《映画感想》天気の子 〜世界には愛が足りない〜
こんにちは。
杞優橙佳です。
映画館で3回見て、BDで2回見ました。
ようやくこういう物語かな?という見解が固まりましたので、感想記事を書きます。
「世界には愛が足りない」
映画に関わらず創作作品って素敵ですよね。
ひとつの作品からたくさんの解釈ができます。
これもあくまでひとつの解釈と考えてください。
さて、私が考える天気の子のテーマは「世界には愛が足りない」です。
理不尽な状況に巻き込まれ、世界か個人かを選択するというセカイ系のフォーマットにのっとった作品ですが、終わらせ方が今までのセカイ系と違っていました。
これまでのセカイ系は、個人が世界に敗北して、世界という理をとって、個人に哀を残す物語が名作として語り継がれてきました。(最終兵器彼女など)
しかし天気の子は最後に奇跡を起こさず、愛を信じて終わらせた。
それが素敵でした。
そしてこの、これまでのセカイ系との違い(愛をとったこと)が、監督の示したいテーマだったように感じています。
・自粛警察
・マナー警察
・誠意は金
・それって俺に利益あるのマン
今のご時世、あまりにも理が強すぎて、愛が置き去りにされすぎです。
働き方改革で残業時間は制限されるけど仕事はへらない……子育て費用がかかるから子供産まない……なんてのも理が強すぎた結果かなと。
そこで金とかルール、マナーじゃなくて、愛だよ愛!僕らは大丈夫さ!と勇気づけてくれたのが天気の子ではなかったかと、私は思うわけです。
天気の子のクライマックスで、カッパを着るのが当たり前の生活に慣れられるのが人間の凄さなんですよ。
何度でも見返したい、ほんとうに素敵な物語でした。
以下は余談です。
天気の子の作り方
※あくまでストーリー展開のお話です。
天気の子の構造を抽象化してみたら、誰でも作れるのではないかなと考え、抽象化してみました。
重要なのは、理と愛です。
■事前準備
セカイ系全般に言えることですが、
登場人物を理不尽な現実にさらさせて
・世界が救われるか
・個人が救われるか
の選択肢を与える必要があります。
天気の子でいえば
・雨雲を晴らして東京を救うか
・雨雲をそのままにして陽菜を助けるか
という選択肢ですね。
これはどんな条件でも構いません。
例えばコンビニのオーナーが
・借金をしてコンビニ(とそこに務める数万人の従業員)を救うか
・借金をしないで個人を救うか
という選択肢でも構いません。
※ひとりで会社を左右するオーナーって非現実的ですが……大きなセキュリティ事故を起こして取引先に多大な迷惑をかけた場合とか、ですかね。
とにかく、個人を犠牲にする代わりに多くの人を救うような状況をつくるということです。ぱっと見たときに、大勢を救うほうが理性的だなと感じられる状況をつくるということです。
繰り返しになりますが、理性的に、理論的に考えれば大勢の人を救うのが正しい!!
この理を提示することが大事です。
そして愛をこの理と対立させる。
天気の子でいえば穂高から陽菜への恋心がそうですね。
先程のコンビニの話であれば、オーナーの娘が父親にコンビニなんてどうなったっていい!と言わせたら……天気の子っぽいですよね。
■では、理をつくるには?
この理はマジョリティが賛同する考え方であれば何でも構いません。
・身分差のある者がつきあってはならない
・差別されている人間とつきあってはならない
・学歴、勤め先が違う人間とつきあってはならないなどなど
多くの人が賛同する理を提示すれば問題ありません。
さらに物語を展開していく上では、先程の理を強化する登場人物を配置しましょう。天気の子でいえば法律の担い手である警察。雨が早くあがってほしいという人々の願い(Webサイトからお天気を注文した人たちのこと)ですね。
そんな常識とか差別とか嫌いだし、賛同する人を理解できないんだけど……という場合でも、物語を書くのであればマジョリティの価値観に寄り添ってみるといいと思います。
マジョリティの価値観に反発している人でも、天気の子に登場した、雨が早くあがってほしいという人々の願いは賛同できることもあるのではないでしょうか?
ようは見せ方の問題ですね。
ただし現実に根ざしすぎると、価値観が変わったときに古びて見えますので、普遍的な……例えば人間の生と死をテーマにするほうがいいでしょうね。
そして多くの人が賛同する理と対峙する愛によって、「どうなってもいい!」と言わせることで天気の子が完成します。
■まぼろしの三択目
理か愛。
二択じゃなくて、どちらも救う三択目を提示することこそ、創作の冥利では?と思われる方もいるかと思います。私もその意見には賛成ですし、どちらも救うことが最善なのは理解できます。
ですが新海監督ほどの方がそれを考慮しないわけもなく。天気の子に関していえば、理を捨てる……世界に足りない愛をとることが重要だったのでしょうね。三択目をとってしまうということは理を捨てきれないということでもあり、それって理を理由に愛を蔑ろにしている世界と変わらないよねってメッセージだと思います。
どちらも救う三択目をあえて捨てること。
その勇気が天気の子をシャープな作品に仕上げた、最大の材料だと思います。
よろしければプロット作成時にも参考にしてみてください。
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