【神作品の裏側】Newtype 2022年10月号リコリス・リコイル制作陣インタビュー

2022年9月25日

 Newtype 2022年10月号を購入しました。

 お目当てはもちろんリコリス・リコイルの最終回前の特集です。メインキャラクターの声優さんそれぞれのインタビューに加えて、脇を固めるメンバーのQ&Aも記載されていたり、特典のクリアファイルがあったりとファンには垂涎の内容でした。

 中でも足立監督、ストーリー原案のアサウラさん、キャラクターデザインのいみぎむる先生による振り返りと裏話が作家目線でも面白かったです。

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世界観設定の冥利

 当初案からの変遷に、世界観設定の冥利を感じました。最初は学校生活を送りながら、放課後に銃を撃って仕事をこなすスタイルだったそうです。

アサウラさん
最初に考えたものはフキが主人公だったんです。ふだんは学校生活をキャッキャしながら送っている女子高生が、放課後は銃を撃って仕事をこなすという作品を提案したんです。

 そこから現在の喫茶店スタイルになるまでに議論があったと思いますが、私なりの観点で喫茶店スタイルのメリットを考えてみました。

・動かすキャラクターを絞ることができる

(学校生活にするとどうしても20名や30名のキャラクターを描写したくなります。まどマギのように中沢くん1人だけネームドにして、クラスメイト感を出す方法もありますが……。余分なキャラクターは出さないほうがいいです)

・異なる年齢層のキャラクターが自然と存在できる

(学校生活にすると、どうしても同年代や上下1年くらいの絡みが多くなります。リコリス・リコイルのヒロイン錦木千束の魅力は誰とでも分け隔てなく接するところにあると感じますが、もし学校生活レベルでの描写だと世界観が狭いように感じます。大人も子供も老人も自然にいる世界観だから、錦木千束は輝いたのだと感じます)

・他人に対する態度を見ることができる

(喫茶店で働くということが、まず精神的・経済的な自立を表しますし、全く他人に対して笑顔で接するとか、そういった他人に対する態度を表現する上でも喫茶店スタイルは適切だと感じました)

・おいしい食事は視聴者の興味をひきつける

(喫茶店スタイルだからこそ、美味しそうなデザートを自然と登場させることができます。なおかつそれを自分たちで作っているということも自立を示すのによいポイントだと感じます。学校生活の合間に美味しいものを食べに行く……という消費一辺倒でなく、つくる側でもあるというのが、キャラクターを一層自立した存在にしていると感じます。コラボの可能性も広がります)

・喫茶リコリコという拠点ができる

(喫茶リコリコという専用の拠点があることで、地下に射撃場をつくったり、倉庫に大事なものを保管したりできます。また、帰りたい場所としても機能しているのが素敵です。最後の冒険の際にはCloseして旅に出ました)

10代の女の子が危険な仕事をする理由――が生んだ世界観

 また、インタビューの中で、足立監督が興味深いことを話されていました。

足立さん
この企画を知って、まず10代の女の子が危険な仕事をする理由を考えなきゃいけないよなと思いました。

(中略)

かなり昔からこの組織があって、もしかしたら織田信長や平将門などの歴史的用心はDAに暗殺されたのかもしれない。実社会の真実を「嘘」が支えているという世界観がいいなと思ったんですよね。

(中略)

われわれが気づいていないだけで、世界が賛美するゴミひとつ落ちていない「美しい日本」は、実はDAのような得体のしれない組織に守られていたとしたら皮肉だし、知らないだけで有り得る話のようにも思えそう。

 リコリス・リコイルは世界観が魅力的です。なぜ魅力的なのかと言うと、現代の日本の裏で実際にありえそうな、ありえる嘘を描いているからだと思います。

 この魅力的な世界観は「10代の女の子が危険な仕事をする理由」からはじまったと知って驚きました。お話を作り込む前に、まず何故?からはじめて設定を固める作業があったのだと思います。ひとりで創作をしているときに飛ばしがちな工程です(この設定面白そうだからとりあえず突っ走ってみようとなりがち)。

 ここからの学びとしては下記だと思います。

1.まずやりたいシーンを考える
「10代の女の子が危険な仕事をする」

2.なぜそのシーンが発生するのかを考える
「10代の女の子が危険な仕事をする理由」

3.理由には、実社会で知らないだけで有り得る嘘がいい

 

 3.の塩梅が難しいですが、魅力的な世界観をつくるための一番のポイントですね。

 設定からして嘘だと「現代ファンタジー」っぽくなってしまいます(空中都市とか)。ですが実社会に影響を及ぼさない範囲で、実はこういう裏社会があって……だとリアリティが出ます(名探偵コナンの黒の組織もそうですね)。

 現代ものを書く上では、上記の塩梅は要チェックです。重要なのは表に出ないこと、一般人が知らないけど裏ではこういう組織や仕組みがあると示すことです。

エピソードの取捨選択

 最後にもうひとつご紹介します。足立監督のコメントで、1クールというがあるから「たきなのエピソードをスパッとカットした」旨の発言がありました。

足立さん
初期はたきなにも暗くて重いバックグラウンドがありましたよね。でも1クールじゃそれを描き切れない。スパッとカットして、千束のストーリーに集約しました。

 この決断がリコリス・リコイルを名作にしたと感じます。1クールという制約がリコリス・リコイルにとって必要だったんですね。たきなのバックグラウンドをスパッとカットしてもらったおかげで、たきなに関する余計な情報がノイズにならず、私たち視聴者はたきなに感情移入して千束と向き合うことができたと感じます。

 Web小説のよくないところは長く書こうと思うと、どこまでも長く駆けることです。リコリス・リコイルからの学びとしては、自主的にでも構いませんので長さを切って、その中でベストの取捨選択を行うことだと感じます。

まとめ

 リコリス・リコイル目当てでNewtype 10月号を購入したので、インタビュー記事の中から気になるところを抜粋してご紹介しました。声優さんのインタビューも、それぞれのキャラクターを深く知る上で非常に役立つので、ぜひ手にとって読んでみてくださいね!まだ、購入間に合います!

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