《映画感想》心が叫びたがってるんだ 制約と解放の物語。題材選びの難しさも知る。
幼い頃、何気なく発した言葉によって、家族がバラバラになってしまった少女・成瀬順。
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そして突然現れた“玉子の妖精”に、二度と人を傷つけないようお喋りを封印され、言葉を発するとお腹が痛くなるという呪いをかけられる。それ以来トラウマを抱え、心も閉ざし、唯一のコミュニケーション手段は、携帯メールのみとなってしまった。
高校2年生になった順はある日、担任から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。一緒に任命されたのは、全く接点のない3人のクラスメイト。本音を言わない、やる気のない少年・坂上拓実、甲子園を期待されながらヒジの故障で挫折した元エース・田崎大樹、恋に悩むチアリーダー部の優等生・仁藤菜月。彼らもそれぞれ心に傷を持っていた。
空の青さを知る人よが、凄い名作だったので、同じ監督の前作品を見てみました。
映画を分析しながら見た結果を書いています。
ネタバレあり?かつ、分析的でポジティブでない感想も含みます。そういったものに抵抗のない方はぜひ読んでみてください。
小説家目線で書いているので、物語づくりの参考にはなるかと思います。
制約と解放の物語
声が出ないという制約を持った少女成瀬順の解放の物語でした。
自分の過去の罪により制約が与えられ、その制約の解放者と出会い、制約が開放されるまでの苦難を描きます。その物語の間で他の登場人物も主人公に感化され、少しずつ変わっていく、青春ストーリーの教科書みたいな作品でした。
制約として声が出ないという制約は、苦しさが用意に想像できてギミックとして素晴らしいですね。身近に感じられる制約が思いつけばそれだけで物語がつくれそうです。
寿命が短くなる、人生のレールに乗せられる、結婚、リーダー、大人でなければならない、上流でないといけない、下流でないといけない、世界が広いことをしらない、肌の色が違うなど。
考えてみると制約にできそうなもの、いっぱいありますね。制約をつくるときは自分の過去の罪も考慮したほうが良いですね。心が叫びたがっているんだの場合は山の上の城で見てしまったものが成瀬順の制約でした。
仁藤菜月は坂上拓実を助けられなかった罪が制約になっています。坂上拓実は仁藤菜月に気持ちを言葉にできなかったことが制約で、田崎大樹は期待を果たせなかったことが制約になっているのかな。全員の制約と解放の物語だったように思います。
ミュージカルという題材の恥ずかしさ
物語自体はわかりやすくて登場人物も可愛くて好きです。けれどもミュージカルという題材がどうしても一部の視聴者に恥ずかしさを感じさせるため、メジャーにはなりづらいと感じました。
好きなアーティストやアイドルのライブに行ったとしても、恥ずかしいとは微塵も思わないのですが、どうしてミュージカルって恥ずかしいのでしょう。
自分なりに考えた結論としては、たぶん「ミュージカルに慣れていない」からでしょうかね。忘年会で芸をやるのも、最初は慣れていないから恥ずかしいけど、2回3回と行うことで慣れてきましたから。
そしてミュージカルに慣れていないのは一般の人も同じなわけで。
(昔大学院で、文化についてのアンケート調査をしていたことがあります。ミュージカルやオペラを楽しんでいたのは圧倒的に高所得の家庭が多かったです。いろいろな意味で一般人になじみの薄い趣味かと)
なのでミュージカルやオペラを題材にしてしまうと一般人はどうしても受け入れがたいのではないかと感じます。もちろんロックバンドやポップミュージックは別ですよ。
ターゲットである視聴者に恥ずかしいと思われたら、作品は失敗ではないでしょうか。「最初は恥ずかしかったけど、最後にはやりたくなってた」なんてのは作者冥利に尽きるでしょうけど、2時間視聴者を拘束できる映画なら出来てもWeb小説なんかでは不可能かと思います。そういう意味で題材選びも重要だと感じます。
これは作品作りの際、気にしたほうが良いかもしれませんね。
主人公に対するクラスメイトの接し方
クラスメイトたちの態度が映画に爽やかな風を吹き込んでいたと思いました。最初は冷めていながらも、いつしかミュージカルを自分ごととして楽しんでいきます。
ラストの展開で成瀬順はクラスメイトに迷惑をかけるが、クラスメイトは成瀬は頑張っていたからと責めません。むしろ成瀬が戻ってくることを祈り、劇の成功を信じます。
このさっぱりした感じが最高によかったですね。誰かを恨んだりせず、自分が楽しもうとする前向きさ。これが青春ドラマには必要だなと感じました。
ミュージカルという題材に抵抗感がなければオススメの映画です。
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