「燃える展開」「熱い展開」とは?計算された演出とストーリーテリング
良い物語は私たちの心と感情を強く惹きつける力があります。中でも強く惹きつける物語を私たちは「燃える展開」「熱い展開」と呼んだりします。本エントリーでは、「熱い展開」とは何か、例をあげて説明します。
「燃える展開」「熱い展開」とは?
「燃える展開」「熱い展開」とは、「話の筋書きが、心を高ぶらせるものである」ことです。「燃える展開」を自身の物語に取り入れるためには、コンセプトの構築、クライマックスで読者を盛り上げ、感動させ、伝えたいテーマを伝えるための手法「演出」を学ぶことが重要なヒントとなります。
「燃える展開」「熱い展開」とは、計算された演出とストーリーテリングの先にあります。
■コンセプトの構築に関するまとめ
■演出に関するまとめ
「燃える展開」「熱い展開」=お約束展開ではない。
単にお約束の「盛り上がり」シーンを含めるだけでは、熱い展開は実現できません。例えば表面的な展開(死や絶叫、特攻といった、映画や小説などでよく見られる「盛り上がり」シーン)を物語に盛り込むことは簡単です。しかし、要素を含めるだけでは、作品は本当の意味で「燃える展開」を達成することはできません。
物語に「燃える展開」を生み出すためには、作品全体を通して、その盛り上がりへと視聴者や読者を引きつけ、緊張感を煽り、ジラさせてから最終的に大きな高揚感を解放することが必要です。それこそが、視聴者や読者から「熱い」「燃える」と評価されるための、本当の「盛り上がり」のシークエンスです。
「死」を例に説明すると、小説や漫画のバトルシーンで「君、誰だっけ?」というキャラクターが敵に特攻して死んだとしても、感動しないでしょう。それどころか、私などは、キャラクターの死を悲しいと思えず、そのことに罪悪感を感じて落ち着かなくなります(それもあってか死を安易に使う作品は嫌いです)。つまり、死や絶叫、特攻するキャラクターが作品全体とのつながりを持たず、盛り上がりの前の溜めがないことが問題です。死の前には生が、完勝の前には苦戦があるから盛り上がるのですね。
「燃える展開」「熱い展開」の例
以下に 燃える展開の例をいくつかピックアップしてご紹介します。
- バトルもので、仲間の遺した手段で勝つ
- スポーツもので観衆の声援で立ち上がる
- 今までの仲間、敵、ライバル大集合
- 主人公の永遠のライバルが主人公を認める(ドラゴンボールのベジータ「がんばれカカロット、お前がナンバー1だ」)
- 辛気臭いのが大嫌いな母親から渡される、愛にあふれた手紙(アオアシで地元の愛媛から東京に出発する車内で母親の手紙を読み号泣する主人公アシト。母親にとって子供って何を為していようがいまいが元気にこの世に生まれてきてくれただけでとっくに誇りなんだよという、母親の愛に包まれた一コマ。母親に楽をさせたいという、アシトの気持ちに対する母の回答は、預金通帳と手紙と新しいスパイク)
- ヘタレキャラクターが意地を見せる(ボコボコにされても立ち上がり、敵の前に立ち続けた「ONE PIECEのウソップ」、臆病かつ逃げ癖があり強敵に出くわしたときダイを置いて一人で逃げることすらあった男が逃げろと言われても構わず戦うことを選んだ「ダイの大冒険のポップ」)
- 初期必殺技が最強・最後の必殺技になる(グリッドマンユニバース劇中のグリッドビーム。羽生結弦選手のトリプルアクセル→創作ネタ | 羽生結弦選手の至高の物語 | 美しい物語シリーズ)
- 絶望的な状況で現れる最強キャラクター(例.るろうに剣心で、人間離れした巨大で圧倒的な破壊力をもつ不二の前に立ちはだかる比古清十郎「お前が全力を出しても倒せない男がこうして目の前に立ってやっている」)
- 誰かを頼ることを知らない強くて孤独なヒロインに「好きだよ」「お前の手がどれだけ人の血で汚れても、俺はその手で触れられたい」「世界が全てお前の敵に回っても俺はお前を助けにいくよ」と愛を注ぐ主人公
- ラスボス戦が終わった後に世界の命運とか好きな女の子の命がかかってるとかそんなもん何も関係なく行われるお互いボロボロの状態で行われる主人公とライバルの因縁に決着がつくだけのケンカ(私の大好きなリコリス・リコイルの最終話もこの展開でした。千束vs真島は、お互いが信念を吐露する熱い展開でした)
- 師匠から力を受け継ぐ主人公(僕のヒーローアカデミアで、オールマイㇳからワン・フォー・オールを受け継ぐ主人公デク)
- 主役級のキャラの名前をいつも間違えて呼ぶキャラが、最後近くの、ここぞ、というシーンで、主人公の名前を正しく呼ぶ
「熱い展開」「燃える展開」令和の聖典グリッドマンユニバース
私が「熱い展開」「燃える展開」の聖典だと感じられる作品は、グリッドマンユニバースです。おちょごさんが仰っていますが、グリッドマンユニバースは脚本としても素晴らしく、深く考察するのも面白い作品です。
「#グリッドマンユニバース」はシナリオ内に「片想いの告白」「記憶喪失」「喪われた人への届かぬ思い」「創られた生命の意味」という激エモなテーマが散りばめられているが、ビックリするのは二つのテレビアニメシリーズで扱ったテーマを、別の角度から深掘りしている所である。まさに令和の激エモ
熱い展開の例としても、グリッドマンとダイナゼノンという2大シリーズ作品の主人公が集合し、過去のライバルキャラと主人公の再開、初代ボスが最強の味方になって再登場する、絶望と希望の連続による右肩上がりでボルテージが上がるストーリーと、思いつく限りの熱い展開を詰め込んだ作品です。
グリッドマンユニバースは昭和特撮のグリッドマンに端を発したグリッドマンシリーズの集大成であり、昭和から平成にかけて「燃える展開」「熱い展開」を研究し尽くされて作られた集大成の物語ですから、「燃える展開」「熱い展開」を学ぶ聖典になります。
私も買いましたが、ぜひ以下のノベライズ作品を読んで、楽しみながら熱い展開を学んでみてください。
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