天使について詳しく解説!ファンタジー小説の設定に使おう!
神や悪魔がテーマになることの多いファンタジー小説において、天使の存在は欠かすことのできない重要な要素の一つです。天使の階級などを上手く取り入れることで、人間社会の複雑さと、神々の世界の複雑さを、対比に使うことも可能になります。
本記事では、そんな天使に対する定義や、天使の位階について解説します。本記事を読み、ファンタジー小説の世界観設定に活用しましょう!
天使とは?
天使とは、キリスト教・イスラム教・ユダヤ教などに登場する「神の使い」のことを言います。初期のキリスト教の天使は、現在の一般的なイメージと異なり、翼を持たない普通の男性の姿をしていました。しかし、オリエント文化の影響を受け、翼を持つ姿として描かれるようになったのです。
天使の位階には、当初は、天使と大天使くらいしかありませんでした。しかし、中世以降は天使の階級について様々な提案がされています。その中でも、特に広く影響を与えたのが、5世紀ごろの中東の住人である偽ディオニシウス・アレオパギタの「天上位階論」です。そこに書かれた9位階は、9世紀ごろからヨーロッパでも広く普及しています。
天使の位階について
天使の9位階について以下の表にまとめました。
階級の高い順に並べましたので、小説づくりの参考資料としてお使いください。
位階 | 英語表記 | 階級 | 説明 |
熾天使(してんし) | Seraph(セラフ) | 父 | 6つの翼と持つ天使の最上位。「熾」は「火が盛んに燃える」の意。神への愛と情熱で体が燃えていることを表す。 |
智天使(ちてんし) | Cherub(ケルブ) | 父 | 4つの顔と4枚の翼を持ち、翼の下に、人の手のようなものがある。ルネッサンス絵画では、翼を持つ愛らしい赤子の姿で表現されている。 |
座天使(ざてんし) | Throne(スローン) | 父 | 神の戦車を運ぶと言われる。物質の体を持つ天使の最上位とされ、燃え盛る車輪の姿で表現されることが多い。「意志の支配者(Lords of Will)」の異名を持つ。 |
主天使(しゅてんし) | Dominion(ドミニオン) | 父 | 統治・支配を意味する天使。神の威光を知らしめるために、様々な働きを担うとされる。 |
力天使(りきてんし) | Virtue(ヴァーチュー) | 子 | 高潔・美徳を意味する天使。実現象の奇跡を司り、それによって英雄に勇気を授けるとされる。キリストが天に召されるときに、付き添った天使であるとも言われている。 |
能天使(のうてんし) | Power(パワー) | 子 | 悪魔を滅ぼす天使。悪魔と接触する機会が多いので、堕天しやすい。人間よりも4段階高次の、霊的な意識を持ち、天地創造に関わった、全人類を導く霊的存在。 |
権天使(けんてんし、ごんてんし) | Pricipality(プリンシパリティ) | 聖霊 | 国やその指導者層の守護、国家の興亡、悪霊からの守護を司る。 |
大天使(だいてんし) | Archangel(アークエンジェル) | 聖霊 | 2枚の翼を持つ。中世ヨーロッパでは、天使の最上位だったので、ミカエルなど、四大天使は大天使にあたる。また、七大天使も大天使になる。 |
天使(てんし) | Angel(エンジェル) | 聖霊 | 一般の天使。 |
天使の住む世界
天使や神々の住む世界のことを「天界」あるいは「天国」と言います。私たち人間が住む世界である「地上」の、遥か上に存在しているとされる世界のことです。
ちなみに、アブラハムの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)では、天国には七つの階層があると考えられています。
表にすると以下のようになります(第三エノク書とより)。
階層 | 支配者 | 支配者の下にいる天使 |
第1天 | ウィロン | シドリエル |
第2天 | ウクィア | バラクィエル |
第3天 | セハクィム | バラディエル |
第4天 | ゼブル | サハクィエル |
第5天 | マオン | サトクィエル |
第6天 | マコン | ガブリエル |
第7天 | アラボト | ミカエル |
ちなみに、天国の7人の支配者の下には、49万6000という膨大な数の天使が同行していると言われています。
ただ、「天界」や「天国」という言葉の使い方は、かなりまちまちです。例えば、私たちにとっての「天国」といえば、「死後の世界」というイメージを持つ方が多いのではないでしょうか?
しかし、宗教や宗派によっては「天使や神々の住処」という意味合いが強かったり、文献によっても解釈がまちまちです。「天界」や「天国」という言葉は、かなり広い意味でとらえていたほうが無難かもしれません。
名高い天使たちについて詳しく解説!
数ある天使の中でも、名高い天使たちはファンタジー小説で頻繁に登場する重要なファクターです。それらを取り入れることで、自然と作品やキャラクターに重厚感が生まれます。
ここからは、そうした名高い天使たちの種類や特徴を解説します。天使が登場する有名作品の紹介もありますので、ぜひ最後までご覧ください!
名高い天使たちとは?
数多くの天使がいる中で、「ミカエル」「ガブリエル」「ラファエル」「ウリエル」の四大天使は、特に有名な天使です。
四大天使は、中世ヨーロッパでは「大天使」として扱われていました。しかし、17世紀にジョン・ミルトンによって書かれた、イギリス文学の傑作である叙事詩「失楽園」では、「熾天使」となっています。
四大天使の位が低いままだと、作品を作る上で様にならないと考えたからではないでしょうか。ちなみに現代のファンタジー作品では、「失楽園」の設定を参考にすることのほうが多いようです。
天使の種類について
それでは名高い天使たちのそれぞれの特徴について見ていきましょう。
以下の表にまとめましたので、ファンタジー小説の資料としてお使いください。
天使の名前 | 説明 |
ミカエル(Michael) | 四大天使の一人。天使長とも言う。剣を持ち、鎧を着て天の軍団(天軍)の先頭に立つ勇敢な天使。天軍の総指揮官。位階は大天使だが、「サタンと戦う」「モーセに十戒を受ける」「ジャンヌ・ダルクに啓示を与える」など、歴史上で数多く活躍する天使。 |
ガブリエル(Gabriel) | 四大天使の一人。位階は大天使。キリスト教美術で人気の高い「受胎告知(キリストの受胎を聖女マリアに告げる)」にも登場する。神のメッセンジャーを務めることが多く、マリアへの「受胎告知」もその一つ。また、「新約聖書」の「ヨハネの黙示録」ではヨハネに神の言葉を告げている。ちなみに、名前の語源は「支配者」や「統治者」であり、「神の人」という意味もある。 |
ラファエル(Raphael) | 四大天使の一人。位階は大天使。ラファエルという名前は、ヘブライ語で「神は癒される」という意味がある。ユダヤ教で「癒しを司る天使」とされている。「旧約聖書」の「トビト記」では、人間の姿になりトビトの息子トビアスの旅に同行して、その道中を守護している。このため、旅人が持つような杖を持つ姿で描かれる。 |
ウリエル(Uriel) | 四大天使の一人。位階は大天使。ウリエルという名前は、「神の光」「神の炎」を意味し、天にあるすべての輝くもの(太陽・月・星)を司る。このため、開いた手の中に炎を灯した姿で描かれる。 |
七大天使 | 四大天使に三人を加えて七大天使とする(ユダヤ教・キリスト教において)。ただし、書物・宗派によって加える天使が異なる。カマエル、ヨフィエル、ザドキエル、レミエル、セラフィエル、イフディエル、バラキエルなどから三人が加えられる。 |
メタトロン(Metatron) | ユダヤ教の天使。旧約聖書に登場する義人エノクが天に昇ってメタトロンになった。76の異名(72という説もある)を持つ天使で、「太陽よりも燦然と輝く顔を持つ」とされる。キリスト教やイスラム教の分派の中にも、メタトロンを天使として認めるものがある。 |
サンダルフォン(Sandalphon) | ユダヤ教に登場する天使。「天国の歌」を司るのが職務。メタトロンの双子の兄弟で、天に届くほど巨大な天使。 |
サタン(Satan) | ユダヤ教・キリスト教では「神の敵対者」、イスラム教では「人間の敵対者」とされる。元の名前はルシファー(Lucifer、ルシフェル)とも言われ、人類に試練を与える役目を担っていた。12枚の翼を持ち、神に最も近い熾天使だった。しかし、自らが神になろうと神に反逆し、敗れる。その後、堕天使となって、悪魔の統領になった。 |
名高い天使たちが登場する有名作品
名高い天使たちが登場する有名作品を3つ紹介します。
神撃のバハムート
「神撃のバハムート」は、あらゆる種族の入り混じる神秘の世界「ミスタルシア」で起こるストーリーを描いたファンタジーアニメです。
「人」「神」「悪魔」は始めこそ争っていますが、強大な力を持ち、世界を消滅の危機に陥れる銀翼の竜「バハムート」の復活に対して、協力して封印に乗り出します。
物語の中で、名高い天使の名前が数多く出てくるので(ルシフェルも含む)、天使の登場するファンタジー小説を書くなら、ぜひ一度見ていただきたい作品です。
ガヴリールドロップアウト
「ガヴリールドロップアウト」は、天界にある「天使学校」を首席で卒業したガヴリエールが、修行のために人間界に下り、高校生活を送る物語です。しかし、オンラインゲームにはまってしまったガヴリエールは、ぐうたら生活を送るようになり、「堕天使」ならぬ「駄天使」を自称するようになります。
つまり四大天使の一人である「ガヴリエル」を「ガヴリエール」と名前をもじり、天使が堕天使に落ちた話を「駄天使」に変えて、作品に昇華しています。その設定だけでも面白いし、ファンタジー小説づくりの参考資料としてもおすすめの作品です!
働く魔王さま!
勇者に敗れ、異世界から現代日本にやってきた魔王サタンが、フリーターとして働く物語です。舞台は現代日本ですが、「サタン」というリアルな設定(現実の宗教にも登場するという意味)を組み込むだけで、作品に現実感が付与されています。
もしこの作品が「魔王」のみで主人公を規定しているなら、どことなく「稚拙な印象」が強くなるでしょう。
いまいちピンと来ないなら、一度「サタン」という設定を抜きにしてこのアニメを観てみてください。いかに「サタン」という言葉のイメージによって、物語の稚拙さが軽減されているかが分かると思います。
まとめ
今回は天使について紹介しました。
内容を簡単にまとめると以下の通りです。
- 天使とは、キリスト教・イスラム教・ユダヤ教などに登場する「神の使い」のことを言う
- 天使は元々、翼を持たない「普通の男性の姿」をしていたが、オリエント文化の影響で「翼を持つ姿」で描かれるようになった
- 天使の位階は元々、「天使と大天使」くらいしかなかったが、現在では「9位階」が最も広く浸透している
- 天使の住む世界は「天界」や「天国」という言葉で表されるが、定義が曖昧で、宗教や宗派によっても解釈や言葉の使い方が異なる
- 天使の数は膨大だが、中でも「四大天使」が特に有名
- 天使の種類は宗教や宗派によって様々
- 天使の名前を利用するだけでも、作品のリアリティーを大幅にアップできる
この機会に天使について詳しくなり、ファンタジー小説の世界観設定に活かしましょう!
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