軍隊階級の知識|古代ローマから現代NATOまで陸海空の階級体系を徹底解説

2022年11月6日

軍隊の階級は、指揮命令系統を明確にし、組織を機能させるための根幹です。古代ローマのレギオン(軍団)からナポレオン戦争を経て近代的な階級体系が完成し、現在はNATO(北大西洋条約機構)の標準コードで各国の階級が対応付けられています。

そこで本記事では、「軍隊の階級」について、「古代」と「現代」それぞれで情報をまとめました。古代ローマ軍の階級、近世の軍制改革、現代の陸海空3軍の階級体系、そして階級と部隊規模の関係までを網羅的に整理します。

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古代ローマ軍の階級

ローマ軍団(レギオン)は約5,000人の重装歩兵で構成され、共和政末期から帝政期にかけて精緻な階級制度を発展させました。

上級士官

軍団を率いる上級士官は、軍事的な能力だけでなく政治的な地位とも結びついていました。軍団長であるレガトゥスは元老院議員から任命され、任期はわずか3年。つまり軍のトップが「政治家の出向ポスト」だったのです。一方、叩き上げの最高位であるプラエフェクトゥス・カストロルムは兵站と野営地の運営を一手に担い、実務面では軍団の生命線でした。

階級(ラテン語)現代の対応役割
ドゥクス(Dux)大将属州の軍事総督。複数軍団を統括
レガトゥス・レギオニス(Legatus Legionis)中将軍団長。元老院議員が3年任期で着任
トリブヌス・ラティクラウィウス(Tribunus Laticlavius)少将(名目)元老院議員候補の若手。軍団長の次席だが実権は限定的
トリブヌス・アングスティクラウィウス(Tribunus Angusticlavius)大佐騎士階級出身の幕僚。1軍団に5名配置
プラエフェクトゥス・カストロルム(Praefectus Castrorum)准将叩き上げの最高位。野営地の管理・兵站を統括

中級士官

ローマ軍の真の強さは中級士官にありました。とりわけケントゥリオン(百人隊長)は「ローマ軍の背骨」と呼ばれ、約80人の兵を直接指揮しながら前線に立ち続けた存在です。その最高位であるプリムス・ピルスは、引退すると騎士階級に昇格できるほどの名誉職でした。創作で「叩き上げの軍人」を描くなら、このケントゥリオンの立ち位置が参考になります。

階級(ラテン語)現代の対応役割
プリムス・ピルス(Primus Pilus)中佐筆頭百人隊長。第1大隊第1ケントゥリアの指揮官。引退すると騎士階級に昇格
ピルス・プリオル(Pilus Prior)少佐大隊の上級百人隊長。複数のケントゥリアを統括
ケントゥリオン(Centurion)大尉〜少尉百人隊長。80人の部隊を指揮。ローマ軍の背骨と呼ばれた

下級士官・兵

百人隊長の下にも明確な役割分担がありました。オプティオは百人隊長が自ら選ぶ副官で、隊長が戦死した場合の後継者でもあります。テッセラリウスは合言葉の管理という地味ながら軍の機密に関わる任務を担っていました。また、イムネス(技術兵)は鍛冶・医療・測量などの専門職で、雑務が免除される特権を持っていた点も興味深いところです。

階級(ラテン語)現代の対応役割
オプティオ(Optio)曹長百人隊長の副官。百人隊長が選任
テッセラリウス(Tesserarius)軍曹合言葉の管理・歩哨の配置を担当
デクリオン(Decurion)班長騎兵隊の指揮官(約30騎)
イムネス(Immunis)技術兵専門技能(鍛冶・医療・測量)を持つ兵。雑務免除
ミレス・グレガリウス(Miles Gregarius)一般兵一般の軍団兵

近世の軍制改革

中世のヨーロッパでは封建領主が個別に兵を率いたため、統一的な階級制度は希薄でした。「王に仕える騎士」が兵を連れてくる時代には、そもそも階級という概念自体が不要だったのです。しかし常備軍が登場し、火器の発達で歩兵の密集運用が求められるようになると、数千人を組織的に動かすための「階級」が必要になりました。以下の表は、現代の階級体系がどのように形成されていったかの流れです。

時代改革影響
16世紀スペインのテルシオ(方陣)制度大佐(Coronel)・大尉(Capitán)が定着
17世紀三十年戦争連隊(Regiment)単位の編成が一般化。少佐(Major)が新設
18世紀フリードリヒ大王の軍制参謀制度の確立。将官の等級が細分化
1800年代ナポレオン戦争軍団(Corps)・師団(Division)の編成が標準化。元帥(Marshal)の地位が確立
19世紀後半プロイセン参謀本部近代的な階級と参謀制度が世界の軍隊の標準に

現代の陸軍階級(NATOコード対応)

NATOでは各国の階級を統一的に比較するため、将校にOF-1〜OF-10、下士官兵にOR-1〜OR-9のコードを割り当てています。同じ「大佐」でも、米軍のColonel、英軍のColonel、独軍のOberstでは名称が異なりますが、NATOコードで「OF-5」と示せば同格であることがひと目でわかる仕組みです。

以下では将官から兵まで、区分ごとに米・英・独・日本(陸上自衛隊)の対応を整理します。

将官(General Officers)

将官は師団以上の大部隊を指揮する最上位の階級群です。元帥(OF-10)は戦時の特別な功績に対して授与されることが多く、平時に現役の元帥がいない国も珍しくありません。日本の自衛隊には元帥と准将に相当する階級がない点が特徴的です。

NATOコード米陸軍英陸軍独陸軍日本(陸自)
OF-10元帥(General of the Army)元帥(Field Marshal)元帥(Generalfeldmarschall)―(該当なし)
OF-9大将(General)大将(General)大将(General)陸将(甲)
OF-8中将(Lieutenant General)中将(Lieutenant General)中将(Generalleutnant)陸将
OF-7少将(Major General)少将(Major General)少将(Generalmajor)陸将補
OF-6准将(Brigadier General)准将(Brigadier)准将(Brigadegeneral)―(該当なし)

佐官(Field/Senior Officers)

佐官は連隊・大隊クラスを指揮する中堅幹部です。大佐は連隊長、中佐は大隊長、少佐はその補佐が基本的な役割になります。創作で「現場の指揮官」を描くなら、この佐官クラスが最も使いやすい階級帯といえます。

NATOコード米陸軍英陸軍独陸軍日本(陸自)
OF-5大佐(Colonel)大佐(Colonel)大佐(Oberst)1等陸佐
OF-4中佐(Lieutenant Colonel)中佐(Lieutenant Colonel)中佐(Oberstleutnant)2等陸佐
OF-3少佐(Major)少佐(Major)少佐(Major)3等陸佐

尉官(Company Grade Officers)

尉官は中隊・小隊を率いる若手将校です。士官学校や幹部候補生課程を修了してまず任官するのが少尉で、そこから中尉、大尉と昇進していきます。主人公が「新米士官」として物語に登場する場合、少尉か中尉からスタートするのが自然です。

NATOコード米陸軍英陸軍独陸軍日本(陸自)
OF-2大尉(Captain)大尉(Captain)大尉(Hauptmann)1等陸尉
OF-1中尉(First Lieutenant)中尉(Lieutenant)中尉(Oberleutnant)2等陸尉
OF-1少尉(Second Lieutenant)少尉(Second Lieutenant)少尉(Leutnant)3等陸尉

准士官(Warrant Officers)

准士官は将校と下士官の間に位置する独特の階級です。すべての国にあるわけではなく、制度の位置づけも国によって大きく異なります。米軍では技術的専門職(ヘリコプターパイロットなど)として運用され、英軍では下士官の最上位に近い扱いです。

NATOコード米陸軍英陸軍日本(陸自)
WO-5上級准尉(CW5)
WO-1准尉(WO1)准尉(WO2/WO1)准陸尉

下士官(Non-Commissioned Officers)

下士官は「部隊の屋台骨」と呼ばれる存在です。兵を直接指導し、小隊長(少尉・中尉)を実務面で支える役割を担います。ベテランの曹長が新任の少尉に現場を教えるという構図は、軍隊モノのフィクションでもおなじみの光景です。

NATOコード米陸軍英陸軍独陸軍日本(陸自)
OR-9最上級曹長(SGM)連隊曹長(WO1)上級曹長(Oberstabsfeldwebel)陸曹長
OR-8上級曹長(MSG)准尉2級(WO2)曹長(Stabsfeldwebel)
OR-7一等軍曹(SFC)曹長(Staff Sergeant)上級軍曹(Hauptfeldwebel)1等陸曹
OR-6二等軍曹(SSG)軍曹(Sergeant)軍曹(Feldwebel)2等陸曹
OR-5三等軍曹(SGT)伍長(Stabsunteroffizier)3等陸曹
OR-4伍長(CPL)伍長(Corporal)上等兵(Unteroffizier)

兵(Enlisted)

兵は階級の最下層ですが、軍隊の人数としては最も多い層です。入隊直後は二等兵からスタートし、勤務期間と能力に応じて上等兵まで昇進します。物語で「一兵卒の視点」を描く場合、ここが出発点になります。

NATOコード米陸軍英陸軍独陸軍日本(陸自)
OR-3上等兵(PFC)上等兵(Lance Corporal)上等兵(Obergefreiter)陸士長
OR-2一等兵(PV2)一等兵(Private)一等兵(Gefreiter)1等陸士
OR-1二等兵(PV1)二等兵(Private)二等兵(Schütze)2等陸士

海軍階級

海軍は陸軍とは独立した階級体系を持っています。これは陸軍と海軍がそれぞれ別の歴史的経緯で発展してきたためです。特に注意すべきは、海軍の「Captain」が大佐(OF-5)に相当する点です。陸軍のCaptainは大尉(OF-2)なので、同じ英語でも3ランクも違います。海戦ものを書くときにここを間違えると、軍事に詳しい読者から即座に指摘が入るポイントです。

NATOコード米海軍英海軍陸軍対応
OF-10元帥(Fleet Admiral)元帥(Admiral of the Fleet)元帥
OF-9大将(Admiral)大将(Admiral)大将
OF-8中将(Vice Admiral)中将(Vice Admiral)中将
OF-7少将(Rear Admiral Upper Half)少将(Rear Admiral)少将
OF-5大佐(Captain)大佐(Captain)大佐
OF-4中佐(Commander)中佐(Commander)中佐
OF-3少佐(Lieutenant Commander)少佐(Lieutenant Commander)少佐
OF-2大尉(Lieutenant)大尉(Lieutenant)大尉
OF-1中尉/少尉(Lieutenant JG / Ensign)中尉/少尉(Sub-Lieutenant / Midshipman)中尉/少尉

階級と部隊規模の対応

軍の階級は、それぞれが指揮する部隊の規模と密接に対応しています。少尉が率いる小隊(30〜50人)から、大将が統括する軍(5万〜20万人)まで、階級が上がるごとに指揮する人数が桁違いに増えていきます。創作でキャラクターの階級を決めるとき、「この人物はどれくらいの規模の部隊を動かしているのか」から逆算すると、不自然な設定を避けられます。

部隊規模呼称兵力目安指揮官の階級
軍集団Army Group10万〜100万元帥・大将
Army5万〜20万大将
軍団Corps2万〜5万中将
師団Division1万〜2万少将
旅団Brigade3,000〜5,000准将・大佐
連隊Regiment2,000〜3,000大佐
大隊Battalion500〜1,000中佐
中隊Company100〜200大尉
小隊Platoon30〜50中尉・少尉
分隊Squad8〜12軍曹・伍長
Fire Team4伍長・上等兵

ポップカルチャーでの軍隊階級

実在の軍隊階級をそのまま使うか、独自にアレンジするかは創作上の大きな分岐点です。既存の階級体系を踏襲すれば読者の理解コストが下がり、独自の体系を作れば世界観の独自性が増します。以下の作品はそれぞれ異なるアプローチで階級を活用している好例です。

作品階級制度の特徴ポイント
『銀河英雄伝説』帝国軍はドイツ式(元帥・上級大将あり)、同盟軍は米軍式階級名の違いで陣営の文化差を表現
『幼女戦記』ドイツ帝国軍の階級をほぼ踏襲少佐ターニャの指揮範囲が明確に描写
『機動戦士ガンダム』連邦軍・ジオン軍とも現代軍に準拠大尉アムロ、大佐シャアなど階級が物語展開と連動
『スター・ウォーズ』帝国軍はターキン・ドクトリンで中央集権化総督(Grand Moff)という独自階級を設けている
『進撃の巨人』壁内軍の三兵団制兵団(兵長・分隊長)という独自体系で世界観を強化

まとめ

「軍隊の階級」は、創作において重要な要素になります。なぜなら、「軍隊の階級」をいい加減に設定してしまうと、「規律や命令の厳守」を旨とする軍隊の空気感を、リアルに再現できないからです。特に小説は、映画や漫画のように、「映像」での表現がほぼ存在しないため、より緻密に設定を考える必要があります。

軍隊の階級は、古代ローマの百人隊長(ケントゥリオン)から始まり、近世の連隊制度、ナポレオン戦争の軍団制度を経て現代のNATO標準コードへと発展しました。将官・佐官・尉官・准士官・下士官・兵という6区分を基本とし、各階級が指揮する部隊規模が対応しています。陸海空で階級名が異なること(特に海軍のCaptain=大佐問題)、そして各国で名称のバリエーションがあることを押さえておけば、創作での軍事描写は格段にリアルになるはずです。


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