「リコリス・リコイル」はバディものだったのか? | 令和のスーパーヒーロー「錦木千束」を語る

2022年11月19日

 2022年夏アニメ、リコリス・リコイルが終了してからしばらく経ちますが、まだリコリス・リコイルのことをよく考えています。

 ギャグタッチの明るい作風、可愛い女の子二人のバディもの、ガンアクション、令和のしぶりん、映画のパロディ多数など取っ掛かりの多い作品で、幅広い層にアピールしながらズブズブにハマる人たちもたくさん出てきました。

 そんなリコリス・リコイルに対して、私がずっと考えていたのは、この作品はバディものだったのかどうか?でした。

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リコリス・リコイルはバディものか?

 私はリコリス・リコイルには2人の主人公がいるものの、それがバディものに見えませんでした。

 錦木千束(金髪で赤い制服の彼女)と井ノ上たきな(黒髪で青い制服の彼女)は最後まで錦木千束がリードしており、相棒を心配する感情はたきな→千束のいち方向に見えました。

(12話で「千束が死ぬのは嫌だ」と言うたきなからは、千束を大事にしている大きな感情を感じられました。けれど千束は常に自分の気持ちに正直であって、たきなのことをどう想っているかは最後まで明確に描かれませんでした)

 また、バディものであれば、錦木千束の持っていないものを井ノ上たきなが持ち、補い合うように物語を紡ぐ形がセオリーです。ですがリコリスリコイルについては千束が(物語の障害となる敵を倒す能力を)全て持っているので、たきなの出番は基本的にありません。

 もちろんたきなの頑張りによって千束が救われた部分もありますが、例えば11話のたきな登場シーンにしても、そのあと逆に銃を奪われてピンチになって千束がカバーするなど、たきなのお陰だけで千束が救われるシーンはありませんでした。

 

 そして考えた結果、私が行き着いたのは、この作品はバディものの皮を被ったスーパーヒーローものであるという結論です。

 

令和のスーパーヒーロー錦木千束

 錦木千束というキャラクターを理解する上で、みんなに優しい、お笑い担当、お色気担当、歴代最強のリコリスといった要素はそれぞれ独立しているように見えるけれど、私はこれをスーパーヒーローという言葉ひとつでまとめられると感じます。

 

 それも令和にアップデートされたスーパーヒーロー像です。これが現代の幅広い年代にヒットした理由だと思います。つまり強くて優しいを具体的なエピソードを踏まえて表現し、それが視聴者に受け入れられたということです。

現代における強さと優しさ

 現代における強いとは何か?身も蓋もない言い方をすれば下記でしょう。

「仕事ができる、才能がある、顔がいい、面白い、自由である(お金諸々の制約により行動を制限されない、権力に意見できる)」

 強いとは、つまり社会で評価されるかどうかということです。

 仕事ができる人が評価されて社会的に強くなりますし(これは現代においては男性だけでなく女性もそう)、才能がある人は評価されますし、顔がいい人は男女問わず評価されますし、面白い人も評価される、そして自由な人も社会で評価されます。これらの社会的な強さをすべて錦木千束は兼ね備えています。(千束が評価されていることは、3話たきなの「あなたはDAに必要とされてるからいいですよね!」という台詞でも強化されています。10話で楠木司令と軽口を叩き合いながら真島討伐作戦に誘われるシーンでも、千束がDAにとって特別な存在だとわかりますね)

 

 現代における優しいとは何か?

 優しいについては様々な定義があると思いますが、現代においては他者を肯定する力ではないでしょうか。

 つまり3話で周囲のモブリコリスからの冷やかしを受けた上でたきなを全肯定して見せた千束の姿はもちろんのこと、老若男女、体の不自由な人、海外の人、敵に対しても肯定的に接する姿が優しさを具体的に描いていました。

(幼稚園で子どもたちの面倒を見る姿、日本語学校の講師をする姿、4話でメニューがわからず困っている外国人を助ける姿、5話で体の不自由な松下さんに優しくする姿、ミカと吉松の男性同士の恋愛を肯定し二人のパパと認める姿、8話や13話で真島と考えを語り合う姿、全てが優しさを描写しているように感じました)

 

 さらに古典的な価値観としての強さ「男は度胸、女は愛敬」という、この2点についても錦木千束は備えています。

 度胸に関しては具体的なエピソードが念入りに描かれてますね。4話で仕事がオフのときは事件が起きていても関わらないと自分で決める姿や、8話で敵がセーフハウスに上がりこんできてもいつもと同じ振る舞いを崩さない姿、11話で地上数百メートルの高所で、壊れた旧電波塔の支柱を走りながら射撃戦を行う姿、12話で歯を受け入れている姿など。

 愛嬌に関しては全編通して描かれていますが、中でも4話でたきなのトランクスを履いてみんなから笑われる姿や、5話で松下さんを笑顔たっぷりでもてなす姿、6話で自分の動体視力を活かし絶対勝てるじゃんけんに手加減なく挑み最後にやられる姿などは愛嬌たっぷりで笑えました。

 

 このように考えると、リコリス・リコイルはスーパーヒーロー錦木千束を説得力をもって描写することに特化した作品。だと思えます。

 漫画のタイトルを考える際に、主人公の名前をつけるというのは鉄板ですね(アカギやカイジのように、その人間の生き様がテーマの場合は特に)。リコリス・リコイルも実はそういう意味のタイトルだったと感じます。リコリスは千束を指しており、リコイル(再装填)はもちろん心臓のことです。

 少なくとも私は、この物語はスーパーヒーロー錦木千束の再装填までの物語であり、バディものではなくスーパーヒーローものだと考えると腑に落ちました。

 リコリス・リコイルのテーマは千束の考え方「限りある今を大事に生きること」であり、それを表現するために錦木千束の周りにあらゆる舞台が整えられていったのだろうと考えています。

 

井ノ上たきなの位置づけ

 リコリス・リコイルがスーパーヒーロー錦木千束を描く物語だとするならば、最大の舞台装置は相棒の井ノ上たきなです。とはいえ井ノ上たきな自身が大人気キャラクターですし、私自身も大好きです。

 ただ、足立監督自身がニュータイプ10月号のインタビューで、今回は錦木千束の物語に絞ったと語っているので、今作の井ノ上たきなは最大の舞台装置という考え方が正しいのだと思う(当然、第2期では井ノ上たきなが主人公になり、錦木千束が舞台装置になるはずですが!)。

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 井ノ上たきなの役割は「視聴者をたきな自身に感情移入させ、錦木千束への憧れや、死んでほしくないという想いを表現する」こと、そして8話であったようにスーパーヒーロー錦木千束に対し主導権を握ることでスーパーヒーローを言い方は悪いが「支配できる可能性を見せる」役割を担うこと。

 たきな自身はスーパーヒーローに救われ、スーパーヒーローに憧れますが、スーパーヒーローの人生を言葉や行動でどうにもすることはできませんでした(12話までの展開)。憧れと祈り……この一方通行の想いを表現するために井ノ上たきなは配置されたと考えます。

 そして。最後は綺麗に死にたがったスーパーヒーローの死を防ぎ、泥臭く生き続ける一般人と同じ大地に引きずり下ろした。これも井ノ上たきなの功績です。

 リコリス・リコイルの多くの二次創作を見ても、13話以降を舞台にしているものはほとんど、たきなが千束の主導権を握っています。これは私も同じ理解なのですが、リコリス・リコイルの物語を経て、スーパーヒーロー錦木千束はひとりの一般人に堕ちたようにも思えます。
(13話の出来事で、たきなの肩には消えない傷が残っているはずです。それもスーパーヒーローの罪悪感となって千束の自由をしばります)

 

 これはある意味……リコリス・リコイルはギャグ多めの明るいタッチで化粧を施しているけれども、結末の展開は「魔法少女まどかマギカ叛逆の物語」(悪魔ほむらがアルティメットまどかを堕天させた、あの展開)と同じではないでしょうか。

 もちろん井ノ上たきなに邪気はなく、精一杯行動した結果がこれなので、そこが違います。そしてスーパーヒーロー千束であれば、13話のあとも変わらず強くて優しくあるだろうと信じています。

 ですが今回書いたような邪な見方(神を堕天させる一般人)もできるので、その点についてリコリス・リコイル2期で回答が得られたら嬉しいなと感じます。
※「魔法少女まどかマギカ叛逆の物語」の結末の次のフェーズとして、スーパーヒーローがひとりで頑張らなくても良いんだよと伝えてくれた物語にも感じるので、個人的にはそこを昇華させてもらえたら嬉しいですね。

 リコリス・リコイルは本当に素晴らしい作品で、まどかマギカ以来久しぶりに夢中になりました。公式を解像度高く理解して二次創作されている方もいっぱいいます(漫画でも小説でも)。今からでもハマってみると楽しいですよ!

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