シナリオ論「コンセプトセンテンス」づくりの重要性

2023年4月24日

 Twitterは小説家を目指す人にとって有益なツールです。
 シナリオ作成に関して活発に発信されているDKさんのツイートは参考になります。
 ただ、Twitterは情報が散らばりやすいため、話がとっ散らかるケースがあります。
 そこで、備忘も兼ねてDKさんのコンセプトづくりに関するツイートをまとめました。

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コンセプトづくりの重要性

 コンセプトづくりは執筆工程の一番最初の段階です。一番少ない文字数で物語を説明するものとなります。執筆工程は以下の段階で進みます。
コンセプトセンテンス→ストーリーアブストラクト→プロット→プロット+各種設定資料→初稿……
 コンセプトセンテンスでは変なこだわりや独自性を示そうとせず、短い文(100文字以下)でざっくり全体像やジャンルが伝わるよう書きます。

 また、ありきたりのコンセプトセンテンスや短い文章になることを恐れないことが大事です。なぜなら、余分な情報を付け加えることで結局何が言いたいのかわからなくなることもあるからです。

 冗長表現防止の補助ツール「すいこう君」などを活用しましょう。

1つのアイディアとコンセプトだけで作品が形作られることはない

創作未習熟者ほど根拠のない自信から

「ボクの渾身のアイディア1つとコンセプトがあれば作品大成功は間違いなしなんだ!」

とか考えてしまうのだけど、実際は本人が思うほど、たった1つのアイディアとコンセプトだけで作品が形作られることはないので、体系的に考えて整理できるようになってね

 重要な指摘です。
 新規性のあるアイデアを思い付いた!と感じても、1つのアイデアとコンセプトだけで作品をつくることはできません。
 例えば「女子高生が総理になる」というコンセプトを思い付いたとして、それだけでは話が膨らまないのですね。
 そこで複数のコンセプトが必要となります。DKさんはコンセプトを「新規コンセプト(新しく加えるアイディア)」と「既定コンセプト(既に決まっていること)」に分けて整理されました。

 ここで重要なのは自分の作りたい作品に『似ている「既定コンセプト」』を既存の作品から抽出することでしょう。映画でも漫画でも小説でもかまいませんが、自分の理想に近い作品かたコンセプトを抽出してきます。そこに「新規コンセプト(新しく加えるアイディア)」を加えることで独自の物語を作っていくという方法です。

 

「積極的コンセプト」と「消極的コンセプト」

 DKさんはコンセプトを考えるときに「積極的コンセプト(入れていくべきアイディア)」と「消極的コンセプト(入れてはいけないアイディア)」があると書いています。

 ここで難しいのは「消極的コンセプト(入れてはいけないアイディア)」のほうでしょう。
 何をもって入れてはいけないとするか……。この判断は経験による部分が大きいと感じます。しかしDKさんは消極的コンセプトについてもヒントを出しています。

各種コンセプトは、作中のタイムライン上の、適切な場所へ任意で反映される。
絶対のタイミングや、唯一の正解などはないが、必要性や反映理由は説明できるようにしておくべきで、それが論理的に納得いくものでなければ、編集などでカットされる可能性がある。

 つまり「消極的コンセプト」は、作中のどこで使っても悪いシチュエーションを作り出してしまうアイデアではないでしょうか。
 例えば純愛小説における「寝取り要素」などです。

画像

「入れてはいけないアイディア」に対する考え方。

 入れてはいけないアイディアに悩む場合は、優先順位をつける(3つくらいにとどめる)、あえて枷とすることも薦められています。私は上でも書きましたが、検討段階で入れてはいけないアイデアを思いつくのは難しいと考えます。ストーリーアブストラクトに取り掛かるくらいで、このアイデアは入れないほうが良いというのがあれば立ち戻って加えるのが良いのではないかと感じます。

消極的コンセプトは既定コンセプトに含まれている場合が多いので、個人でそうなるのは興味深いですね。対処としては2つ。

1.優先順位をつけて全部「入れてはいけない」とはせず3つくらいにとどめる
2.あえて枷として何とか抜け道を見出す

現場だと既定条件が多すぎて後者になる、とかあります

4種類のコンセプト

 コンセプトセンテンス作成にあたっては、世界観(雰囲気)コンセプト、特筆コンセプト、ストーリーコンセプト、企画条件コンセプトの4種類のコンセプトを作成します。

世界観(雰囲気)コンセプト設定

 作品世界全体の雰囲気を示すコンセプト。DKさんのシートが非常に役立ちます。

「展開の変化も含めたコンセプト(明るい、暗い)」
「ノリのコンセプト(シリアス、ギャグ)」
「主要登場人物、キャラクター推しのコンセプト(愛されキャラ主軸、憎まれキャラ主軸)」
「特定の感情に訴えるコンセプト(笑わせる、泣かせる、喜ばせる、怒らせる、悲しませる、怖がらせる、ほっこりさせる」

 いずれも対比される要素であったり、感情の要因をもれなくダブりなく示したものになります。自分の作品の雰囲気をメモしておくのは重要ですね。ほっこりさせたい作品で、登場人物を殺してしまうようなミスマッチをさけることができます。

今回「コンセプト設定」の解説をしようと思ったきっかけの内容。
「世界観設定」としてしまうと、設定情報としての意味合いが強くなるので、作品が展開する世界全体の「雰囲気」のコンセプトをどう考えているのか明確にする目的でこの項目名にしてある

特筆コンセプト設定

 作品の特色となるコンセプト。DKさんのシートを見ると、読者を驚かせたり、謎や秘密にかかわるものばかりです。
 ここで重要なことは「設定がちょっと突飛なんだよ」レベルでは特筆にならないということ。展開として何が突飛なのかを考える必要があるのですね。そして、初心者が考えがちな新規性のあるアイデアって、たぶん設定の突飛さなんですが、商業の世界では全く役に立たなさそうです。

「サプライズアイディア」
「どんでん返し要素」
「謎」
「秘密(誰が何の目的で秘密にしているか)」
「隠された問題(意図的に問題を残す、隠す意味・理由・効果)」
「秘匿された欠陥、欠点(あえて欠陥を組み込む理由。グリッドマンSSSSシリーズで言うところの怪獣がでるなんて無理がある設定とかでしょうか)」

まさに作品の特色となるアイディアに相当するコンセプト内容なので、横取り、盗作、ネタバレを嫌がって明示しない企画者がいるので、雰囲気コンセプトとは別な意味で解説をしたいと思った項目。本当に効果的なコンセプトなのか、自分以外に見てもらわないと判断できないよ

ストーリーコンセプト設定

 具体的なストーリーに関するコンセプト。DKさんのシートを見ると、「プレミス」や「イメージラフ・ログライン・ナラティブとレシ」にもつながる話に見えます。

 

 ストーリーコンセプトに含めるべき情報は以下の通りです。

「テーマ(要するに〇〇ネタ)」
「主張(テーマが含む問題提起)」
「メッセージ(問題提起でなくとも、作品を通して伝えたいこと)」
「ジャンル(恋愛、ホラーなど。このジャンルでやるならこの表現はNGといった確認にも使えそうです)」
「語り口、語り方(視点。吾峠呼世晴先生が鬼と吸血鬼の戦いを描いた読み切り作品『過狩り狩り』を、炭治郎の視点から描いてみたらヒットした話を思い出します)」

他のコンセプトはやたら具体的で、場合によっては聞かれていないコンセプトを語る企画者もいるのに、何故かストーリーに関することになるとフワッとした言い方や、抽象的表現でコンセプトを語ろうとするので、具体的かつ簡潔に示してもらうべく設定した項目

企画条件コンセプト設定

 企業と企画を進めるうえで既に決まっているコンセプト。個人レベルではあまり関係なさそうですが「メディア」や「総時間、ボリューム」は意識してもよいかと感じます。

「製作費」
「スタッフ」
「キャスト」
「メディア(どの媒体で発信するか。なぜ小説なのか)」
「総時間、ボリューム(何冊で終わる話か)」
「時間帯」
「大義名分、目的」

 小説である必然性を考えることが大事という話は、以下のエントリーでも書いています。

 ボリュームに関しては、公募を狙うのかWeb小説で発信するのかによっても文量が違ってきますね。最初に定めておくことは重要です。
 また、世の中には多種多様の娯楽が溢れており、今は時間の奪い合いが起きている状況です。もしかしたら今後は1巻完結で感情を動かしてくれるような作品が好まれる時代になるかも……という話は以下のエントリーで書きました。


自分の企画とコンセプトをゼロから作る能力と自信があることは大事だけど、自分が趣味で作品を作り始めるとき以外で、ゼロから作ることはほぼなくて、クライアントからある程度のコンセプトは決められ状態で関わることのほうが圧倒的に多い。まずはその条件を把握すべき

コンセプト整理シートにまとめる

 4種類のコンセプトをコンセプト整理シートにまとめて、自分自身や仲間が考えていることを脳内から取り出して、明確化します。

 これ、自分が好きな作品に対して実施するのもよいですね。好きなものに対する解像度が上がります。例えば自分の頭の中で「リコリス・リコイル」はこういう作品とイメージがあっても、それ仲間にも共有できているかと言えば、できていません。コンセプト整理シートにまとめることで、自分の好きな作品を要素分解でき、それを自作にもつなげることができます。

 

コンセプトを企画書にまとめる

 自分の作品を多くの人と一緒に作りたい!場合には仲間を集める必要があります。そのために必要なものが企画書です。

 企画書は、ここまでのコンセプト設定が完了した後でまとめましょう。
 DKさんは、ここまでのコンセプトづくりをせず、いきなり企画書を作ろうとしても内容の薄いことしか書けないので、バックボーンとなるコンセプトがいかに重要かを書いています。
 さらに言えば、ここまでのコンセプトづくりをせずいきなりプロットや物語を書こうとしても……という話ですね。

 企画書に含める要素は以下のものがあります。

「媒体(展開メディア)」
「新規性・独自性」
「定番要素」
「ターゲット」
「セールスポイント・コンセプト」
「テーマ・メッセージ・主張」

コンセプト設定を固めた後は企画書としてまとめる。
駄目な例も載せておくけど、コンセプト設定を固めてない状態の人が、流行に影響受けて、なんとなくやろうとしても無理って話。
ここまで酷くなくても「自分にはとっておきのコンセプトアイディアがあるんです」って人、それしかなかったりする

※企画概要の説明を1枚のスライドにまとめたものが公開されていました。

ストーリーアブストラクトへの発展

 ストーリーアブストラクトはストーリー全般を200文字以内で内容を結末まですべて説明していくことです。
 200文字以下程度で優先度の高い情報を、ネタバレ全開で書く。主人公の特徴、展開の特徴を含めることが重要です。

 コンセプトセンテンスがテンプレっぽくなっても「部品」次第でストーリーアブストラクトは特徴づけられる話をされています。
 「部品」を変えるためには何故ソレが『テンプレ』化してるのかと考える必要がある。そして考えると『テンプレとは極度に抽象化された概念の使いまわし』だと気づく……という話です。

『多くの人々を救う大事なものをどこかに貰いに行く為に旅をする』
『何かを成し遂げる為に仲間を集めていく』

 テンプレ作品の中に共通する、抽象化した概念をどれだけ頭に蓄えるかが作家としての基礎体力になるのですね。そうすると、とにかく本を読むのは効率的な勉強方法に感じます。自分が書こうとしているジャンルの作品を3冊読んで共通する要素を洗い出してみるなどは有効ですね。

コンセプトセンテンス書いた後に、ストーリーアブストラクトに発展させる上では、榊先生のこのスレッドが大変参考になるので読んでみて欲しい。
コンセプトセンテンスがテンプレっぽくなっても「部品」次第でストーリーアブストラクトに特徴付けして色々な話に分化できるよ、という話なので是非。
https://twitter.com/ichiro_sakaki/status/1516254941379448839?s=20

 

プロットへの展開

 コンセプトとストーリーアブストラクトができてしまえば、最初にプロットをガチガチに固めなくても都度修正が可能です。なぜなら方向を指し示すコンパスはできているからという話ですね。ということで、プロットの使い方も人それぞれ、時々によります。

「作品によって流動的で、○○派はいない」
ざっくりコンセプトがあって、それをまとめていく過程でプロットを作っていく、先にガッチリプロット作って計画的に動く、誰かと情報共有が必要で急ぎプロット作る、とか私も色々。
https://twitter.com/benikake_sorane/status/1639750630880448512?s=20

 加えて、キャラクターとプロットとテーマはばらばらに存在しないという話があります。テーマについては以下も参考にしてみてください。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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