ファンタジー経済の作り方|物語の世界観設定を深化させる「お金」の知識
ファンタジー小説やゲームを楽しむ際、登場する世界観の魅力に惹かれる人は多いでしょう。作品の世界観を作り上げる要素の一つに、その世界の経済システムがあります。通貨の種類や価値観、金融制度など、現実世界とは異なる経済の仕組みを設定することで、作品世界に一層の奥行きと現実味が生まれます。本記事では、ファンタジー作品における経済設計の重要性と、世界観設定に役立つ「お金」の知識について解説していきます。
経済システムの重要性
ファンタジーの世界観づくりにおいて、経済システムは重要な役割を果たします。どのような通貨が使われているか、物価の水準はどうか、金融機関はあるのか、といった設定を通して、その世界がよりリアルに描き出されるのです。
現実離れした設定の魅力
ファンタジー作品の面白さの一つは、現実とはかけ離れた非日常的な世界観が描かれることです。通貨に宝石や魔法の力を持った貨幣を用いたり、決済手段としてまったく異なる概念を取り入れたりと、現実にはないシステムを自在に設計することができます。こうした発想の転換から、斬新な経済のあり方が生まれ、世界観に深みと魅力が生まれるのです。
例えば、ある島国では巨大な貝殻に刻まれた紋章が通貨として流通しており、この貝殻の入手が経済活動の基盤となっている、といった設定が考えられます。こうした世界観は、読者の想像力をかきたて、物語への没入度を高めることでしょう。
現実との接続による説得力
一方で、経済システムを現実の法則に基づいて設計することで、世界観の説得力を高めることもできます。通貨の発行権や金融政策、為替レートの変動など、現実の経済原理を取り入れることで、リアリティのある経済描写が可能になります。
例えば、ある国では黄金が希少で価値が高く、別の国では銀が豊富で価値が低いため、両国間で為替レートの差が生じている、といった設定が考えられます。また、中央銀行のような機関が通貨供給量を調整したり、領域間の金融格差に起因する紛争が起きたりすることで、ドラマチックな展開を盛り込めます。
経済を舞台とした物語性
経済システムそのものを物語の中心に据えることで、新たな物語が生まれる可能性もあります。例えば、異世界で使える通貨がない主人公が、経済活動に携わりながら徐々に富を築いていく過程を描くストーリーなどが考えられます。産業革命の舞台となる国、通貨価値の変動に翻弄される商人の活躍といった、経済を題材にした物語はファンタジー作品において魅力的なテーマとなり得るでしょう。
世界観設定に役立つ「お金」の知識
ファンタジーの経済システムを設計する際、現実世界のお金に関する知識を活用することがおすすめです。経済学の理論や歴史的事例から着想を得ることで、リアリティのある設定が可能になります。
通貨とは何か
通貨とは、物々交換の媒体として使われる支払い手段のことです。金属や貝殻、記号などあらゆるものが通貨として機能する可能性があります。通貨には以下のような特徴があります。
- 価値の保蔵手段
- 交換の媒体
- 計算単位
- デフォルト決済手段
ファンタジーの世界観を設定する際は、通貨の形状や由来、希少性、発行主体など、様々な側面から設計することができます。これらの要素を整合性をもって組み合わせることで、作品世界に根ざした独自の通貨システムを作り上げられます。
通貨とは何かについてもっと興味のある方には、『投資家と考える10歳からのお金の話』という本をおすすめします。『投資家と考える10歳からのお金の話』は、資産運用会社レオス・キャピタルワークスの「ひふみ金融経済教育ラボ」が監修し、2024年に講談社から刊行された児童向けの実用書です。
本書は、子どもたちが「お金とは何か」「どう使うべきか」「どのように得るのか」といった基本的な金融経済の概念を学べる内容となっています。構成は基礎編、中級編、上級編の3章で構成され、社会とお金のつながりや、お金の使い方、働くことの意味などを、豊富な漫画やイラストを交えてわかりやすく解説しています。
特に、漫画家の遠田おと氏によるストーリーが各章に挿入され、子どもたちが実際の生活の中でお金がどのように循環し、社会とどのように関わっているのかを理解できるようになっています。
また、起業家インタビューや、家入一真氏、田中仁氏、隈研吾氏といった実際の起業家の経験談も掲載されており、子どもたちにとって将来の夢やキャリアを考えるきっかけとなるでしょう。
「お金に使われる」のではなく、「お金を使う」人生を送るための第一歩として、親子で一緒に学べる一冊です。
金融の仕組み
金融システムは、経済活動を支える重要な機能を果たします。預金や融資、為替、資産運用など、金融には様々な側面があります。ファンタジーの世界観づくりにおいても、これらの概念を取り入れることで、経済システムに深みと実在感が生まれます。
例えば、異世界に銀行のような金融機関を設定し、通貨発行権や資金貸付業務を担わせるといった設定が考えられます。さらに、この銀行に国家の命運をも左右するような陰謀が渦巻いているという展開を盛り込めば、ダイナミックな物語が描けるはずです。
経済に関する歴史的事例
歴史に残る、経済に関する出来事から着想を得ることも有効です。例えば、中世ヨーロッパにおいて、貴金属の供給が需要を上回ったことで通貨価値が下落し、物価が上昇した出来事(いわゆるインフレ)などが参考になります。こうした経済事象をモチーフに、ファンタジーの世界における価値観や社会情勢を設定することができます。
また、産業革命やグローバル経済の進展といった、経済に関する大きな変遷を取り入れることで、世界観に歴史的な深みを持たせることもできるでしょう。
まとめ
ファンタジー作品における経済システムの設計は、その世界観をより魅力的に演出する上で重要な役割を果たします。現実世界のお金に関する知識を応用しつつ、作品の世界観に合わせた創造性を発揮することが鍵となります。
通貨の形態や金融の仕組み、経済の変遷などを設定することで、作品世界に一層の現実味と奥行きが生まれます。また、経済そのものを物語の中心に据えることで、ファンタジー作品に新たな魅力を生み出せるかもしれません。
読者を没入させる作品世界を作り上げるためには、様々な側面から経済システムを検討し、他の設定要素と整合性のとれた設計を行うことが大切です。経済に関する幅広い知識を活用し、創造力を発揮していくことで、より魅力的なファンタジー世界が生み出せるはずです。
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