創作ネタ | 小説家は現実を見るべき【ライトノベルやアニメを見て真似て書くだけじゃなく、実物をよく観察することが小説を書く上で大事だよ】

2021年5月15日

 つい先日、Togetterで魅力的なまとめを見つけたのでシェアします。

絵で食ってきたいと言うと必ず「現実見たほうがいいよ」って言われるけどあれ本当はこういう意味だったんですよ

 ああ、確かに言われる。
 私は小説家になるって言うと、周囲の人から必ず「現実を見た方が良いよ」って言われる。

 実はあれって、「ライトノベルやアニメを見て真似て書くだけじゃなく、実物をよく観察することが小説を書く上で大事だよ」って意味だったんですね。

 そして実際、今の世の中って、物凄く面白くて、小説を書く上で大事なネタに溢れているということをご紹介します。

 

 

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どうやって分断が生み出されるかわかる

 長い物語を一度でも書いたことがある方は、「分断」の重要性を知っていますね。男女の「分断」、親子の「分断」、敵味方の「分断」……これが何故起きて、どうやってそれを解決するのか。ぶっちゃけてしまえば、それが物語なわけです。

 いかにして分断をつくり、説得力をもたせるかが、設定の技術になるんですね。

 では、分断の教科書ってなんでしょうか? 私はそれこそ現実に山程転がっていると思います。特にコロナという異常事態では、分断がより鮮明にくっきりとします。

 だから小説家は(今こそ)現実を見るべきと言いたいです。現実に生み出されている分断といえば
 例えば東京五輪を実施したい人たちと、中止させたい人たち。
 例えば経済を優先したい人たちと、医療崩壊を防ぎたいという人たち。
 例えばテレワークで仕事ができる人たちと、今まで通り仕事をしなくちゃならない人たち。
 例えば大学キャンパスでキャンパスライフを過ごせる学生と、リモート授業の学生。
 例えば若者と、高齢者。
 例えばワクチンは危険だと訴える人たちと、ワクチン摂取が必要だと考える人達。
 etc

 無数にあります。こういった分断がなぜ発生したのかを考えておくことは、説得力のある分断を書く上で非常に役立ちます。

 例えば東京五輪を例に上げてみましょう。当事者たちには、これ以外にも無限に想いがあるでしょうけれど、ちまたで実しやかに囁かれているのは下記のような想いでしょう。

 東京五輪を実施したい人たちは「五輪を開催しないと賠償金を払わされる」「五輪を中止したときの保険をかけていない」「IOCの機嫌を損ねたくない」「IOCの決定は絶対だ」「五輪を中止するとこれまで投資した金額が無駄になる」「五輪を開催することで国民を勇気づけられる」「五輪反対の人達はTwitterで声の大きい人だけと考えている」「開催してしまえば、反対していた人もお祭り騒ぎになるのはこれまでの傾向からわかっている」「東京五輪を目指してきたアスリートたちに申し訳が立たない」etc

 東京五輪を中止したい人たちは「すでに医療崩壊が発生している中で感染爆発を起こすようなイベントを実施してほしくない」「海外からの変異株が入ってくることを防ぎたい」「実施したい人たちは自分たちの利益しか考えていないと感じる」「小さい規模のイベントを中止している中で、最大規模のイベントを予定通り開催する道理がわからない」「電通が嫌い(だから電通の推しイベントを中止させたい)」「政府が嫌い(だから政府の推しイベントを中止させたい)」「五輪中止の声が大多数になってきたから」etc

 これらは噂に過ぎませんし、憶測に過ぎません。本音はみんなあまり話さないでしょうからね。けれども、噂というのは「多くの人が共感できるから」噂になるわけです。つまり、噂は多くの人が理解できる納得感と、多くの人を惹きつける魅力があるわけです。

 小説を書く上では、読者の共感を得るためのわかりやすさって、大事です。噂からは、多くの人が理解できる納得感と、多くの人を惹きつける魅力を学べます。
 小説家は(今こそ)現実を見て、どうやって分断が生み出されるか、その心理を読み解いて、自分の作品に活かしましょう。

 

 

人が何を信じようとするのかがわかる

 コロナという非常事態では、様々な信仰が生み出されます。
 例えばマスク信仰です。

 マスクをつけていれば感染防止を防げる……という事実から「マスクをつけていれば安心」という信仰が生まれ、マスクをつけていない人は非常識……果てには、マスクをつけていない人は非国民とまで考える人も出てきました。

 

 ここで注目するのは、マスクにも不織布(ふしょくふ)・布・ウレタン・シールドなどがありますが、どのマスクをつけていても「マスク信仰」の中では許される点です。
 実際には効果が全然違うにも関わらず、信仰のもとでは、マスクというものをつけていれば問題がないのです。

 

 大本に感染に対する恐怖があり、事実(感染防止の効果)があり、マスクという言葉が独り歩きし、「マスク」をつける人々を同じ信仰の仲間と捉える。

 このような事例は、人が何を信じようとするのかを教えてくれます。

 

 この話は、ファンタジー世界で宗教を書くのに使えますね。
 小説家は(今こそ)現実を見て、人がどうやって何を信じていくのか、その心理を読み解いて、自分の作品に活かしましょう。

 

個人と企業と国の関係がわかる

 分断の話と関わっていますが、コロナという厄災の中での、個人と企業と国の関係も勉強になります。

 例えば感染爆発ひとつで、インバウンド需要が消失した2020年。Go ToトラベルとGo Toイートが実施されたのは記憶に新しいですね。

 個人からすると、当初、安く旅行と食事に行けるのは嬉しかったです。ですが感染が拡大してからもGo Toが続いてくると、旅行業界や飲食業界と国に癒着があるんじゃないかと疑い始めます。そして実際に、旅行業界や飲食業界と関係のある政治家を見つけることができます。ここから学べるのは、国と企業の助け合いはあること。
 例えば、政治献金などを否定する新興企業がどんなに国民の人気を集めていたとしても、緊急事態に国が守るのは古い企業ということです。

 また、個人の飲食店に対しての保証が手厚かったのと対象的に、大企業(百貨店や映画館)に対する保証は小さなものでした。これは、大企業は結局国の言うことを聞かざるを得ない……という諸事情を察することができるのでは、ないでしょうか。

 さらにいえば、健康を守ろうと配慮する企業が真っ先に潰れるような事実も見えました。個人と企業と国……。国がすべての企業を守ってくれるわけでもない。企業が人を守ると企業が潰れる。人は自分で自分を守らなきゃいけないのか?そんなことができるのか?

 この話は、ファンタジー世界で、個人と貴族と王族の関係にも使えますね。
 小説家は(今こそ)現実を見て、個人と企業と国の関係を想像して、自分の作品に活かしましょう。

まとめ 現実は面白い

 コロナという厄災の中で、日々を楽しく暮らしている人を尊敬します。
 苦しい時だからこそ、この現実に楽しみと可笑しみを見出しながら、強く暮らしていきたいと思います。小説家は今こそ現実を見て、現実から小説の種を見つけてみませんか。

 

 私は著作の中で、人の心を打つ言葉には、経験が伴っていると書きました。

「人の心を打つ言葉には、経験が伴っています。だから戦争を計画しました。尽きせぬ恨みはストライトとアルテリアの対立を艶かしく描き、千万無量の死体は迫真の生を描くでしょう。それはアルテリア文学の発展に寄与することに他なりません」

境界を超えろ!2: 奇跡の軌跡

 コロナという厄災に、つい目を背けたくなります。
 ですが人の心を打つ言葉には経験が伴う……だとすれば今こそ、こう感じませんか。

 

 小説家は(今こそ)現実を見るべき。

 私は東日本大震災の面影を「君の名は。」や「シン・ゴジラ」に見ることができました。今後生まれるコンテンツには、コロナの面影が出てくるかもしれませんね。大変な世の中ではありますが、今しかない現実を見るきっかけになれば幸いです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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