チェンソーマンの爆笑シーンを振り返る | 笑いの三大理論

2023年1月10日

 アニメのチェンソーマンを見て興味を持ち、マンガのチェンソーマンを一気見しました。面白すぎます。藤本タツキ先生が称賛される意味がわかりました。「人が恐怖を感じる事物や現象が悪魔として登場する、恐怖されなくなると弱くなる」という設定も納得感がありますし、主要キャラクターが容赦なく死んでいく様は「意外性」の塊でした。キャラクターは血みどろで闘い、グロいシーンもかなりあるのに、読後感はさっぱりしている点も不思議でした。

 マキマさんがデンジに対してしたことについては、『人間は、最初から持っていないことではなく、いちど得ていたもの(あるいは、もうじき得られるはずだったもの)が自分の手元から奪われることにこそ、激しい痛みや苦しみを感じる。絶対的欠乏ではなく、相対的剥奪にこそ深い絶望を覚える』ってことなんでしょうね。

 人間心理を巧みに利用した展開で、私もデンジとともに絶望しました。

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 今回のエントリーでは、そんなチェンソーマンから、あえて「笑い」について考えてみます。チェンソーマンが終始凄惨でグロいストーリーなのにさっぱり読めるのは、笑いによる効果が大きいと思うからです。それではさっそく、私の爆笑した2つのシーンを紹介します。

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49話

 レゼ&台風の悪魔を倒すため、デンジ&ビーム&天使君はかつてのチェンソーの悪魔の戦い方を参考にしようとします。ビームの語る「チェーンを飛ばして引っ掛けて建物から建物へ移動する」というヒントから、読者の誰もがスパイダーマンのような戦い方を想像するでしょう。

 しかしデンジが導き出したのは、「デンジがビームに乗りビームが必死で走る」というものでした。予測を完全に覆されて、このシーン爆笑しました。そりゃさすがのビームも「チギャウ…チギャウ…」と涙目で抗議しますね。笑

 

85話

 物語のクライマックスで、地獄のヒーローとなったチェンソーマンガ登場。助けを求めたものは全員殺されます。そのチェンソーマンが何故かふらりとファミリーバーガーというハンバーガーショップに訪れて無関係な人間を次々に殺していきます。チェンソーマンがヴァンヴァーヴァと叫ぶのを見て、ハンバーガーを注文していると察するコベニは、ハンバーガーセットを運ぶがコケる。

 それによって店員の一人が殺され、作品的にも読者的にも緊張感が高まり、次は絶対に失敗できないと感じる場面。

 そこでまたしてもハンバーガーをコベニが運ぶことになり、「コケないで」「次は絶対コケないで」と店員に言われるが、コベニはもう一度コケる。もう耐えられませんでした。笑

 チェンソーマンで一番笑いました。緊張と緩和のギャップをうまく使いこなしていて、藤本タツキ先生天才だと感じた瞬間でした。

 

チェンソーマンの笑いは「笑いの三大理論」に忠実

 チェンソーマンの笑えるポイントとして49話、85話の笑えるポイントを紹介しました。

 実は上記の笑いは「笑いの三大理論」である《優越の理論、ズレの理論、放出の理論》に忠実です。笑いの三大理論とはざっくりいうと以下のとおりです。

  • 優越の理論:笑いは他人に対する優越感の表現だとする理論
  • 不一致の理論(ズレの理論):無意識的に「これはこういうものだ」と予測したものが外れたときのズレ(不一致)が笑いの元であると考えるのがが「不一致の理論(ズレの理論)」
  • 放出の理論:緊張が高まり不要となった時に、そのたまった「心的エネルギー」が笑いで放出されるという理論

※これらは以下のエントリーでも紹介しています。

 チェンソーマンの例でいうと、49話は不一致の理論(ズレの理論)を活用したものです。スパイダーマンのような戦い方を予測させておいて、それを覆すという手段ですね。この予想を覆すときのポイントとして、覆された方のアイデアも、あるっちゃあるよねと思わせることが大事です。49話ではビームを馬のようにして駆けるというのが、由緒正しい騎馬兵の戦い方であり、一応筋が通っていて荒唐無稽(でたらめ)でないのが良かったです。

 一方、85話は優越の理論放出の理論のあわせ技です。コベニがなにもないところでコケるシーンを見て、「私はそんなことは絶対しない」と笑うのは優越の理論でいうところの笑いです。殺されるかもしれないという緊張感のなかでも、また転んでしまうというのは緊張が緩和した瞬間に笑いが生まれるという放出の理論の笑いです。このとき緊張は強ければ強いほどよいので、読者にこのキャラクターは殺されるかも……と感じさせて、その上でもドジをやらかすのが最高に笑えます。その点、チェンソーマンは完璧でしたね。

 チェンソーマンの笑いが「笑いの三大理論」で説明できることを紹介しました。

 作品に笑いを加えるのは難しそうに思えますが、このように笑いの理論を学べば応用もきくのではないでしょうか。

 

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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