笑いの3要素〜例を出して紹介します〜

こんにちは。
杞優橙佳です。

先日のエントリーの中で、面白いの定義に
2 つい笑いたくなるさま。
という要素があることをご紹介しました。

こんにちは。杞優橙佳です。 皆さん、小説書いていますか?僕はこの1ヶ月で随分小説を書くことができました。 表現の幅を広げられるよう...

今回のエントリーでは前回のエントリーで書くのを避けていた笑いについて、紹介をしていきたいと思います。

笑いの3要素

アメリカの哲学者、ジョン・モリオールの笑いの分析によると、笑いは3つの種類に分けられるそうです。

「優越の理論」
他人の欠点や失敗などから、自分の方が上と感じるときに笑う。

「不一致の理論」
 例えば人はジョークを読むとき、結末を予想しながら読みますね。そしてオチで予想との不一致に遭遇し(第一段階)、不一致を解消する認知的なルールを獲得した場合(第二段階)に笑いが発生するという理論です。

「放出の理論」
 高まった緊張が不要となったときに、貯まった「心的エネルギー」が笑いによって開放されるという理論です。普段抑圧されていた心的エネルギーが開放されることも含む。日本のお笑いを語る際に、落語家の桂枝雀さんが唱えた「緊張の緩和理論」が話されることがありますが、それも放出の理論のひとつだと思います。

ちょっと理論的な話なので硬いですね。本当に面白いの?と疑問に思うかもしれませんが、これらの笑いの3要素について、実際の小説の文章を使いながらみていってみましょう。

優越の理論に基づいた笑い例

 リーダーシップと紙とペン: 神を語るジャガイモから主要キャラクターであるディーオーエムオーの失敗シーンを持ってきて解説しましょう。

「ご苦労だったな」
 言ったのはディーオーエムオーだ。腕を後ろで組み、胸を張って神衛隊の真ん中をスタスタと歩いていく。パンサーはこのとき、ローディアを連れてきてくれたディーオーエムオーに神格性を感じつつあったのだが、ディーオーエムオーの一言を聞き、彼が元から神衛隊とつながりがあり、自分を崇拝させるために奇跡——バタフライ効果の演出をしただけなのだと想像した。
「ディーオーエムオー、お前」
 パンサーは失望した様子で呟く。しかし神衛隊から発せられたのは意外な言葉だ。
「誰だ?お前は」
 冷たい視線がディーオーエムオーに注がれる。
「なんでだい! お前たちは神の使いじゃないのかい!? 神の顔を忘れるとは何たることだい!」
 ディーオーエムオーはほらがいを吹いた。隊長は頭を抱えており、ローディアがかわりに話をし始めた。

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ディーオーエムオーの失敗、それに対する怒り。ほらがいをふいて気を紛らわせるという無様さ。これらが優越理論の笑いを生じさせるのではないでしょうか。優越の理論に基づいた笑いを書く時は、とにかく無様なキャラクターを書くと良いと思います。

不一致の理論に基づいた笑い例

これもリーダーシップと紙とペン: 神を語るジャガイモからシーンを持ってきて解説しましょう。

「お前はいつ生まれたんだい!? お前は生まれてないのかい!? 明日は私の誕生日に4を足して2をかけて6を引いて2で割った後、お前の誕生日を引いた翌日だい! 記念パーティの準備が必要じゃないのかい!?」

「え、ええ?1日?2日?いや、まずお前の誕生日を知らないんだが」

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え?どこが不一致の理論なの?と殆どの方は思われたと思います。
参考までに紹介させてください。

台詞の元ネタは、あなたの誕生日に4を足して2をかけて6を引いて2で割った後、あなたの誕生日を引いた翌日は、必ず1になるという数字のマジック。

作者の願望としては、この台詞を読んだ読者に、あの数字のマジックね、答えは1日だ!と想像してほしいという、めちゃめちゃハードルの高いことを要求しています(なのでほぼ全ての読者には、ディーオーエムオーがわけわからんこと言い出したとしか見えないでしょうね)。

そして、さらにその元ネタの『あなたの誕生日に~あなたの誕生日を引く』の部分を『私の誕生日に~あなたの誕生日を引く』に改変しており、いやいやこれ1日にならへんやん!ディーオーエムオー間違っとるー!という不一致の笑いでした。

要約すると、すでにある作品をオマージュした上で、それ違うやん!とツッコむことを不一致の笑いと言っていいでしょうね。

不一致の笑いについては、予想させるフェーズをかっ飛ばして突拍子もない結論を持ち出し、まあこのキャラならそういうこともあるよねと納得させるやり方もあります。

 ローディアは頷いて、馬車に関する書類を記載し始めた。「私の座席はどこにあるんだい?」
 ディーオーエムオーがローディアの手元を除きこんだ。
「キャッ、びっくりさせないで。あなたの席は、そうね。車輪にでも縛り付ける?」
「それでは私が高速で回転してしまう! お前たちと同じ顔になってしまうぞ!」
「大丈夫。絶対に同じ顔にはならないから」
 ローディアの言葉は辛辣だった。
 ディーオーエムオーはシュンとしてその場で体育ずわりをした。

 3日後、準備が整い、彼らの元へ馬車が到着した。3日間体育座りをしていたディーオーエムオーには、とんでもない量のホコリが積もっていた。
「あー、もう!」
 ローディアはディーオーエムオーに積もったホコリをバシバシとはたいて、無理やり馬車に乗せた。

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3日間でとんでもない量のホコリが積もるというのは普通ではありえない展開ですが、ディーオーエムオーならありえるかなと思ってもらえたら勝ちですね。

放出の理論に基づく笑い

これもリーダーシップと紙とペン: 神を語るジャガイモからシーンを持ってきて解説しましょう。緊張から緩和のバージョン、緩和から緊張のバージョンでそれぞれ1パターン見てみます。

・緊張から緩和バージョン

「なんだ? ここ」
 パンサーは目をこすった。目の前に1つ、棺が置かれている。彼は恐る恐る棺に近づき、手を近づけた。するとプシューという音とともに、棺の蓋が開いた。そこには、1ベルトほどもある茶色の物体が横たわっていた。パンサーが目を丸くしていると、茶色の物体が目を開けて、ぬっと身を起こし、ゆっくりとパンサーを見た。
「私の眠りを妨げるのは誰だい? 私は神ぞ。ディーオーエムオーぞ」
 この茶色の物体は、何故か茨城弁で話し始めていた。

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棺から起き上がった生物が何故か茨城弁で話すという、緊張状態から緩和状態へ移行するパターンです。

これはクスリと笑えるレベルの内容ですが、命の危機に陥るような状況から生還した後、思わず笑いがでてしまうような心理も同様のものです。

例えば男性で言うと、内視鏡手術とかをやった人はわかるかもしれません。

内視鏡手術は少しばかりの麻酔を施した状態で、亀頭から内視鏡というカメラを膀胱内に挿し込む手術です。それが尋常じゃなく痛くて、陣痛のときみたいにスーハースーハーと小刻みに呼吸せざるを得ない状況になります。ただ、その内視鏡が抜かれたときの開放感は凄くて、私なんか経験した時は思わず笑ってしまいました。

・緩和から緊張バージョン

「これは対数螺旋と呼ばれる螺旋だい。美しいだろう? 私に触れたものは、全て美しくなる運命にあるのだい」
 ディーオーエムオーは胸を張った。パンサーもその手錠を拾い、まじまじと見た。
「不思議な図形だな。見ていても飽きない」
「オウムガイの殻や、台風、銀河の渦巻きにも見られる形ぞ。例えば中心を一定の角度で捉えながら移動すると、自然と対数螺旋を描くことになるんだい。隼が獲物を捉える時の動きを想像してみるといいだろう。私が実践してやってもいいぞ」
 ディーオーエムオーは、パンサーを中心に一定の角度で捉えながら周囲を滑って接近してきた。螺旋の中心では凄い早さになり、パンサーにぶつかる寸前で止まる。
「わかった、わかった。すげえ威圧感を感じるから止めてくれ」

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ほのぼのと対数螺旋について語ったあと、螺旋にそって接近してくるディーオーエムオーが中心では凄い早さになりぶつかる寸前で止まる。ちょっと想像するとなかなか緊張感のあるシーンですが、なんとなく笑けます。

これに限らず、人の習性として、緊張状態に陥った際には脊髄反射的に笑ってしまうという仕組みがあるようです。

例えばにらめっこってありますよね。あれば素の顔という普段あまり見ることのない顔で睨み合った時、心理的な緊張が発生して思わず笑ってしまうという現象なんです。

ただ、緩和から緊張を小説執筆で取り入れる場合は、緊張はするけれど登場人物は安全であることが大事なポイントです。いきなり胸にナイフを突きつけられる……という展開では緊張しても笑いは生じませんからね。

笑いを小説で活かす

ここまで見てきた笑いの3つの要素を小説に活かす方法をまとめます。

「優越の理論」
→キャラクターの失敗を描き、キャラクターが無様に振る舞う様を描く(失敗を隠そうとしたり、取り繕ったり、強がったり)

「不一致の理論」
→読者の予想を裏切り、その裏切りに納得感のある理由を持ち出す。
 これは面白いにもつながる話かもしれませんが、つまりこういうことです。面白いは、読者に何かを予想させ、それを裏切るという2段階のステップでした。

 笑いの不一致理論でも同様の手段をとってもいいですが、笑いの場合は予想させるフェーズをかっ飛ばしてしまって、いきなり結論から語ると面白いかもしれません。そして、最終的にこのキャラクターならこういう言動するよね?と納得させれば勝ちですね。そのためにはこのキャラクターはこういうキャラだと読者に思わせる、信頼関係が重要となってきます(お笑い芸人が同じネタを何度もやっている内に次第に笑えるようになるのも同じ心理ですね)。

「放出の理論」
→緊張と緩和を上手く使うことが大事ですね。シリアスなシーンでふざけてみたり。ふざけたシーンから急に緊張感のある展開に持っていってみたり(ただし緊張はあるけど安全であることが大事です)。物語でも使いやすい手法だと思います。

さて、今回のエントリーでは物語の書き方の中でも難易度の高い笑いについて紹介しました。執筆の際に参考にしていただければ幸いです。

今回よく紹介した自作作品はこちら。笑いと数学をテーマにして書いています。

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