ヘテロジニアス創作 | 複数人で作ると物語の奥行きが広がる
こんにちは。
杞優橙佳です。
今日は少し難しい言葉を使いました。ヘテロジニアスとは「異質の、異種の」といった意味を表す形容詞です。もとはIT用語ですが、異業種交流会も今後はヘテロジニアス交流会と呼ばれるとかなんとか。
そんなヘテロジニアスですが、創作においてもこの「ヘテロジニアス交流会」が面白い。本エントリーでは「複数人で作ると物語の奥行きが広がる」面白さを書いていきます。
発端は「天気の子」展
2019年9月「天気の子」展が開催されました。
「天気の子」の劇中歌であるグランドエスケープにドハマりし、サビが来るたびに心がキュンとしていた私は思わずチケットを購入しました。
『「天気の子」展』が、9月25日から東京・松屋銀座で開催される。
https://www.cinra.net/news/20190916-tenkinoko
同展では、新海誠監督の新作映画『天気の子』を様々な切り口から紹介。会場には絵コンテ、設定、作画、美術背景をはじめとした制作資料を約400点以上展示するほか、日本気象協会の協力のもと、ある気象現象を再現する専用装置を設置するなど、学びながら作品世界を体感できるとのこと。前売チケットは9月24日まで販売。松屋銀座での開催後は全国を巡回する予定だ。
また会場周辺の天気を毎日教えるオリジナル天気予報のデジタルサイネージも登場する。松屋銀座内カフェではコラボメニューを提供する。h
そしてこの「天気の子」展で「創作活動の一番面白い部分ってこういうところだよな」という事例を見つけたので紹介します。それは「企画原案と実際のポスターのギャップ」です。
企画原案と実際のポスターのギャップ
それはこの新海誠監督の企画原案と、実際のポスター。
絵柄が違うのはもちろんですが、パッと見ただけでも下記のような変更点が見えてきます。
・タイトルが違う
・須賀がいない
・キャラの服装は原型をとどめながらもブラッシュアップ
・傘が置かれて雨上がり感が増している
・作中でもポイントとなる雲のデザインに変更
これって、監督の原案イメージをみんなで共有しながら、ああでもないこうでもないとアイデアを出しあって、それを原作者も尊重したりこれはいらないと取捨選択し、ブラッシュアップした結果、素晴らしいものができあがったということですよね。
複数の人がアイデアを出しあってひとつのものを創っていく。これこそ僕は創作活動の一番面白い部分だと確信しています。
複数人で作ると物語の奥行きが広がる
複数の人間で創作をすると、原作者が特に考え無しで書いた台詞とかシーンに、思っても見なかった方向から根拠付けがなされたりします。
これが原作者にとって面白いし、作品に奥行きを与える効果もあります。
例えば5トライブに収録されている仁藤欣太郎様著の『ドナルド・シャールメイン』という外伝を読んでみてください。
これは境界を超えろ!本編の主人公であるアインを苦しめた敏腕政治家ヴォルター・K・グインが、国民選挙の後になぜアインを秘書に抜擢しようと考えたのか。それをグインの目線から描いてくださっています。
原作者の私としては感覚的に、グインはアインと戦ってわかりあったのだろうと思いザッと書いていた展開が、仁藤様の力で根拠が与えられ、奥行きが生まれました。
私の作品はとんでもなく幸せな作品です。
過去の自分と今の自分で補完しあってもいい
もちろんひとりで創作活動をする場合、複数の人のアイデアを混ぜ込むなんてのは難しいですよね。その場合は、時間という大いなる力を使いましょう。
前向きに生きていれば、昨日の自分よりも今日の自分の方が少し成長しているし、明日の自分は今日の自分よりも少し成長しているはずです。
つまり、長い時間が立った後の自分は、別人のような目線を持っているということです。
5年前に書いた自分の作品に対して、今の自分が新しい発想を加えてあげれば、まるで二人で創ったみたいな作品になって、奥行きが生まれます。
私の作品なんて、2015年に完成させたものを継ぎ足し継ぎ足して改稿も重ねたりしています。
また、多くの外伝を書いて奥行きを出す効果も狙っています。例えば2010年から2014年にかけて書いた作品、境界を超えろ!第2巻の第26項 エンドラル・パルスで、下記のようなシーンがあります。
リングリットは、「それは奴隷ではなく献身で、自分で献身する場所を選べるなら、奴隷とは違うんじゃない?」と主張した。
これを書いた時の原作者は、正直何も考えておらず、リングリットならこういうことをしゃべるだろうと思い書いていました。
その言葉に意味を付加したのが2016年8月に書いたLinkAuter Chronicle Xceed外伝 ケルト・シェイネンの第13項 偶像崇拝です。
この時ケルトは、奴隷制がどんな社会にも—例えば資本主義社会でも経営者と労働者のように形を変えて存在していると話し、アインの考えを幼稚だと批判した。その時、隣りにいたリングリットはどう言ったか。彼女は「それは奴隷ではなく献身で、自分で献身する場所を選べるなら、奴隷とは違うんじゃない?」と柄にもなく主張した。リングリットは、誰の言葉にも耳を傾ける能力を持っていた。その彼女が、アインの側に立ち、ケルトを批判したのだ。
そうか、誰の言葉にも耳を傾けるリングリットがアインの側に立った確定的な言葉だったのかこれは、と気づかされました。2年の時を超えて、2人の私が交わり、作品に奥行きを与えた一例でした。
ずっと自分の作品を愛するのは難しいかもしれませんが、自分の作品を生涯愛せるのは自分だけです。昔書いた作品をひっぱりだしてきて、今の自分の感性で補完してあげても面白いと思います。
是非試してみてください。
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