ファンタジー小説に役立つ、貴族制度(貴族の爵位)と呼称について
こんにちは。
本エントリーでは中世ヨーロッパ的世界の貴族制度(貴族の爵位)について解説します。
私は『ファイアーエムブレム 風花雪月』が大好きなのですが、作中に出てくる爵位がどうにもわからなくて。今回調べるきっかけになりました。ファイアーエムブレムに限らず、ファンタジー作品の中では何とか爵って言葉が出てきますよね。
つまり、ファンタジー作品を書く上でも、貴族制度は必須の知識なのではないでしょうか。
階級制度をゼロからつくろうと思うと大変ですし、読者にとっても馴染みにくくなる恐れがあります。本エントリーを参考にしていただいて、現実の貴族制度をアレンジして使うと、スムーズに世界へ入っていくことができます。
ぜひ参考にしてください。
貴族とは
貴族とは功績や血縁により、君主(国王、皇帝、大公、天皇)から社会的特権を認められた人やその一族のことです。
他の社会階級の人とは明確に区別された、上流社会に生きるエリート集団。貴族といえば美しいドレスや装飾品に身を包み、夜通し華やかなパーティで豪華なご馳走をワイングラス片手に楽しみ、男女で社交ダンスを踊るといったイメージがあります。
そんな上流社会に生きる貴族にも、階級があって、皆がみんな優雅な生活を送っているわけではありません。
日本では明治維新後、世襲制(血筋によって爵位を引き継ぐ)の公侯伯子男の五等爵を基本とする華族制度が定められました。公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の爵位の順番で力があり、爵位は貴族の格付けがされています。
爵位を持つ者とその家族を、日本では華族と呼んでいました。ヨーロッパの貴族制度を模して作られた制度です。あっという間に染まってしまえる日本人は本当にすごいです。
貴族の階級一覧「五爵」を覚えよう
貴族の階級の呼び名を日本語訳にし、階級順に並べたものが下記の通りです。時折「ナイトは貴族に含まれるのか?」と疑問を抱かれている方がいらっしゃいますが、ナイトは立派な貴族です。この後で1つ1つ紹介しますね。
- 第1位 グランドデューク(大公:たいこう/大公爵:だいこうしゃく)
- 第2位 デューク(公爵:こうしゃく)
- 同率2位 プリンス(公爵:こうしゃく)
- 第3位 マーキス(侯爵:こうしゃく(辺境伯:へんきょうはく))
- 第4位 アール(伯爵:はくしゃく)
- 第5位 バイカウント(子爵:ししゃく)
- 第6位 バロン(男爵:だんしゃく)
- 第7位 ナイト(騎士:きし)
グランドデュークとデューク、プリンスは人数が少ないのでまとめて公爵、マーキスの侯爵、アールの伯爵、バイカウントの子爵、バロンの男爵、これら5つの爵位をまとめて「五爵」と呼びます。
序列をまとめると、公爵>侯爵>伯爵>子爵>男爵の順になります。上記の爵位は日本ではまとめて「公侯伯子男(こうこうはくしだん)」とも呼ばれ、覚えやすい語呂合わせとしても知られています。
以下に貴族の階級一覧「五爵」の関係性を簡単にまとめた図をつくってみました。こちらを頭に入れながら、これから先の説明をご覧いただくと、理解が進むかと思います。

グランドデューク(大公もしくは大公爵 Grand Duke)
グランドデューク(大公もしくは大公爵)は、王以外の王族(王の息子や弟など)や分家の長などがあてはまります。公爵の中でもさらに力を持った、王に匹敵するほどの権力者です。大公が国を治めるとそこは大公国と呼ばれ、一つの国家です。国を治められるくらいの権力者に与えられた称号と思っておくと良いです。
デューク(公爵 Duke)
デューク(公爵)は、王族に連なる者や、それに匹敵する大貴族のことを指します。
中世ではその領地を支配する封建君主の意味があり、近代では最上位の貴族の爵位(名誉称号)となりました。軍事的にすごい働き(国を救うなど)をして戦果をあげて王様に認められた人(主に王族)、と考えてもいいでしょう。しかしながら王族以外で戦果をあげて公爵に上り詰めるのはかなり至難の業です。
王に次ぐ格式を持つため、王室と血縁が近い有力者が任命されることも多く、その威光は絶大です。歴史的にも軍事・政治で重要な役割を果たすことが期待され、物語の中でも「○○公爵家の令嬢」など最高クラスの身分として登場することがよくあります。
なお、日本語の公爵は、五爵の中で第一位の地位であり、旧摂関家や徳川家、維新の勲功者が公爵位を授けられているそうです。
プリンス(公爵 Prince)
デュークと同じく公爵と訳するところがわかりにくいですね。ヨーロッパのプリンスは小国の独立君主や諸侯王族の称号で、王族の血を引く血統的に与えられたものです。
プリンスが王の息子や弟。プリンセスが王の娘や姉妹などを指します。日本で言うところの皇族です。
マーキス(侯爵(辺境伯) Marquess/Marquis)
マーキス(侯爵(辺境伯))は、領地を持った諸侯を指します。諸侯とは、主君である君主の権威の範囲内で一定の領域を支配することを許された臣下である貴族のことです。日本でいうと、いわゆる大名ですかね。
王から辺境の防衛を任されており、由来となった「Marquis(マーキス)」という言葉自体が「国境(march)の守護者」を意味します。物語でも「辺境伯」として登場することがあり、重要な辺境地域の統治や防衛を任される頼もしい存在として描かれます。
日本では、公爵の下位、伯爵の上位で、五爵の中では二位に位置する爵位です。国の国境付近など、重要な地域を任せられており、有事の時には率先して動かねばなりません。支配している領土も広く、普通の伯爵よりも権限が大きいのが特徴とのこと。辺境をまかされている伯爵ということで、日本語では辺境伯とも呼びます。
公爵になる難易度は凄まじく高いため、侯爵は王族以外での実質最高位に近い存在です。
アール(伯爵 Count/Earl)
アール(伯爵)は、王族の側近で、地方へ派遣されてその地を治めている地方領主。土地を持った貴族のことです。中世ドイツでは、「宮中伯」と呼ばれる大臣のように中央行政を担う役割もあったといわれています。
伯爵家は一つの伯爵領(カウンティ)を治める領主であり、中世ヨーロッパでは古くから存在する由緒ある称号でした。イギリスでは伯爵に相当する称号を「アール(Earl)」とも呼びますが、いずれも地位としては侯爵の下位に位置します。伯爵は特定の地方行政単位を統括し、地域の統治者として行政や治安維持にあたりました。物語世界では「○○伯爵」「伯爵令嬢」などの形で中堅貴族として登場し、舞台となる領地の支配者として重要な役割を担います。
ローマ帝国では、宮廷に約10人ほどの宮中伯が居て、それぞれ担当する部署の政務を行っていました。
しかしながら地方の諸侯が力をつけてくると、当然地方領主との争いがおこりますから、その中で没落していったり、逆に勝利してその領地の権力者として、侯爵級の活躍をすることもできたそうです。
王に意見できるような権力を持った伯爵もいれば、経営がうまくいかず領地を担保に借り入れを行う貧乏伯爵も居ました。
これといった類型が決まっていないので、とりあえず伯爵として登場させておけば、話を動かせそうな便利な役回りです。
バイカウント(子爵 Viscount)
バイカウント(子爵)は、伯爵の補佐、副官をする貴族のことです。
ここらへんからは中間管理職のイメージがついてきます。
伯爵に任された小都市や城の管理など、地方行政の官僚としての役割を担う仕事が主です。子爵は伯爵の嫡男が爵位を継ぐまでの名乗る爵位、もしくは伯爵家の分家の当主が名乗る爵位として使われています。
歴史的には、伯爵を補佐する副伯から発展した称号と言われ、フランス語の「ヴィコンテ(Viscomte)」が起源になっています。子爵家は伯爵より規模の小さい領地や都市を治めることが多く、貴族社会では中流クラスの家柄です。
平民から見ればれっきとした高貴な身分で、物語では「子爵家の令嬢」「子爵領」などの形で登場し、主人公を支える地方有力者として描かれることもあります。
バロン(男爵 Baron)
バロン(男爵)は、、子爵以上の爵位を持たない村や町などを治めている一番位の低い貴族。日本語でいうと、地方ではばを利かせている豪族のようなものです。
男爵家は通常、伯爵や子爵よりも小規模な領地(荘園など)を所有し、その土地の領主となっています。中世ヨーロッパでは「男爵(Baron)」はもともと有力な封臣全般を指す語でした。規模は小さいとはいえ、男爵も世襲の爵位であり、地元ではそれなりの発言力を持つ存在です。物語では「○○男爵」のように登場し、貴族社会の底辺ながらも領主として登場人物に影響を与えることがあります。
ナイト(騎士)
騎士とは、中世ヨーロッパにおいて、国家や君主に尽くした功績に対する褒美として与えられた名誉的称号です。軍事的にすごい働きをした庶民と考えていいでしょう。
日本語では勲功爵、勲爵士、騎士爵、士爵、ナイト爵と訳され、一代限りの称号で貴族とはみなされません。
貴族には「領地貴族」と「法衣貴族」がある
貴族には大きく二つの類型が存在します。この対立構造を物語に組み込むことで、政治的・社会的な深みを演出することができます。日本でも文官と武官という形で昔から事務方と現場方の対立がありました。現代においてもホワイトカラーとブルーカラーという形でお互いをどこか遠い存在として考えることがありますよね。
この二分法はフランスのアンシャン・レジーム(旧体制)期に概念として確立されたものであり、すべての時代・地域に普遍的に当てはまるわけではありません。けれど「古い血統と軍事力を誇る地方の実力者」対「王の権威を背景に政治を動かす宮廷人」という対立構造は、架空世界の政治ドラマを構築する際に非常に有効なフレームワークですので、参考にされてみてください。
領地貴族(帯剣貴族「noblesse d’épée」)
地方に封領を有し、私兵を養う「武」の貴族です。歴史的に古い家柄が多く、王都の宮廷文化とは距離を置きますが、実質的な軍事力と地方支配権を掌握しています。「中央の官僚に地方の実情はわからない」という立場を取りやすく、王権との緊張関係を生む源泉となります。
領地貴族(武門・地方の実力者)に結びつきやすい爵位
固有の土地と軍事力を持つことが特徴です。
| 爵位 | 特徴 |
|---|---|
| グランドデューク(大公) | 事実上の独立国に近い広大な領域を支配する最上位の領地貴族。 |
| マーキス(侯爵・辺境伯) | 国境地帯の防衛を担う武門の頂点。"march"(辺境)という語源が示す通り、軍事的役割が色濃く、法衣貴族として宮廷に転じることはほとんどありません。 |
| アール(伯爵) | 地方領主の典型。「○○伯爵領」として一定の地域を統治するイメージが強く、領地貴族の代名詞的な爵位です。 |
| バロン(男爵) | 小規模な領地を持つ最下位の封建領主。後述する法衣貴族側のバロンとは出自が異なります。 |
法衣貴族(宮廷貴族「noblesse de robe」)
領地経営よりも、王宮における役職(官僚・裁判官・顧問など)を通じて権力を保持する「文」の貴族です。王の側近として国政を動かしますが、その地位は王の信任に依拠するため、寵愛を失えば没落しやすいという脆弱性を抱えています。「武張った地方領主に政治の機微は理解できない」という意識を持ちやすく、帯剣貴族との摩擦を生みます。
法衣貴族(文官・宮廷の政治家)に結びつきやすい爵位
王都に居を構え、役職によって権威を維持することが特徴です。
| 爵位 | 特徴 |
|---|---|
| デューク(公爵) | 王族の縁戚や最高位の臣下に授けられる爵位。領地を有することもありますが、宰相・摂政として政治の中枢を担う場合、「法衣(宮廷)貴族の頂点」として描かれます。 |
| バイカウント(子爵) | もっとも「法衣貴族」的な性格を持つ爵位です。語源はラテン語 vicecomes(副伯)であり、歴史的に伯爵の補佐役や行政実務官として機能してきた経緯があります。創作においても、中央省庁の実務官僚として描かれやすい爵位です。 |
| バロン(男爵) | 注意が必要なのは、「新興のバロン」は功績や経済力によって叙爵された者が多く(売官制度やそれに類する慣行は史実にも存在します)、土地ではなく役職に依拠する法衣貴族的な扱いを受ける場合があります。領地を持つバロンとは出自と社会的立場が区別されます。 |
ポイント: 若いバロンは法衣貴族的な扱いを受ける場合がある。領地を持って時間が経つと領地貴族に遷移。
貴族間の呼び方について
ヨーロッパの爵位は、管理職のようなもので、領地を正しく管理するよう、王様から与えられる役職とのことです。格付けのランクはあるものの、西洋では日本のように役職の上下で過度に敬う文化はなく、仲が良ければ名前や愛称で呼びあい、正式な場では改まった呼び方に変えるそうです。
下記に呼び方をまとめましたので参考にしてくださいね。


まとめ
中世ヨーロッパ的世界の貴族制度(貴族の爵位)とそれぞれの呼び名について書いてみました。
『ファイアーエムブレム風花雪月』でいうと、
・公爵(フェルディナント、フェリクス、クロード、ヒルダ、ヒューベルト)
・侯爵(辺境伯)家(シルヴァン、マリアンヌ)
・伯爵家(ベルナデッタ、カスパル、リンハルト、イングリット、ローレンツ、リシテア)
という序列であることがわかりましたね。勉強になりました。
ファンタジー作品をつくる手助けになれば幸いです。
最後に、風花雪月をおすすめして終わります笑
ぜひ皆さんも沼にハマってください。













ディスカッション
コメント一覧
魔法を入れたりする時そこに爵位がかかわってくるんですけどどうすれば?
難問ですね!
ですがとても面白い設定と感じました!
ぜひまた作品名教えて下さい!
ファンタジー小説によく出てくる『公女様』というのは?
コメントくださりありがとうございます!
公女様は、公国の王女様ですね!
公国については以下の記事もご覧いただけますと幸いです。
帝国、皇国、王国、公国の違いは? 物語に登場する国の種類を解説します!
めっっちゃ役に立ちました!小説サイトで小説アップしてて、色々出していて乙女ゲームの悪役令嬢の小説を書こうと思っていて貴族がわからなかったので助かりました!
ピンバック & トラックバック一覧
[…] ファンタジー小説に役立つ、貴族制度(貴族の爵位)と呼称について […]