X(エックス)ミーニング | 考察しがいのある小説を作成する超強力な方法

2023年1月7日

 読書の良さは「能動的なインプット」ができる点だと思います。テレビや映画はどうしても受動的に情報を受け取りがちですが、読書は文字を能動的に読まなければ話が進みません。つまり能動的に情報を取得して理解する必要があります。

 そして、能動的なインプットである読書を一番楽しむ方法は「考察」をすることです。ミステリー小説が人気なのは、読書をしながら犯人は誰だ?と考察するからですよね。

 では、考察しがいのある小説を作成する方法は、知っていますか?
 今回はX(エックス)ミーニングという手法について紹介します。

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X(エックス)ミーニングとは?

 Xミーニングは私が独自に読んでいる手法です。
 一つの語に2つ以上の背景をもたせる手法と考えていただければ幸いです。
 似たような手法にダブル・ミーニングがありますが、違いについて説明します。

類似の手法 ダブル・ミーニング

 ダブル・ミーニング(英語: double meaning)とは、2つの解釈が可能な意味づけのこと。 詩などで、1つの語に2つの意味をもたせること。 日本語では掛詞(かけことば)と(伝統的に)呼ばれています。つまり、1つの言い回しで複数の意味合いをワンフレーズに収める手法です。

ダブル・ミーニングの例

 ダブル・ミーニングの手法には「音読み」が同じ言葉を別の漢字で読ませたり、同じ読みで違う意味の「名詞」として読ませたり、言葉に振り仮名を振って別の読み方を併記して2通りの意味合いを持たせたりする方法があります。

・テンテキをウツ
 → 点滴を打つ
 → 天敵を討つ

・見た目が「世界の終わり」みたい
 →SEKAI NO OWARIの衣装みたいという意味
 →見た目がオワッテルという意味

・強敵と書いて《友》と読む。

 ダブル・ミーニングのイメージがついたところで、Xミーニングの説明をいたします。

Xミーニングは背景にある歴史や意味を含ませること

 一方Xミーニングは、1つの言葉に複数の意味付けを行うというよりも、背景にある歴史や意味を付与するイメージになります。具体的なイメージを4例あげます。

Fate Grand Order

 私はかねがねFate Grand Orderは素晴らしい作品だと感じます。その理由は、歴史上の偉人とともに戦うという設定にあります。なぜなら歴史上の偉人の名前を冠することで、「歴史や背景」をキャラクターに意味づけできるからです。

 例えば小説に「宮本武蔵」というキャラクターがいて、最初1つしか刀を持っていないとします。それを見た読者は宮本武蔵の史実から、将来このキャラクターは二刀流になると想像できるでしょう。

 つまり「読者の満足度を高める」ため下記のエントリーで書いたように、読者に予測させ、「期待通りだけど、期待を上回ってきた」もしくは「予想できたはずなのに、予想できなかった」ポジティブな結果を目指すことができます。

 

ウマ娘シリーズ

 ウマ娘シリーズも同様に、競走馬の名を冠することで名馬の「歴史や背景、ライバル関係」を意味づけできています。

 例えばウマ娘シンデレラグレイの主人公オグリキャップは、地方で活躍した競走馬が中央に上京していく流れをはじめてつくったパイオニアです。地方の灰被りの少女が日本の頂点を目指し、伝説になっていく……までを描いていきます。

 オグリキャップという名馬の歴史やライバル関係を利用することで、先の展開が予想でき、オグリキャップ伝説の最終戦への期待が高まります。結果としてウマ娘というソシャゲのスピンオフ作品ではおさまらない、走るというただ一点を突き詰めたスポ根漫画の傑作に仕上がっています。

 つまり競馬という「長い歴史や名シーンを持つコンテンツ」とリンクさせ、Xミーニングを使うことで「事実を尊重し、後から調べると二度美味しいストーリー」に仕上げることができたといえます。面白い題材を選ぶヒントは以下のエントリーでも書きました。

 

リコリス・リコイル

 続いてリコリス・リコイルシリーズで利用されているXミーニングを紹介します。

 歴史上の「偉人」や「長い歴史や名シーンを持つコンテンツ」を用いるほかにも、Xミーニングを利用する方法があります。それが花言葉や誕生花です。

 井ノ上たきなの「たきな」はギボウシの西日本での呼び名で、花言葉は「静かな人」。たきなの誕生日は8/2、誕生花はキキョウ(花言葉「永遠の愛」「誠実」「清楚」「従順」)など。花言葉を体現したようなキャラクターになっています。

 錦木千束の名前の由来は植物(花)のニシキギ(錦木)と、『錦木塚物語』の千束の錦木。ニシキギの花言葉は「あなたの魅力を心に刻む」「危険な遊び」。誕生日である9/23の誕生花は「彼岸花=学名リコリス・ラジアータ」。作中最強AIのラジアータともかかっています。

 このように名前の元ネタを花の名前にすることで、花言葉のXミーニングを付与できます。誕生日は特に考えずに設定していた方は、花言葉を意識してみるとよいかもしれません。

 リコリス・リコイルのXミーニングの凄さについては、以下の記事「枠外の物事とのシンクロ」でも書きました。

鎌倉殿の13人

 最後に脚本家・三谷幸喜を本物の天才と実感したXミーニングの例を紹介します。歴史や背景、花言葉のほかにも、聞きなれない外国語を使う手段です。

 三谷幸喜が脚本を務めた「鎌倉殿の13人」第37回の予告で、謎のサブタイトル「オンベレブンビンバ」が登場しました。

 物語が佳境を迎え、主人公の属する北条家がバラバラになりつつある回でした。「オンベレブンビンバ」とはイタリア語で「子供のための影」と訳され、主人公の父親が主人公のために影(悪)となることを意味しているのではないか?と、放送前は考察されました。

 しかし作中で描かれたのは、北条家の酒宴の最中に、主人公・北条義時の父・北条時政が「オンベレブンビンバー」と妙な呪文を唱え始めます。

 これは過去に源頼朝と北条政子の娘・大姫が時政に教えた、元気になるおまじない「オンタラクーソワカー」を。時政が「オンベレブンビンバー」と言い間違えたものでした。

 ちなみに他の北条家の面々も間違えて覚えていて……完全なるギャグシーン。視聴者の反応はまさに下のTwitterのようでした。

 嘘やろおい……笑 しかしこのシーン、後からみると北条家が仲良く宴会をした最後のシーンなんですよね。視聴者が考察した通り、サブタイトル「オンベレブンビンバ」は、どこか子供のための影となるシーンでもありました。

 聞きなれない外国語を使うことで視聴者の考察を呼び起こし、謎の呪文でしたというオチにより視聴者を唖然・笑わせながらも、裏にはXミーニングが込められているという、天才的で卓越した脚本術です。

まとめ

 この記事では、考察しがいのある小説を作成する方法としてXミーニングを紹介しました。

 Xミーニングの手法として具体的に以下の4点を紹介しました。

・歴史上の偉人の「名詞」を使うことで「歴史や背景」を付与する
・競馬のように「長い歴史や名シーンを持つコンテンツ」を使うことで「歴史や背景」を付与する
・花言葉や誕生花を使うことで、花言葉のXミーニングを付与する
・聞きなれない外国語を使うことで、外国語の意味を付与する

 Xミーニングの手法を使うことで、物語の枠外の意味を付与することができ、読者に物語の次の展開を予測(考察)させることができます。これは、「読者の満足度を高める」ためにも有効な手段です。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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