「小説家になろうはもっと作家へ還元しろ」に対する想い

2020年10月9日

  

 昨今、カクヨム、アルファポリス、ノベリズムと作家へ利益を還元する小説投稿サイトがたくさん出てきました。その中で小説家になろうは一貫して作家へ利益還元せず、「企業からオファーがくるまで頑張れ」というスタンスを貫いてきました。

 こうなると、最近執筆を始めた人や、最初に選んだ小説投稿サイトがカクヨムだったり、アルファポリスだったりする人は、小説家になろうは何で作家に還元しないの?と思うのも自然だと感じます。

 けれど「小説家になろうはもっと作家へ還元しろ」と言い出すのはどうでしょう。

 これって、どちらかというとカクヨムやアルファポリスではウケないけど、小説家になろうではウケている人が言っている気がするのですね。※カクヨムやアルファポリスで稼げていれば言う必要がないので。

 ということは、自ら進んで小説家になろうを選んだ作家のわけです。そういった作家が「還元しろ」というのは……。これについて思うところを書いていきます。

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手段の目的化

 まず一点感じることは、「手段が目的化している」ということです。

 もともと私たち作家は、「書籍化を目的にする→(結果として)お金を稼げる→だから小説を書く」
 それどころか「物語を創ることを目的にする→(結果として)書籍化にする→(結果として)お金を稼げる→だから小説を書く」

 というふうな目的をもって活動し、結果としてお金を稼げたらいいな?と考えている人が大半ではないでしょうか。

 

 しかし「小説家になろうはもっと作家へ還元しろ」というような方々は、「お金を稼げる趣味→書籍化でも広告収入の還元でも良い→だから小説を書く」

 というふうに、お金を稼ぐことを目的として活動し、書籍化でも広告収入の還元でもいいからお金をもらえるように、小説を書いているのではないでしょうか。

 小説を書きたいだけの人ではなく、お金を稼ぎたいだけの人も作家界隈に入ってきているという印象です。

 もちろんそれが悪いとは思いません。

 面白い作品を書いたからお金を稼げたのか、お金を稼ぐために書いて結果として面白かったのか……あとから見たらわからないぐらいの差でしょうからね。ですがお金を稼ぐために書いている場合、「今の読者の望み」にターゲットをあわせた作品が書かれるのは間違いないでしょう。

 流行っている作品と似たような趣向で、少しアレンジを加えた作品が多くなるのではないでしょうか。差別化するためには、タイトルを長文化する必要がでてくるでしょう。

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原因はお金、偉大だねお金

 では「お金を稼げる趣味→書籍化でも広告収入の還元でも良い→だから小説を書く」というふうに、お金を稼ぐことを目的として活動し、書籍化でも広告収入の還元でもいいからお金をもらえるように、小説を書いている人が出てくる原因は何でしょうか。

 いうまでもなく、原因はお金ですよね。

 ほしいですもんね、お金。

 私は子供のとき(これが良かったというわけではないですよ)、500円のお小遣いを与えられて、どうやってやりくりしよう……と考えました。使えるお金を増やそうという発想は持つことができませんでした。

 ですが今は、1万円つかいたいのに500円しかもらえないなら、残り9500円増やそうという発想になりますもんね。これって経済的にはとても素晴らしいことだと思っています(それでもデフレを脱却できないのが謎で仕方ないのですが)。お金にならないことをやってどうするの?という考え方の人も、いるかもしれませんね。好きなことで生きていく……というフレーズが流行ったからでしょうか、趣味を仕事にすることがより容易になったように思います。

 小説を書いて投稿するという、無料の遊び場だったところも、変わっていきます。

 遊びの場が商売の場に変わっていくのを感じます。 

  

  

儲けてはいけないという風潮にも思える

 お金がほしい!という純粋な思いを抱くことは、悪いことではないと思います。
 ですが気になるのは、広告収入の仕組みを知った人たちが、小説家になろうはPVが凄いのだから儲かっているはずだと考え、儲けを独占するのは悪だ、だから俺たちに還元しろと言っているように思えることです。

 儲けるのが悪……。それは自分が儲かっていないのに、あいつだけズルいという考え方でしょうか。なんだか自分勝手な考え方です。
 自己投資という種まきができず、結果だけが早く欲しい人に多い考え方ですね。こういう人の声に耳を傾ける必要はありません。結果がほしいならそれなりの努力が必要……というのが社会ですし、努力をすれば実を結ぶのも社会です(例えば文章がうまくなれば、クラウドワークスでライティングの仕事ができるようになってお金を稼ぐことだってできます)。

 働かざる者食うべからず……という昔からの言い伝えを思い出しました。

  

 ですが気になるのは、小説家になろうが自分から、読者のために利益を還元してもいい……と考え、カクヨムやアルファポリスと同じような仕組みを取り入れる可能性もあるでしょう。

  

  

小説家になろうが還元を始めたらWeb小説は危ない

 私は、小説家になろうが還元を始めたらWeb小説は危ないと考えてます。

「お金にもならないのに、純粋な面白さを目指して頑張っている人たちが競い合っている場」だからこそ、小説家になろうには価値があったと思うからです。

 例えば最近、ggrksという言葉が死語になりつつあります。

令和の若者はggrksが通じないという事実にインターネット老人会に震撼。どうしてggrksは衰退したのか?

 上の記事の最後の方に書かれていますが、今はGoogle先生に聞いても「調べてみました。こんな噂もあるようです。実際はどうなのかわかりませんでした。いかがでしたか?」といういかがでしたか?ブログが乱立し、必要な情報が手に入らなくなりました。

 これはGoogleの検索エンジンで上位を目指すアフィリエイトブログが、SEO対策をした影響です。小説っぽく表現すれば、お金を稼ぎたい人々によって真実が覆い隠されている……ということですね。

 それと同じで、お金を稼ぎたい人ばかりになってしまうと、真の意味でふざけた、こんなものウケるわけないって笑いながら創作(チャレンジ)する人が減ってしまいます。

  

 実のところ「お金にもならないのに、純粋な面白さを目指して頑張っている人たち」や「純粋な面白さを目指して競ってすらいない人たち」の生み出したウケなかったアイデアが、誰かの目に止まって、このアイデア面白いと気づいてもらってアレンジしてもらって、結果ヒット作が生まれる……そんな循環ってあると思うんです。

 1つの名作の後ろには、1000の屍が転がっている。けれどその屍に意味がなかったわけじゃなくて、屍の海を泳いで毒だか薬だかわからない餌を食べて太らなければ、サラブレッドたちも名作を生み出すことはできないはずです。

 それが、お金を稼ぐことにフォーカスした、上手な小説が蔓延するようになったら、食べても同じ味のする屍しかない海ができてしまいます。例えば甘い屍しか転がっていないラブコメの海があったとしましょう。ここを泳いで餌を食べて太ったら、味覚は次第に集約されていって、甘さはわかるけれど、苦味を忘れてしまうかもしれません。

 バラエティのある屍の海をつくるこそが、偉大な作品を生み出す下地となります。

  

向上心を育む場でもある

 小説家になろうは、それだけではお金を稼ぐことができません。書籍化という「夢」を抱いて、物語を書いている作家さんもたくさんいるのではないでしょうか。

 「夢」というのは凄いもので、「夢」を叶えるために努力する原動力となります。向上心の源となります。小説家になろうは書籍化しないとお金がもらえない仕組みだからこそ、努力してうまくなろうという人たちをたくさん生み出してきたのでしょう。

 全体の流れを考えて物語が書けるようにもなるでしょう。

 物語に起伏をつけて、鬱展開を書きたがるのも、「夢」を抱いて書く人の特徴かもしれません。読者に気楽に読んでもらうためには鬱展開は避けるべきなのですが、本一冊の構想をねって物語を書けば、どうしてもネガティブな展開を避けられない場合があります。そうした作品は、通して読むと素晴らしい読後感をくれるのですね。

 そんな素晴らしい作品が生まれるのは、向上心の賜物です。

 もちろんカクヨムやアルファポリスで素晴らしい作品が生まれないというわけではないですよ。といってもカクヨムについてはロイヤリティを配るようになったのが最近ですので、悪くなっていく可能性はありますけれど。

  

まとめ

 私としては、「お金にもならないのに、純粋な面白さを目指して頑張っている人たちが競い合っている場」は残してほしいなという思いです。最近の趣味は?と聞かれた時に、「小説家になろうに投稿してるww」って笑いながらいいたい気持ちがあります。

 そこで「金になった?」って聞かれるのではなく「ようやるわ、書籍化したら買うわ」と言われたい……そんな単なる個人の思いです。

 さて皆さんは、「小説家になろうはもっと作家へ還元しろ」という意見にどんな思いを抱きますか?

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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