学ぶための模写と、小説パクリ問題
小説のパクリ問題が話題になっていました。
これはとある作者が、小説家になろうのランキング上位に自分の書いている作品と同じハイファンタジーの異世界を舞台にした、同じチート能力の俺TUEE物語で、ヒロインが同じく金髪という……世界観・展開・キャラクターの重複をみつけ、パクリであると主張したことから始まりました。
このように、世界観・展開・キャラクターの重複があると、パクリだと感じてしまいます。ましてや、自分が考えていたアイデアを先に具現化されて……人気まで得ているとなれば、パクリを糾弾したくなる気持ちもわかります。
本エントリーでは「小説のパクリ問題」を取り上げます。上達のための小説の模写についても話を広げ、解説します。
小説パクリ問題と個性
一方で、同じ素材をつかっても、人によって作り上げた結果は違うはずで、それを個性だという意見もあります。
>どいつもこいつも登場人物には人間が出てきてほぼ日本語話すんだから、まるっと全コピーからの改変とかでなければ細かいこと気にすんな
100人が同じ材料でカツ丼作っても、他人と違う味になる
ファーストフードみたいにシステム化しても店員によって微妙に出来が違う
それが個性
最初に断っておくと、私はパクリで利益を得るのはNGだと考えています。
しかし正直なところ「上手くなりたいなら、同じようにやってみるのが大事」だと考えています。これは仕事でもスポーツでも趣味でもあらゆることに共通した真理のはず。
ですので積極的に模写をすべきというのが私の考え方です。
何しろクリエイターとして活動するつもりならば、10万円あげるから10万文字の模写をしろと命令されても、一字一句丸写しするのは苦痛でしょう。途中で自分の個性を作品にこめずにいられないでしょう。
本エントリーでは、そんなクリエイターのための、学ぶための模写について書いてみます。
学ぶために模写は必要
「林先生の初耳学【半沢直樹でも話題!市川猿之助が熱血授業☆中島健人&ロイ君初共演】」で市川猿之助先生が、「型破りと型無し」の違いを語っていました。
歌舞伎でも他の武道でも同じですが、型がなければ新しいことはできません。突飛なアイデアを出してもそれは型無しであって、単に「本来の形を損なうこと」でしかないのですね。
小説でも同じことがいえると思っていて、まずは型を知ることが重要だと感じます。そのための練習として、私は小説家を目指す人間であれば、自分の好きな作品の1,2冊は模写すべきだと考えています(10万文字×2だから20万文字程度)。
模写せずに10年かけて、好きな作家の技術と同じレベルにたどり着いても、それって車輪の再発明なだけで、作家は何の価値も生み出していないのですね。価値を生み出すためにはまず先人と同じ場所までたどり着くことが大事。型を破るのはそれからです。
模写の方法は原稿用紙に手書きがベストですが、本を見ながらキーボードで模写するのも有りだと感じます。ですがこの作業、たった独りでこなせる精神力のある人があまりいないのではないでしょうか。
結果として、模写を小説投稿サイトに投稿してしまう人がでている?
私などは、「学ぶために模写は必要」と知ったら、すぐに試してみたくなります。けれど独りでどこにも発表しない作品を書き続けるのは辛いです。それもオリジナル作品ではなく、勉強のための模写ですから。
そうするとふと、模写を小説投稿サイトに投稿したら反応をもらえてやる気を継続させながら練習できるじゃん!と思い立つこともあるでしょう。ですがこれは絶対NGです。
Q.個人でサイトに小説を載せているのですが、小説家になろうで自分の作品と似ているものを見つけました。どうしたらいいですか?
小説家になろう-盗作について
各作品下部の「情報提供」のリンクより運営まで情報をお寄せください。
作者様本人が盗作だと断言できるものについては、然るべき対処をさせていただきます。
Q.以前に盗作として削除された作品が面白かったので、アレンジや書き足しをして投稿したいです。この場合は削除対象になりますか?
即削除対象です。
小説家になろうへ模写を投稿すると、即削除対象となります。独りで練習するのが辛いからといって、小説投稿サイトへ模写を投稿するのは絶対にやめてください。
※パクリ作品を投稿した人を、いいように捉え過ぎかな? 単にパクリ作品でPVが増えればお金が稼げると考えた守銭奴だったのかな。そんな悪人がいてほしくない、と考えてしまうのだけど。
アイデアは盗んでいい
ですが小説家になろうに救いの一文が書いていることを忘れてはいけません。
アイディアが盗まれました! 対処してください。
https://syosetu.com/help/list/categoriid/e79b97e4bd9ce381abe381a4e38184e381a6/
著作権法で保護されるものは“アイディア”ではなく“表現”とされています(2010年1月現在)。
よって、アイディアが他者と同じ場合であっても表現が違う場合は盗作となりません。
アイデアには著作権はない……つまりあなたの好きな作品と同じアイデアで物語を書く分には、問題がないわけです。
模写による表現の練習はできませんが、一冊の本で物語を終わらせる技術を盗むため、アイデアを模写するのは有りということです。
先日、『フォロワーさんが「ネタ被りですみません、消しますね」といって作品を消してしまう』話が話題となりました。
「ネタ被りですみません、消しますね」で消してしまうのは、法律を知らないがために損をしてしまったと言うことができます。この世界がどんなルールでできているのか、知ることは大事ですね。グレーな部分もたくさんあるので。
※創作者としては、下記の裁判結果も目を通しておくべき必修科目です。
【無料公開者の敗訴】二次創作のBL同人誌がスキャンされ、Webサイトで無料公開されていた件の裁判
本当は表現の練習もすべき
さて、一冊の本で物語を終わらせる技術は模写で身につけることができそうで、そのために小説投稿サイトが利用できそうです。
ですが本当は、表現の練習もしないと片落ちです。
これについては何か、練習の場が生まれるといいですね。
サッカーが上手くなりたければリフティングの練習をします。リフティングに対して、それはオレのパクリだやめろといっている人はいません。
小説で模写がNGなのは、どうしてなのでしょう。作品に権利が生まれて、お金が発生するからでしょうか。
だとすると権利を剥奪してお金を発生しないようにしろ……というのは流石に人道的にNOですが。例えば模写された作品が見られた時に、広告収入が発生したとしたら、模写した人に半分、模写元の作者へも半分、収益が還元される仕組みにしたらどうでしょう。こうすると模写する人は喜んで模写しますし、模写された方もお金が入るならいいかとなる可能性があります。
もちろん何の作品を模写しているかが明確で、かつ模写元の作品に存在しない文字を打てないよう縛る必要がありますが、そういった仕組みはWebサービスなら導入できそうです。自社から出版した本縛りにすれば、出版社にもメリットはあるかと思います。
私は一作家として読者として、「一冊の本で物語を終わらせる技術」と「文章表現」の二つを磨ける場、未来の小説家を育成するサービスができることを願っています。
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