《映画感想》イエスタデイ イギリス版異世界転移

2020年9月22日

 ビートルズのいな世界で、自分だけがビートルズを知っている……そんなイギリス版異世界転移な設定を持つ映画『イエスタデイ』を見ました。

 これは2019年に発表された作品で、私がよく映画館に通っていた頃でもあり、当時から気になっていました。

 いわゆる日本のWeb小説的な設定を、イギリス人が映画にしたらどうなるのか?
 それが興味深かったためです。このエントリーでは、鑑賞しながら見たあらすじをご紹介し、そのあとで感想を書いていきます。

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鑑賞しながら書いたあらすじ

 スーパーでバイトするジャックは、店長からひげ、遅刻、服装、仕事への態度を否定される。

 客には人気がある……フルタイムではたらくか、やめるかの条件を持ちかけられる。

 フェスに呼ばれ、歌っても、人気はなく、客はまばら。

 輝く未来はなく、しょぼい結果しか出せない……そんな現実から始まる。

 開始10分。世界中が12秒間停電し、ジャックは町中でバスにはねられる。

 それによりビートルズのいない世界に転移……した。

 イエスタデイを弾いたら……全員が聞き入り、凄いと称賛される。

 違和感を感じたジャックは、ネットで検索して、ビートルズがいないことに気づいた。

 何ができるかを考えたジャックは、ビートルズのコピー曲でライブをすることを思いつく。

 ここまで開始20分。起承転結の起。

 しかしジャックは、Let it beを弾いても喝采をもらうことが出来ない。

 結局は誰も注目しないと諦めるが……見る人は見ていた。

 CDをつくることになったジャックはテレビに出演するも、ジャックはあくまでも歌う店員としてバカにされて、憂鬱に。それでも歌手のエド・シーランからいい曲だったと褒められて、ツアーの前座として出演することになった。

 このライブで大歓声を受け、ネットに拡散されたジャック(ここで怪訝な顔をする老人も)。

 ソ連の歌を歌ったことで、エドから昔作った曲は歌うなと批判されたジャックは、エド・シーランと即興で作った曲で勝負をする。

 ここでジャックの歌ったのは「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」

 エド・シーランは敗北を認めて去る。エドのマネージャに認められるジャックはロサンゼルスへ。

 ジャックは、彼をずっと支えてきた中学の教師エリーに一緒に来てほしいと伝えるが、エリーはサフォークをでないと言い張る。完全な負け組……だったジャックへ、お金と栄光という毒杯が差し出される。

 ここでジャックはビートルズの曲だけでなく、オリジナル曲もCD化しようとするが、プロデューサーに大嫌いだと却下される。当初は顔を隠して謎のシンガーとして売出し、ブサイクな体を絞り、ダブル・アルバムでリリースした5曲が、音楽の概念を変え、ポップミュージックのシェークスピアとまで呼ばれる。

 故郷に戻ったジャックは、エリーと再会。自信をつけて変わったジャックに、エリーは惹かれるが、一夜限りの関係にはなれないといって別れる。ジャックはエリーと離れたくないという一心で空港へ。

 幼馴染だったエリーは、ずっとジャックを追いかけていた。自分がジャックを想い続けていた時間が無駄だったと想い、もう届かない人になってしまったという悲しさに蝕まれていた。「もう終わり……金曜11時14分のライムストリートで」と彼女はジャックの背中を押す。ジャックは成功と引き換えに大事な思い出を失くした。

 ジャックは華やかなマーケ戦略会議へ。お手本も盗作もない……と評されるジャック。彼はどこか罪悪感を感じているようにも見えた。

 ここで出てくるのが、ビートルズの傑作ヘイ・ジュード。それでもエドは、ジュードという名前は古いからヘイ・デュード(相棒)に変えようと提案。あわせてエリーに恋人ができる。ジャックはこのときもエリーを想い続けていた。

 地元でファースト・アルバムを発表することにしたジャック。地元でエリーとギャビンの姿を見て、エリーが完全な他人になったことを知る。

 ビートルズを知っている人間から問い詰められる夢を見た。けれど現実では、薬に溺れたひとりのクズが、偉大な革命家ジャックに仕えることを嬉しいといってくれる。

 ヘルプ!から始まる単独ライブ。それによって、妙な二人組みと出会うことになり、……ジャックはようやくビートルズのことを話せた。盗作だと訴えられ逮捕されるのではないかというジャックの不安は打ち砕かれ、逆にありがとうと感謝される。そしてビートルズの居ない世界は退屈だから、上手に使ってほしいと渡されたメモ。

 それはジョン・レノンの居場所だった。ジョンはささやかな幸せを享受し、ジャックに幸せな人生だったと語る。78歳まで生きているジョン・レノンを見て、ジャックはファンタスティックと叫んだ。そしてジョンの「ウソをつかずに生きることが幸せになる秘訣だ」という言葉により、ジャックは吹っ切れる。これが起承転結の転が終わり、結びへ向かうきっかけとなる。

 ウェンブリーで、人類最高のアーティストとして紹介されて舞台に上がるジャック。ALL NEED IS YOUを歌い上げたあと。売れなかったジャックを支えてくれたエリーに対してと前置きして、真実を告げる。ビートルズという天才の歌を代わりに歌ったこと、そしてエリーをずっと愛していたことを告げた。

 ビートルズのカバー曲を全て無料でアップロードし、エリーと逃避行をする。ハリーポッターもない世界だとわかり……それでも普通が一番だといってエリーとの人生を選んだジャック。オブラディオブラダを子どもたちの前で歌う、幸せなシーンとともにエンディングを迎える。

印象的な点

 印象的だったのは2点。

 ジャックが、ビートルズを自分だけが知っているという「突然手に入れた能力」に対してズルだと罪悪感をもっている点と、旅に出て戻ってくる点。

 これらは一本の物語の中で作者の葛藤を描き、きれいに着地させるために必要な仕掛けだと思った。「突然手に入れた能力」はあくまでも一時的な夢でしかなく、その夢のような時間を過ごして成長した主人公がもとの世界に戻り、物語の開始時と違った姿勢で人生を歩む……これは遥か昔から描かれてきた物語の典型だ。

 また、成功するためには失うものがある。ささやかな生活が一番幸せだという、物事は表裏一体というメッセージが含められている点も、「スラムドッグ$ミリオネア」のダニー・ボイル監督的だと感じた。

イギリス版異世界転移。

 それにしてもイギリス版異世界転移。

 全世界に公開する映画で異世界転移を描くなら、こうするのだと教えてくれる作品。世界中に伝わるようにするには、主人公の得る能力が普遍的で世界的に伝わる凄さでなければならない。そこでビートルズの力を借りるべきだとなったのだろう(イギリスならでは。ドイツのジャーナリストであるティムール・ヴェルメシュが、帰ってきたヒトラーを書いた時と同じような着眼点のように思える)。

 結局のところ、観客に伝わりやすい題材ってなんだろうを突き詰めた結果なのだと思う。この姿勢はWeb投稿サイトで作品を書く上でも、大切にするほうがよいことだろう。

 最後に、ハリーポッターが無い世界だと気づくオチも良かった。まさにイギリスだからこそできる作品。最高でした。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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