物語を見進めることで、「花の塔」に深くハマっていく人が続出しました。私も、千束は最後いなくなって、それでも前を向くたきなの曲なんじゃ……と考察していたときが懐かしいです。

 さらに枠外とのシンクロで外してはいけないのが誕生日と花言葉です。たきなの誕生日が8/2、千束の誕生日が9/23(最終回1日前)で、放送中に誕生日を祝える下地ができていました。その上でたきなの誕生である8/2の花言葉は下記、さらに8/2はパンツの日。どこまで物語とシンクロさせるんですかね、スタッフは。

 むしろ花言葉から誕生日を選んで、8/2がパンツの日だったから、第4話をパンツ回にしたのかもしれません。だとしたら圧倒的な発想力に畏怖を覚えるレベルです!

誕生日誕生花花言葉
8月2日キキョウ「永遠の愛」「誠実」「清楚」「従順」
8月2日カンナ「情熱」「快活」「永遠」「妄想」
8月2日ヒマワリ「私はあなただけを見つめる」「愛慕」「崇拝」
8月2日オシロイバナ「臆病」「内気」「恋を疑う」
8月2日ヤグルマギク「繊細」「優美」「教育」「信頼」
8月2日ノコギリソウ「戦い」「勇敢」「治癒」

 もちろん千束の誕生日である9/23も凄いです。なんと彼岸花=学名リコリス・ラジアータ。ダブルミーニングが強すぎませんか?花言葉もまさに千束ですよね。千束であり、リコリスであり、彼岸花であり、ラジアータであり……さらにリコ(利己)的な感情であるわけです。マルチミーニングのピースのはめ方が半端ないです。

月日誕生花花言葉
9月23日ヒガンバナ「悲しき思い出」「あきらめ」「独立」「情熱」

 花言葉やこの日なんの日、英語の学名と、日本語の意味合いがこれ以上ないほど収まっていて、私はこの設定だけで美しさに涙が出てきます。もちろん話の展開もそれを踏まえていますし、最後まで完璧にピースをはめてくれました。だから私はリコリス・リコイルという作品が大好きになったのだと思います。

まとめ

 リコリス・リコイルの何が面白かったのかを、4つの視点から言語化しました。

 何よりも最初に書いた「上品な作品」という点に尽きるなという気がします。上品だからこそ色気が出るし、バランスを崩して誰彼のくっつくシナリオが観たくなるんですよね。バランスのとり方が天才的なアニメだったな、と感じます。

※キャラクター観点はプライベートな視点も入るので別途書きます。

 ブルーレイの1巻が発売されています。1巻には1~3話が収録されていて、最序盤の一番いいところ、たきなが居場所を得るまでのストーリーが詰まっています。3話最後のシーンはエモいを映像化するならこれしかないというシーンなのでぜひ観てほしいです。まわりのモブに何を言われても、たきなを肯定する千束が素敵すぎますので。

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ここまで読んで頂きありがとうございました。
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