【神話的円環は丸くない】ジョーゼフ・キャンベル英雄神話の基本構造 解説

2020年12月1日




 ジョーゼフ・キャンベルという人がいます。彼の功績は、英雄神話・英雄伝説に共通する基本構造を明らかにしたことです。キャンベルは英雄神話の基本構造を下記のようにまとめました。
 ここでは便宜上、①〜⑪の番号を振っています。

※あくまで英雄神話の基本構造であり、物語に全ての番号がなくても構わないし、同じものが何度もでてきても構いません。

  • ①神話英雄はそれまでかれが生活していた小屋や城から抜け出し、冒険に旅立つ境界へと誘惑されるか拉致される。あるいは自ら進んで旅を始める。
  • ②そこでかれは道中を固めている影の存在に出会う。英雄はこの存在の力を打ち負かすかなだめるかして、生きながら影の王国へと赴く。または敵に殺されて死の世界へと降りていく。
  • ③こうして英雄は境界を超えて道ではあるがしかし奇妙に馴染み深い『超越的な』力の支配する世界を旅するようになる。
  • ④超越的な力のあるものは容赦なく彼をおびやかし、またあるものは魔法による援助をあたえる。
  • ⑤神話的円環の最低部にいたると、英雄はもっとも厳しい試練をうけ、その対価を克ちとる。勝利は世界の母なる女神と英雄との性的な結合として、父なる創造者による承認として、みずから聖なる存在へ移行する。
  • ⑥あるいは逆にーー『超越的な』力が英雄に敵意をもったままであるならばーーかれがいままさに克ちうる機械に直面した恩恵の掠め取りとして表される。
  • ⑦こうした勝利こそ本質的には意識の、したがってまた存在の拡張にほかならない。
  • ⑧のこされた課題は帰還することである。
  • ⑨超越的な力が英雄を祝福していたのであれば、かれはいまやその庇護のもとに出発する。そうでなければ、かれは逃亡し追跡を受ける身になる。
  • ⑩帰還の境界にいたって、超越的な力はかれの背後にのこらねばならない。
  • ⑪こうした英雄は畏怖すべき王国から再度この世にあらわれる。かれが持ち帰った恩恵がこの世を復活させる。

 

 このエントリーでは、ジョーゼフ・キャンベルの英雄神話の基本構造を、例を交えてご紹介していきます。

  

Contents

英雄神話の基本構造 解説

①神話英雄はそれまでかれが生活していた小屋や城から抜け出し、冒険に旅立つ境界へと誘惑されるか拉致される。あるいは自ら進んで旅を始める。

→英雄は自発的でなければなりません。ですが唯一の例外として、「冒険に旅立つ境界へと誘惑されるか拉致される」場合は、最初は平穏な日々を過ごしていてもよいです。炭売りの炭治郎のように。

②そこでかれは道中を固めている影の存在に出会う。英雄はこの存在の力を打ち負かすかなだめるかして、生きながら闇の王国へと赴く。または敵に殺されて死の世界へと降りていく。

→闇の王国も死の世界も比喩です。日常とは違う世界と考えてください。
 また、敵に殺されてというのも比喩です。キリストのように実際、磔刑となるパターンもありますが、社会的に死ぬでも構いません。

③こうして英雄は境界を超えて道ではあるがしかし奇妙に馴染み深い『超越的な』力の支配する世界を旅するようになる。

→物語の出発点と異なる『超越的な』力があれば何でも構いません。わかりやすいのは異世界や特殊能力のある世界ですが、例えば政治の世界でもいいでしょう。

④超越的な力のあるものは容赦なく彼をおびやかし、またあるものは魔法による援助をあたえる。

→『超越的な』力の支配する世界の敵……例えば鬼滅の刃の鬼を思い浮かべてください。魔法による援助とは、修行による呼吸の取得と考えて差し支えないでしょう。

⑤神話的円環の最低部にいたると、英雄はもっとも厳しい試練をうけ、その対価を克ちとる。勝利は世界の母なる女神と英雄との性的な結合として、父なる創造者による承認として、みずから聖なる存在へ移行する。

→神話的円環(後述)とは、主人公が、非日常へ旅立ち、帰ってくるまでの輪をいいます。鬼滅の刃でいえば、鬼に襲撃されて家族を殺された第1話から、第204話で日常へ帰ってくるまでです。

 もっとも厳しい試験というと、193話で日の呼吸の奥義を習得する炭治郎でしょうか。世界の母なる女神と英雄との性的な結合として、父なる創造者による承認とは、主人公が特別になることであり、鬼滅の刃であれば日の呼吸という特別な技を身につけることとなります。

 この『聖なる存在へ移行』をどこで発生させるかは、物語をつくる上で非常に重要ですね。鬼滅の刃の場合は、全体の95%の時点(193/205)でした。

 これをもっと早く発生させるケースもあります。私の作品であれば、主人公アインがオースティアの国民選挙で敗北した時点(何かを成し遂げるために人の力を借りていいと気づく場面)が、『聖なる存在へ移行』です。発生させたのは全体の25%の時点(13/47)でした。

⑥あるいは逆にーー『超越的な』力が英雄に敵意をもったままであるならばーーかれがいままさに克ちうる機会に直面した恩恵の掠め取りとして表される。

→鬼滅の刃の場合、二段構えということもできます。無残が最後、炭治郎に取り付いた場面……これはまさに鬼にかつという機会の掠め取りでしょう。

⑦こうした勝利こそ本質的には意識の、したがってまた存在の拡張にほかならない。

→勝利とは、鬼に勝つという物理的な戦いを指すこともあれば。幼い自分の思い込みに克ち、存在(意識)を拡張させるという意味でもあります。

⑧超越的な力が英雄を祝福していたのであれば、かれはいまやその庇護のもとに出発する。

→勝利は世界の母なる女神と英雄との性的な結合として、父なる創造者による承認として、みずから聖なる存在へ移行する場合の展開です。物語の前半で『聖なる存在へ移行』した場合は、そのあと『聖なる存在』として主人公は旅をします。私の作品を読めば、非常によく分かると思います。

 一方、物語の終盤で『聖なる存在へ移行』した場合は、幸せな結末にむけて進むだけです。

⑨そうでなければかれは逃亡し追跡を受ける身になる。

→あるいは逆にーー『超越的な』力が英雄に敵意をもったままであるならばーーかれがいままさに克ちうる機会に直面した恩恵の掠め取りとして表される場合の展開。

⑩帰還の境界にいたって、超越的な力はかれの背後にのこらねばならない。

→天空の城ラピュタで、ラピュタが宇宙にあがっていきつつも、なくなっていない状況ですね。鬼滅の刃でも、愈史郎は消えずに残りました。私の作品では、主人公アインは故郷へは戻りませんでしたが、弟と再会できました。その後ろに超越的な力を残して去ったのです。

⑪こうした英雄は畏怖すべき王国から再度この世にあらわれる。かれが持ち帰った恩恵がこの世を復活させる。

→私の作品では、主人公アインがつくりだした時代の流れ……これを知る人々が世界を救っていきます。英雄の意志を継ぐものが現れて世界を復活させる。これがなくては、英雄神話は完結しません。
 英雄の誕生、旅立ち、クエスト消化、帰還……という回転を2,3周することでこの世が復活する……というのが、神話の基本構造となるようです。私の作品であれば、3巻までで英雄の誕生、旅立ち、クエスト消化、帰還という神話的円環を1回転をするのですが、最終的には第5巻で2回転をして完結となります。

 

神話的円環

 ⑤や⑪で神話的円環という言葉を出しました。この神話的円環は一般に下記の輪として表現されます。

物語論_構造
日本美学研究所

 ですが改めて英雄神話の基本構造を考えてみたとき、私はこの円環に違和感を感じました。つまり、下記のように歪ませるべきだと考えたのです。

神話的円環(丸数字は今回書いた①〜⑪を指します)

 ⑩物語のクライマックスはあくまで⑤⑥⑦であり、そこからのストーリーは次の①につなげるための余韻でしかありません。①〜⑦を長く密に、⑧〜⑪は短く薄く。という重み付けが物語を作成するにあたって大事です。

※一般に示させる真円の図では、それが表現されていません。これでは帰還や次の物語までの部分にも、ボリュームを持たせるべきなのか?と考えてしまい、実態としては使い物になりません。

 

まとめ

 ジョーゼフ・キャンベルの英雄神話の基本構造を解説しました。私自身、意識する・しないは別として、英雄神話の基本構造に則った作品になっていました。

 もしかしたら、全人類の深層意識に、英雄神話の基本構造は染み付いているのかもしれません。物語づくりの際には、ぜひ意識してみてくださいね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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