【2020年の総括】星野源、「うちで踊ろう(大晦日)」が2020年紅白歌合戦で発表された意味
『うちで踊ろう』発表!(2020年4月3日)
2020年4月3日はまさにコロナウイルスに対する絶望が、日本国民に広がっていたタイミングでした。そのタイミングで、『うちで踊ろう』が発表されました。
誰か、この動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねてくれないかな?
コロナウイルスの恐怖に支配される中で、生きて踊ろうと歌われる歌に、どれほどの人が救われたか。
緊急事態宣言により、突然もたらされた、友人と会えず、外出も自由にできない日々をどれほど楽にしてくれたか。
様々な人がこの動画に楽器の伴奏やコーラスやダンスを重ねていました。
私も歌を口ずさみ、コラボレーション動画を見て、楽しい気持ちになることができました。
(これは星野源さんの意図したものではないでしょうけれど、ふざけたコラボレーションに腹を抱えて笑い、日々の不安が吹き飛んだこともあります。納豆かき混ぜる星野源、豆腐を開けるのに苦労する星野源、USBがさせない星野源、デュエルマスターズをする星野源etc。コラボレーションというより、コラです。笑)
Youtubeでもコラボレーション動画がたくさん発表されていました。
まだYoutubeで稼ぐことが当たり前ではなかった時期です。
2019年にカジサックさんと中田敦彦さんが成功して、芸能人がいよいよYoutubeに参画するぞという空気が高まり、2020年1月にYouTubeチャンネル『宮迫ですッ!【宮迫博之】』がスタートしたような時期。コロナウイルスで芸能人が地方営業できなくなり、収入源としてのYoutubeが大きくピックアップされていた時期。
チャンネル開設したての芸能人やアーティストが、自分たちを知ってもらうための取っ掛かりにもなったんじゃないかなと感じます。それによってチャンネル登録者数や視聴数が増え、広告収入によって救われた人たちも相当数いたと思います。
2020年4月16日には、安倍総理がコラボレーション動画をアップしたことで話題になりました。特に歌うでもなく、踊るでもなく、自宅でくつろいでいる様子を撮ってアップされたこの動画は、賛否を呼びました。
※個人的には大晦日バージョンで追加された2番の歌詞をあわせたら、深い動画になるのではと感じています。
これに対して星野源さんの発したコメントも良かった。
「一つだけ。安倍晋三さんが上げられた『うちで踊ろう』の動画ですが、これまでさまざまな動画をアップして下さっているたくさんの皆さんと同じように、僕自身にも所属事務所にも事前連絡や確認は、事後も含めて一切ありません」
ノーコメントに近い対応。一般の方でも首相でも扱いは変わらないよという態度にも感じられ、素晴らしいと思いました。「コロナウイルスで苦しんでいるのはみんな一緒なんだ。地位も名誉も関係ない、人なんだ」というメッセージを勝手に読み取りました。
『うちで踊ろう』(2020年4月3日)〜『うちで踊ろう(大晦日)』(2020年12月31日)まで
このあとは、緊急事態宣言が2020年5月25日に解除。
経済へのテコ入れとして、2020年7月22日以降に開始する旅行を対象とした、Go To トラベルキャンペーンが開始されます。観光業界・宿泊業界を救う施策である一方、感染を拡大するということで、批判も多くありました。
※私はいつもGo To トラベルキャンペーンのニュースを見るたび、「感染を拡大させたいのかい、収束させたいのかい、どっちなんだい!?」という、なかやまきんに君の筋肉ルーレットを思い浮かべます。
このGo To トラベルキャンペーンが起因なのかはわかりませんが、2020年8月7日にコロナウイルスの第2波がピークを迎えました。
そして2020年8月28日に安倍総理が退陣し、2012年より永遠に続くかと思われた安倍政権が終わります。
2020年9月16日には、菅義偉さんが第99代首相に就任しました。
2020年10月1日からはGo To トラベルキャンペーン第2弾として「地域共通キャンペーン」が開始されました。私も大事な人の結婚式に参加した際、Go To トラベルを利用しました。ふだんより数段階高いグレードのホテルに泊まることができて、ありがたかったです。
2020年11月以降は、再び感染が拡大し、2020年12月に訪れた第3波は、かつてない規模で拡大しはじめました(急激な気温の変化により、体調を崩す方も多くおられたのだと思います)。
実際、感染者数の抑え込みに成功し、緊急事態宣言を停止した2020年5月25日ごろから、冬場に次の波が来ると言われていました。それに対して、僕らは、僕らの所属する組織は、備えることができたのでしょうか。医療機関の増床、企業の完全テレワーク化……など、やるべきことは沢山あったような気がします。(職場でも、夏以降テレワークでは不便・できないことがあると、出社する人が増えていました)
思えば2020年6月から2020年12月という半年間は、神様が与えてくれた、コロナウイルス世界で生きるための準備期間だったのかもしれません。
ですが、この準備期間は、上半期に失った売上と利益の取り返しにのみ、向けられたように感じます。
いまにして思えば、2020年11月くらいから12月末にかけて、うちの国は、いつもの負けパターンに入った気がしました。
最初は、みんなの精神力で他の国よりも成果をあげるのだけど、時間が経つにつれて、体制の整ってきた他国が成果をあげはじめ、抜かれてしまう。一方でうちの国は精神の糸が切れて成果をあげられなくなり、沈んでいく。
これって、小説 太平洋戦争(全9巻)で読んだ展開なんです。
《小説感想》小説 太平洋戦争 戦争よ、さようなら!
私は、小説 太平洋戦争を読んだときの感想で、大日本帝国が負けた原因を3つ想像しました。それは下記の3つです。
①補給の軽視
②上意下達を崩せなかった
③現状を捻じ曲げる情報伝達
なんだか、この3つが、いまの偉い人たちのあいだで再び出てきちゃったのかなと感じ、ヤダなと思いました。
2020年の12月末にかけての病床の切迫、企業の倒産、コロナウイルスの急激な流行。もはや自己責任ではどうにもできないほどに、絶望的ないま。誰か助けてと叫びたくなるいま。だけど誰も助けてくれない、いま。
僕らは自暴自棄になり、他人とつながりたいという本能の赴くまま、都会にでて、クリスマスを楽しみ、……感染を爆発させてしまったのではないでしょうか。
「もういいよ、こんな世界」
と思った人だって、いたのではないでしょうか。
私も、2021年1月3日に地上波初放映された天気の子で、須賀さんが言っていた台詞
「まあ、気にすんなよ、青年。世界なんてさ、どうせもともと狂ってんだから」
を免罪符にしてしまいそうなときがあります。
世界なんて狂っているんだから、僕たちも思うままやったっていいんだ。
それが2019年、新海誠監督が発した、最先端のメッセージでした。
『うちで踊ろう(大晦日)』フル・バージョンが発表されたのは、そんな、世界が狂っていく、2020年の大晦日12月31日でした。
次のページがラスト。大晦日に公開されたあの歌詞を語ります。
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