AIで復活した史上最強の内閣!「もし徳川家康が総理大臣になったら」感想

2021年6月6日

2020年。新型コロナの初期対応を誤った日本の首相官邸でクラスターが発生。混乱の極みに陥った日本で、政府はAIで偉人を復活させて最強内閣を作る計画を実行する。徳川家康が総理大臣、坂本龍馬が官房長官になるなど、時代を超えたオールスターで結成された内閣は日本を救えるのか!?

もし徳川家康が総理大臣だったら

 新聞の広告欄で出会いました。「もし徳川家康が総理大臣になったら」面白かった。

 やりたいことを全部やられた……そんな思いがあります。「過去の偉人というキャラクターの強さ」を活かしつつ、「出落ちにならない展開」を見せ、完璧な「徳川家康の幕下ろし」を行った作品でした。

 この本について、3つの視点から気づきを書きます。

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過去の偉人というキャラクターの強さ

 総理大臣に徳川家康。 経済産業大臣に織田信長、財務大臣に豊臣秀吉、官房長官が坂本龍馬。

 このメンバーリストを見るだけで、歴史好きならワクワクします。

 このワクワクの正体は、コロナによって痛めつけられた日本の課題を彼らなら解決してくれる!というポジティブな思いを抱けることです。(ワクワクする物語とは〜ワクワクの正体を掴んだ〜

 ではなぜ、「彼らなら解決してくれる」と信頼できるのか? それは圧倒的な名声があるためです。生まれの良さ、人から慕われる人柄、誰よりも優秀であった……という実績があるとわかるためです(指揮官の名声値を高める、4つの考え方)。

 これこそが過去の偉人を使うポイントです。過去の偉人を物語に出すということは、説明しなくても実績を示せるということです。普通、物語というのは小さな課題解決から初めて、次第に大きな敵に立ち向かっていくものです(鬼滅の刃もこういったステップを踏んでいますよね)。
 ですが偉人を登場させる場合は、巨大な課題にいきなり立ち向かわせても、勝てる!と思わせられます。つまり序盤の成長物語をスキップできるのです。これこそが過去の偉人を使う最大の理由です。

 

出落ちにならない展開

 乱世を生き抜いた英傑たちの、けた外れのリーダーシップによる「最強内閣」が、日本の問題をどう解決していくか……これだけで読者は惹きつけられます。最初の150ページぐらいは「最強内閣」の圧倒的な活躍が描かれます。

 総理大臣の徳川家康。 経済産業大臣の織田信長、財務大臣の豊臣秀吉、官房長官の坂本龍馬が、「実際にこんな風にしゃべるだろうな」というイメージ通りの言動で課題解決をしていきます。

 ですが「最強内閣」が凄すぎる!の一辺倒では、この物語どうやって収束させるの?という気持ちになってきます。そこで最強内閣の中にトラブルの種を巻くことになります。中盤移行は外の問題と中の問題が並行して描かれ、その中で坂本龍馬が主人公の相棒としてフォーカスされていきます。

 これが出落ちにならない展開として素晴らしかった。

 戦国武将や並み居る大名の中で、坂本龍馬だけは確かに異質な存在です。規律を守るというより、どちらかというと破壊する側に立った人ですし、ゼロから新しい国を作ろうとした人でしたからね。ですがそういった竜馬を、私も大好きです。多分読者の誰もが好きになると思います。家康や信長は仰ぎ見る存在にこそなりますが、共に未来を切り開いていく仲間にはならないでしょう。そういったキャラクターになるのは、やっぱり竜馬です。

 「最強内閣」という仰ぎ見る存在で読者の注意をひきつけ、中盤移行は竜馬という相棒と共に内部の問題に立ち向かう……この展開のおかげで単なる出落ち作品にならず、最後まで駆け抜けました。

 

徳川家康の幕下ろし

 竜馬とともに「最強内閣」内部の問題を解決した後は、じゃあどうやってこの「最強内閣」を卒業させるかが問題になるでしょう。そこで完璧な幕引きを行ったのが、徳川家康でした。

 Web小説なんかであれば「最強内閣」がそのまま居座るようなストーリーを選んだかもしれません。その方が続編も作りやすいですからね。ですがこの本は一冊で物語を終わらせるため、AIのつくった「最強内閣」から人間への引き継ぎを行いました。

 徳川家康の最後の言葉は、これも過去の偉人というキャラクターの強さを存分に活かしたものでした。たった一冊の本で描いたエピソードだけでは、「最強内閣」を幕引きさせるための言葉を述べさせることは不可能です。ですがそこは徳川家康という偉人のバックボーンがありますから、広い視野の言葉に説得力が出るわけです。私なんかは、この本で徳川家康が述べたようなセリフで、物語を締めてみたいと思います。ですがオリジナルのキャラクターにこの言葉を発させるまでには、長い長い時間が必要となります。それをこの本は、偉人のバックボーンを活用して一冊で描いてみせた。

 素晴らしかった。

 

「もし徳川家康が総理大臣になったら」まとめ

 「もし徳川家康が総理大臣になったら」に気付かされた3つの視点をご紹介しました。作家としてはこの3つの視点に気づきをエられたのですが、国会での居眠りや、責任のない発言、責任のたらい回しなど、現代の政府に喝を入れてくれる、気分爽快な作品となっています。豪華メンバーで映画化されないかなあ。

 また、幕末を生き、大政奉還を成し遂げた龍馬が「わしらがつくりたかったのはこういう平和ではないぜよ。わしらが流した血はこういう国のためではないきに」と言ったセリフには、深く考えさせられました。

 現代は幸せな社会ですが、過去の偉人たちが命がけで作ってきた大河の先にある社会であると、再度噛み締めながら生きたいと、そう心の引き締まる一冊です。ぜひ読んでみてください。

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