創造的人生の持ち時間は10年だ【ジブリ映画「風立ちぬ」の名言より】
ジブリ映画「風立ちぬ」で語られる「創造的人生の持ち時間は10年だ」という言葉。創造的人生とは天才の状態で過ごす人生のことです。多くの人たちに認められる世界で、自分を天才だと感じられる人生を過ごすための方法を書きます。
「創造的人生の持ち時間は10年だ」
「創造的人生の持ち時間は10年だ。設計家も芸術家も同じだ。君の10年を力を尽くして生きなさい」
「風立ちぬ」で語られるこの台詞を初めて聞いたのは、2013年7月でした。それからおよそ8年後の2021年。金曜ロードショー「風立ちぬ」で再びこの言葉を聞いて、2013年とは違うことを感じたので、シェアします。
創造的人生とは何か?
私は創造的人生とは、自分を天才だと感じられる人生のことだと思う。
そして人が自分を天才だと感じられるのは、自分の発想が「世の中の大多数を占める凡人に理解された」ときです。
なぜなら天才は、凡人に理解してほしいと常に考えているからです。
宮崎駿監督はジブリが発行するフリーペーパー『熱風』の2014年7月号で、創造的人生について下記の通り語っています。
僕は「君の持ち時間は10年だ」みたいな話を、つい「風立ちぬ」の中で言っちゃったんだけど、自分自身の持ち時間というのは、実は40代なんですね。30代の終わりごろから40代の終わりごろまでの10年です。
ぼくは結果的に、「トトロ」っていう作品が、峰になっちゃってるんですよ。あれがピークだったんです。
美術的なピーク。それは自然というか日本の風土をね、関東地方ですけども、それを愛情持って描こうとしたんですよ。どういう木が生えてるかとか、どういう風景があるかっていうのを、理想化して描こうっていうことを初めてやって、それが初めてうまくいったんです。
宮崎駿監督の30代の終わりごろから40代の終わりごろといえば、「ルパン三世 カリオストロの城」から「未来少年コナン」、そしてジブリ映画「魔女の宅急便」までを作成していた頃です。今を生きる私たちからしても「ルパン三世 カリオストロの城」以降の宮崎駿監督作品は何度でも見たくなるくらい面白いですよね。
ですが、宮崎駿監督のいう通り、宮崎駿監督作品が絶大な評価を得るようになったのは「となりのトトロ」以降だと考えます。実際、ジブリ映画の興行収入を時系列順に見ると、下記のようになっています。基本的に映画やゲームというのは、前作の人気が次の作品の売上に直結します(ファイナルファンタジーも、販売当時の売上だけで言うと7ではなく8が国内最高となります)。
そのため、となりのトトロで世の中に受け入れられたことが、「魔女の宅急便」以降の興行収入につながったと考えられます。
- 1984年『風の谷のナウシカ』興行収入:14.8億円(配給収入:7.6億円)
- 1986年『天空の城ラピュタ』11.6億円(配給収入:5.8億円)
- 1988年『となりのトトロ/火垂るの墓』11.7億円(配給収入:5.9億円)
- 1989年『魔女の宅急便』興行収入:36.5億円(配給収入:21.5億円)
つまり「世の中の大多数を占める凡人に理解された」のが、「となりのトトロ」だったということ。
創造的人生が天才をつくりだす
宮崎駿監督が、一番売れていた「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」をつくっていた頃ではなく、「ルパン三世 カリオストロの城」から「未来少年コナン」、そしてジブリ映画「魔女の宅急便」までを作成していた頃を創造的人生だと言ったのは、なぜでしょうか。
ある記事を紹介します。この記事の中で天才とは「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」だと定義されています。
「幸せになるために、むしろ才能は必要ない」漫画家・かっぴーが語る“天才の正体”|新R25 – シゴトも人生も、もっと楽しもう。 天才になれなかった全ての人へ。
私は、創造的人生とは、自分を天才だと感じられる人生のことだと書きました。そして自分を天才だと感じられるためには、「世の中の大多数を占める凡人に理解された」状態が必要だと書きました。そして「世の中の大多数を占める凡人に理解された」状態とはつまり、「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」のことです。
全てはつながっています。10年間で「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」にたどり着けば、その人は天才になることができるのです。
つまり宮崎駿監督は、「となりのトトロ」ではじめて「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」になったのではないでしょうか。そして、その実績によって宮崎駿監督は天才となり、過去作品が掘り下げて評価されるようになりました。作品を出せば常に大ヒットで、日本が誇るアニメーション監督となりました。
宮崎駿監督にとっては、「となりのトトロ」が創造的人生の終わりだったかもしれません。宮崎駿監督ならば「魔女の宅急便」以降は「となりのトトロ」の貯金で食っていたと言い放つでしょうか。
「天才の状態」を目指す
ここまで宮崎駿監督の話を書きました。ここからは私たち小説書きの現状に落として話を書いてみます。
つまり、宮崎駿監督までの実績は作れなくとも、「天才の状態」を目指すことはできるということです。
天才の状態とは「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」のこと。つまり私たちの書いた文章が、読者に100%届き、わかってもらい、感動してもらうことができること。
もちろん小説家になろうなどのWeb投稿サイトで多くの人に高評価され、ランキング上位に上り詰めるほど「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」になれば、その人は名実ともに天才です。
ですが実際は、1人にでも2人にでもわかってもらうことができれば、自分は「天才の状態」に入った……「創造的人生の入り口に立った」と言っても良いのではないでしょうか。
創造的人生で羽ばたくために
「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」を作り出し、創造的人生の入り口に立った後は、天才として翼を大きく羽ばたかせる努力をしましょう。ここでいう努力とは、世の中の常識やニーズ、生活のステージ、起きている出来事を継続してキャッチすることです。
というのも、時代によって求められる才能は違います。
やすしきよしの漫才で、私たちはもう笑えませんよね(これはやすしきよしが面白くないというわけではなく、過去のお笑いのネタが現代の人々にイメージしづらい事例をあつかっていたり、コンプライアンスや人権的な意識の変化で、常識として笑えなくなったに過ぎません)。東京五輪開会式に楽曲制作担当の一人だったミュージシャン小山田圭吾氏が、 数年前であれば問題にならなかったような学生時代のいじめ告白問題で辞任するケースが有りましたね。
新型コロナウイルスが修学旅行やお祭り、飲み会といった行事を失わせつつありますね。
世の中に必要とされる能力は、その時に応じて流動的に変化していくのです。私などは10代20代の若者が、みんな天才に見えてしまうのですが、これは10代20代の若者が社会の中に適用しようと努力し続けているからだと感じます。自分を社会に当てはめようとすれば、どこかで社会が自分に当てはまるタイミング=「自分の個性や才能が100%受け入れられてる状態」が生まれるのでしょう。
そのとき、自分はいま時流に愛されたと自覚し、天才という「状態」を維持し続けることが、創造的人生を豊かにする鍵となります。
創造的人生の持ち時間10年を描いた物語がある
実はこの、創造的人生の持ち時間は10年であるという命題を描いた物語があります。
それは私の作品「境界を超えろ!」です。主人公アインが17歳の10月にオースティアの国家システムを変更し国民選挙でヴォルター・K・グインに敗北してから、26歳でシンクトンクの壁を打ち壊しX-tunedとともに『Tylant』のツアーで全世界を回るまでの10年間。
これこそが主人公アインの創造的人生でした。そして、その後の人生は、創造的人生の貯金で食っていたに過ぎないということまで、描いています。
多くの人たちに認められる世界で、自分を天才だと感じられる人生を過ごす
風立ちぬで語られていた「創造的人生の持ち時間は10年だ。設計家も芸術家も同じだ。君の10年を力を尽くして生きなさい」とは、時代とマッチした状態で、その若さや能力を発揮できる時間を表現する期間(天才の状態で過ごす人生のこと)として受け止めると、とても納得がいきます。
これは芸術家に限らず、エンジニアでもそうです。
私もエンジニアとして日々ITを勉強していますが、10年前に学んだ知識がレガシーになる気配をひしひしと感じています。日進月歩の世の中で、能力を発揮できるタイミングは限られているのです。ここでレガシーにしがみつくと、そこでエンジニアとしてのキャリアは終わってしまいます。かといって、新しい技術を学んでも、10代20代の柔軟な吸収力のある世代が本気を出すと、私など絶対に勝てません。私のエンジニアとしての創造的人生は終わったのです。
ここからは、10年間の貯金をつかって、いかに「天才の状態」を維持し続けるかです。10年間の貯金を活かして学べる、いまの時勢でお客様に求められるスキルをどうやって身につけるかということです。これは創造的人生が10年間で終わると知っているからこそ、対策できることです。
もちろん、私だってここからの10年間で新たな創造的人生が始まる可能性もあります。創造的人生を遂げられるように努力します。とはいえ、若く活力のある皆さんのほうが、ずっとずっと可能性があります。
日々を惰性で過ごすのではなく、世の中の常識やニーズ、生活のステージ、起きている出来事を継続してキャッチし、多くの人たちに認められる世界で、自分を天才だと感じられる人生として過ごしたいですね。
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