深い「テーマ」と大きい「テーマ」とは?ポイントは視点・視野・視座
以前、テーマを実現するための具体的な記載(プレミス)について書きました。
あなたの「プレミス」はなんですか?~小説を書く前に「ミッション」を準備しよう~
最近は、物語の「テーマ」とは何かを考えていました。といっても、どうすれば自分のテーマを設定できるかという話ではありません。
世の中にはテーマが大きい、テーマが小さい、テーマが深い、テーマが浅さといった言葉がありますね。どういう時にテーマが大きくなるのか、小さくなるのか、深くなるのか、浅くなるのか。それを考えていました。
調べてみると、テーマの大きさは対して重要ではないが、テーマを設定するなら深さは追求した方だ良いだろうという結論を得ました。それについてシェアします。
事実の中に真実がある
最初に共有するのは、視点・視野・視座の関係を示した図です。これは社会人になって、マネジメントの研修などを受け始めると、否が応でも意識させられますので、今のうちに知っておくと良いでしょう。
真ん中に黄色の箱・事実がありますね。この事実の中にオレンジの枠・真実があります。
といっても、哲学者ニーチェが「真実などない、あるのは解釈だけだ」といったとおり、本来は真実など存在しません。ですが、事実を解釈することで真実らしきものをつくり出すことは出来ます。
小説でいえば、事実(エピソード)を書き連ねていくことで、その裏にある真実(テーマ)を読者に伝えることができます。
※同じエピソードを読んでいるのに、人によって解釈が異なり、同じ物語から違う真実(テーマ)を感じとることもありますね。あれは一つの事実に対し、各人が違う真実を見出しているということです。
視点の鋭鈍(テーマの深浅)
視点が鋭い、鈍いというときの視点とはなんでしょうか。
これは、着眼点がどれだけ「事実」に迫っているかです。先程の図でいうと、赤い丸部分と考えてください。
テーマの深浅は、この視点によって決まると感じます。
・テーマが「深い」:事実に迫っている。
・テーマが「浅い」:事実に迫っていない。
例えば天気の子は、愛と理について描いた物語でした。
いまの世の中は、愛と理が相反しながら、世界を支配している……これは事実でしょう。この事実を描いた上で、理を放り出して愛に全振りしていい!という真実(テーマ)を描いたのが天気の子だと考えています。
ポイント
テーマの深浅は、あくまで事実にどれだけ迫っているかです。
事実にどんな真実(テーマ)を見出すかは作者の自由です。二律背反の事実を見出し、そのどちらかを真実として描くことが、深い物語!と言わせるポイントとなります。
視野の広狭(エピソードの厚薄)
では、視野が広い、狭いというときの視野とは何でしょうか。
これは、「真実の根拠をどれだけ積み上げているか」です。もっともらしさと言い換えることも出来ます。
もっともらしさ……言い換えると「物語のビリーバビリティー」は、この視野の広さによって決まると感じます。
視野が広いか狭いかは、エピソードの厚薄で語ることが出来ます。
・エピソードが「厚い」:根拠の積み上げが多くビリーバビリティーが高い。
・エピソードが「薄い」:根拠の積み上げが少なくビリーバビリティーが低い。
ポイント
こぴーらいたー作家@風倉さんの言葉を借りれば、ビリーバビリティー とは「世界観の一貫性、統一性、もっともらしさ。「その世界らしさ」のこと。これを保つほど、読者はその世界の実在を「信じ」物語の中に居続けることができる。」です。
視野の広さは、物語を書く上で高めておきたい力ですね。
視座の高低(テーマの大小)
では、視座が高い、低いというときの視座とは何でしょうか。
これは、「何にとっての事実を考慮するか」です。
例えば社会人1年目の社員であれば、自分にとっての事実からでしか、物事の判断ができないでしょう。
ですが徐々に、一緒に働くチームにとっての事実を考えられるようになり、例えば自分が最初に仕事を終わらせないと、他のメンバーは作業を進められないな、などと考慮できるようになります。
この視座は、立場によって変わっていきます。いつしかあなたは部署にとっての事実を考えられるようになり、会社にとっての事実を考えられるようになり、社会にとっての事実を考えられるようになるでしょう。
テーマの大小は、この視座によって決まると感じます。
・テーマが「大きい」:社会の事実を扱う。
・テーマが「小さい」:当事者の事実を扱う。
ポイント
テーマの大小は、テーマの良し悪しや、作品価値の高低とは関係ありません。少なくとも言えることは、小さいテーマ(当事者の事実)を扱った方が、多くの人に共感してもらえる作品になるということです。
視座の高低……これは言うなれば、マズローの欲求5段階説のどの段階にいるのか?だけの話だからです。
そして、上の段階だから偉いというわけでもありません。幼女戦記の台詞を引用すれば「世界は舞台だ。誰かが役割を演じなければならん。」つまり、役割が違うだけだからです。
アルテから学んだ、恵まれた境遇も含めて自分の才能だ、も同じ話です。それぞれの人が、自分の置かれた境遇で、自分の役割を全力で果たせばいいのですね。
自分の才能との向き合い方〜恵まれた境遇も含めて自分の才能だ〜
「テーマ」の深浅、大小まとめ
視点・視野・視座という切り口から、「テーマ」の深浅、大小について書いてきました。
視点の鋭鈍(テーマの深浅)
・テーマが「深い」:事実に迫っている。
・テーマが「浅い」:事実に迫っていない。
視野の広狭(エピソードの厚薄)
・エピソードが「厚い」:根拠の積み上げが多くビリーバビリティーが高い。
・エピソードが「薄い」:根拠の積み上げが少なくビリーバビリティーが低い。
視座の高低(テーマの大小)
・テーマが「大きい」:社会の事実を扱う。
・テーマが「小さい」:当事者の事実を扱う。
私の総括としては、視点は鋭いほうが良い、視野は広いほうが良い、視座は高くても低くてもどちらでも良い……というのが結論です。
最近は、何かに失望してTwitterでヘイトを吐き散らす人や、Twitterを辞める人が増えているように思います。ですが誰も他人と同じになる必要はありません。
それぞれの人が、自分の置かれた境遇で、自分の役割を全力で果たせばいい。そう考えると、少しは気が楽になり、物語の書き方の参考になるでしょうか。あなたのお役に立てれば幸いです。
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