創作ネタ | NHK大河ドラマ『麒麟がくる』が面白い三つの理由
2020年から開始されたNHK大河ドラマ『麒麟がくる』が2/7に最終回を迎えました。1年間、日曜日夜の本放送と、土曜日昼の再放送を、継続して視聴した大河ドラマは始めてです。
人気の戦国時代を舞台に、明智光秀を主役に据えたドラマ。
大河ドラマのど真ん中をいく、重厚なオープニング。
出演者が豪華で実力者揃い。
など、魅力は書きつくすことができません。SNSでの展開も見事で、製作者の解説、視聴者の解釈と感想と説明が混ざりあって、『麒麟がくる』の世界を何倍も楽しむことができました。
SNSで解説をしなくてはいけないドラマは、二流などという人がいます。ですが、SNS全盛のこの時代に双方向のコミュニケーションをとらず、一方的な放送をする番組のほうが二流です。「書き手が書いてない部分を、ファンが埋めていく」ことが、今の時代の創作です。
キャラ創作の本質は「超意図」にある
※これから視聴される方は、是非ハッシュタグ#麒麟がくるを、あわせて見てくださいね。
さて、そんな『麒麟がくる』ですが、このドラマを見続けた理由を三点抽出し、まとめました。
全ての創作者の参考になる三点です。ぜひ読んでください。
パラダイムシフト
一点目は明智光秀という、世間的には「反逆者」「裏切り者」のイメージが強い人物を主役に添え、義の人として描いたことです。
長谷川博己さんの好演もあり、この大河ドラマの明智光秀は、「正直者で義に厚い人、応援したい人、いつまでもいて欲しい人」に変わりました。
裏切り者のハゲから、とんでもないパラダイムシフトではないですか?
パラダイムシフトとは、その時代において当然のことと考えられていた認識や思想が劇的に変化すること、です。全ての創作者が覚えておくことは、パラダイムシフトを起こした作品は100%面白いということです。なぜなら、予想を外せるから。
つまり、世間の当たり前をキャッチし、それを覆す作品をつくる。これが面白い作品をつくる一番の方法なのですね。
カラフルで華やかな衣装
二点目は、カラフルで華やかな衣装により、目で楽しませてくれたことです。
時代劇といえば黒っぽい衣装の印象がありましたが、『麒麟がくる』の衣装は違います。(最近の研究結果では、戦国時代はカラフルな衣装が当たり前だったそうです)人物ごとにカラーをもたせ、全ての衣装に意味があります。
※例えば秀吉の衣装は、昇り龍をイメージしているなど。
それから、単純に画面がカラフルだと、見ていて楽しいです。落ち着いた色の服をきたキャラクターがどんなに明るく振る舞っていても、オレンジカラーの松永久秀が画面にいる明るさには勝てない。見た目の印象は大事だということです。
全ての創作者が覚えておくことは、キャラクターを地味にしないこと。そのためキャラクターにパーソナルカラーを持たせること。もたせたパーソナルカラーの根拠を明らかにすること。
例えば私の作品でいうと、50人以上登場人物がいても、髪の毛の色が水色なのは主人公のアイン・スタンスラインだけです。
なぜ水色なのかは、下記の記事を見て、私の作品を読んでいただければわかるでしょう。
惹かれる色の心理。「水色」は、解放感?現状が窮屈?
■本はこちらから
第1話から見たいものを見せる
三点目は、第1話の展開の素晴らしさです。
『麒麟がくる』第1話は野盗の襲撃から始まり、主演俳優が登場し、鉄砲あり切合いありのアクションが展開されます。大河ドラマでは、子役時代から始まって、主演俳優が数話出てこないというケースが多々あります。ですが、今の時代。みんなが待っているのは主演俳優というキャラクターの活躍ではないでしょうか。
『麒麟がくる』は、主役 明智光秀の幼少期の記録が残っていないことを逆手に取り、青年期からの物語を描きました。
幼少期は、物語でいうと起承転結の起です。つまり舞台づくりの期間となります。
しかし、今の時代、じっくりと舞台づくりをしていては遅いです。起承転結をじっくり描きたくても、あえて起をばっさり捨てねばなりません(小説家になろうの追放系で、追放される前のパーティの話を長々と書きますか?)。
『麒麟がくる』は、明智光秀が世間的に認知された人物だというアドバンテージを最大限活かし、幼少期を切り捨てた。この判断は英断だったと思います。
そして『麒麟がくる世を目指す』という、起承転結の結にむかうための方向性を第1話で指し示します。結に向かう道筋を提示するというのは、物語づくりにとって大事で、それを『麒麟がくる世を目指す』という一言に集約させるところが、脚本家 池端俊策氏の技術だと感じました。
まとめ
『麒麟がくる』を追いかけた一年間は本当に楽しい一年でした。
「パラダイムシフト」「カラフルで華やかな衣装」「第1話から見たいものを見せる」という三点の学びを抽出しました。私も、より力を磨いていきたいと感じました。物語づくりの参考になれば幸いです。
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