登場人物の「主張や説教が軽い」問題と対処策

主人公に主張を持たせて、物語のテーマを明確にするのは良い創作テクニックです。
例えばリコリス・リコイルの主人公・錦木千束は「やりたいこと最優先」を主張しています。リコリスという殺人を許可されて犯罪者と戦うことを宿命づけられた、いつ死ぬかわからない少女の中で、最強である錦木千束が「やりたいこと最優先」を主張し、自分の手の届く範囲の日常を守ろうとする姿は、多くの視聴者の心を打ちました。

しかし一方で、錦木千束をマネして「やりたいこと最優先」の主人公キャラをつくってWeb投稿サイトにアップしたら、「主張が軽い」と言われたり、「自分勝手」と思われる場合があります。
本エントリーでは、登場人物の「主張や説教が軽い」問題について考えます。

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「主張や説教が軽い」理由は内容ではなく背景

「主張や説教が軽い」理由は内容ではなく背景です。リコリス・リコイルの錦木千束でも、第1話で「やりたいこと最優先」と主張し始めた当初は、自分勝手という感想もありました。

しかし第2話でリコリスの仕事が死と隣り合わせであることを示したり、最強の実力者であることを示したり、第3話で千束が相棒である井ノ上たきなのことをとても大事にしていることを描いたり、5話で人工心臓であることが明かされたりしたことで、錦木千束の主張に重みが増しました。

単に自分勝手なキャラクターではなく、友達を大事にしたうえで、誰も傷つけずに「やりたいこと最優先」をいくばくか望んでいるのだとわかるからです。錦木千束の素敵さは以下のエントリーでも書いています。

 

つまり、主張には背景が必要なのです。
背景なしに「やりたいこと最優先」と言っても、単に自己中心的な人でしかなく、それで「錦木千束を真似ただけだから許してよ」などといった日にはグーで殴るファンも出てくるでしょう。
このことは風倉さんもおっしゃっていましたね。過去に見合っていない説教や主張をすんなという話です。

ネット小説でよくあるんだけど「主張や説教が軽い」みたいなの。じゃあ「喋る内容しっかりしよう」ってなるかもだけど。違うんですよ。内容じゃない

説得力は「経歴」に出るんですよ。だからチートで苦悩なしのやつがやっても軽いんですよ
弱いのはキャラの経歴とか過去
過去に見合ってない説教すんな

対策は主張や説教に説得力がでるような、経歴や過去を持たせる

風倉さんは対策についても述べられていまして「主張や説教に説得力がでるような、経歴や過去を持たせろ」という話をしています。
私はこの通りだと考えています。それは言葉で一言そえてあっても効果があります(彼は世界最強の魔術師さ、とモブキャラに言わせるなど)。
ただ、物語展開が、主人公の主張に説得力を持たせる経歴の積み重ねになっていると、より良いと考えます。

 

主人公を背景から逆算する

「物語展開が、主人公の主張に説得力を持たせる経歴の積み重ねになっている」とは、物語で描かれる起承転結のエピソードひとつひとつが、クライマックスで主人公の主張する内容の裏付け、根拠となることです。オタクペンギン社長も、逆算でつくるキャラクター論として「ストーリーと醍醐味から逆算してキャラクターを造る」ことを主張されています。

【逆算でつくるキャラクター論】 最近、打ち合わせやBB小説家コミュニティの壁打ちでお話ししている内容を図にまとめました。 あくまで1つの作り方の例です。他にも性癖突破で創ったりとかもありますので、こうしないといけないとかではないです。 誤解のないように軽い解説と補足を連ツイでします。

図のなかの例はわかりやすいので異世界系で書いてますが、基本ジャンル問わず使える考え方じゃないかと思います。 キャラからストーリーを造るやり方もありますし、練っていく中で相互補完していくものでもあるので、順序はどっちから考えてもいいと思います。

また図の例は主人公ですが、ヒロインなどのキャラも同じで『主人公との差』を考えるとわかりやすいと思います。 対比にするのか、表裏一体にするのかなどは作品によりますが、基本的な考え方としては現在のキャラ性が過去に由来しているとかだとよりキャラが活きます。

 

オタクペンギン社長の主張は、物語の面白さは「差」だから、主人公の最終系と真逆の初期状態から、最終系に向けて差を埋めていくやり方がよいのではないかと提言されています。

私は上記に賛成ですが、必ずしも真逆である必要はないと考えています。

 

例えば私の作品「境界を超えろ!」の主人公アイン・スタンスラインは、クライマックスで「誰からも愛されるリーダー」となり、世界を指揮して戦います。

クライマックスを描くために、主人公が世界を背負う根拠が必要です。じゃあまず「誰からも愛されるリーダー」ってどんなキャラクターだ?と主人公アイン・スタンスラインを逆算して作りました。

私はまず人間性の部分を考えました。
「誰からも愛されるリーダー」は聡明であってほしい、生まれつきのエリートではなく困難を克服していく努力家であってほしい、世界のために無死で動く人であってほしい、物腰柔らかであってほしい、モテるが異性関係にクリーンでスキャンダルのターゲットにならないでほしい、けれど暴力に負けないために暴力を使うことも覚えてほしい、表社会から裏社会までつきあいがあり社会に恐れを抱かないでほしい、暴力の脅しに屈しない力強さと胆力を備えていてほしい。

差が面白いからといって、この人間性の真逆から始めてしまうと、そもそも主人公を嫌いになりますよね。

ですので私は、キャラクターの人間性は変わらず、経歴の差で面白さを出す方法を選びました。
また、上記の人間性を示すエピソードももちろん盛り込む必要があります。そのうえで実績が欲しい。

だから私は母親からあんたなど生まなければよかったといわれ、片田舎で裏切り者と罵られた主人公を。国内随一のアカデミー出身で、政治家として政治システムの改革を成し遂げ、世界各国を旅し、世界各国で人々を救いその国のリーダーに認められる……という展開を加えました。

ここまで段取りしておけば、主人公アインが国際連合の組織を立ち上げ、世界を背負って戦うことに、正当性が見えてきます。物語の中の人々が「彼しかいない」と感じるキャラクターになったはずです。

 

みなさんも主人公に何かを主張させるときは、背景(経歴)が、キャラクターの主張に耐えうるものになっているかを考えてみてくださいね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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