ファンタジー世界で「魔法と銃は共存しない」?そもそも銃自体が……

2020年9月9日

 異世界と銃について、下記のような意見が話題になっていました。

「ファンタジー世界で銃が登場すると幻想の終わりの始まり」
「魔法と銃は共存しない」

 私自身、銃と魔法を作品に共存させたいと思う人間です。ですが、前述の意見をいう人達の意見が、まるで理解できないわけでもありません。

 今日は物語の中での銃について書いてみます。

そもそも銃というアイテム自体が面白くない

 最初に「そもそも銃というアイテム自体が面白くない」と書かせていただきました。銃をもちいた物語を書く人を貶めているわけではないのでご了承ください。

 何が言いたいかというと、銃自体が面白さの定義から外れる存在だということです。

【作品作りの屋台骨】面白さとは何か

 上記のエントリーでは、面白さとは何かを考えているのですが、主に考えるべき面白さは下記の二つだと考えます。

・予想を外すこと
→まず予想させてそれを外す(予想の外し方(面白い物語づくりの1つの方程式)

・予想通りであること
→願望充足(例えば異世界で最強の能力を得て、モテモテになってハーレムを築いて、魔王をやっつけて俺TUEEという願望をもって読み始めた作品が、そのとおりになってくれること)

 あくまで銃単体で見た場合の話を書きますが、銃を使う場合、どちらの面白さも発揮することが難しいと考えます。なぜならば銃には下記の特徴があるからです。
 ファンタジーのお約束である魔法と比較してみた場合を考えます。

・銃は魔法と比べて殺傷能力が高すぎる(と思われている)
→才能のない人間でも、銃の引き金を引けば、人ひとりを必ず殺せる。また、どれくらい多くの人を殺傷できるかは銃の性能による。……銃に対するこれらの印象は、読者としても当然想像することだと思います。
 だとすると、才能のない俺が世界最強になる!といった成りあがり、ざまぁ、無双を期待した読者を落胆させませんか? 銃さえあれば誰でも同じことできるじゃんとか、結局主人公の才能じゃなくて銃の性能なんだよなとか思われてしまうわけです。

・銃は魔法と比べて安定性がありすぎる(と思われている)
→面白さをつくるためには、結果にブレが必要です。例えば魔法使いが、自分の精神的要因によって力を発揮できない、というのは理解できますね。ですが銃の場合は、撃ってしまえば安定して人を殺せます。
 ……とはいえ実のところ、銃が安定して人を殺せるというのは幻想です。特に銃がはじめて開発された頃は、真っすぐ飛ばないとか、弾が出ないみたいな不調もよくあったようです。私が最近読んだ太平洋戦争の頃でさえ、アメリカ人が銃で戦うよりも日本人が切り込みしたほうが殺傷数は多いです(《小説感想》小説 太平洋戦争 戦争よ、さようなら!)。
 ですが私たち、現代に生きる人間は、「機械が調子を悪くする場面に出会っていません」。機械はいつも一定の成果を出してくれる、というのが私たち現代人の幻想です。

 しかし、この幻想がある限りは、銃は安定しているものであり、物語のギミックとしては面白くないという扱いにならざるを得ません。

一般の人からみた銃と魔法の殺傷力に対する印象

 先程のセクションで書いたことを図にまとめると、こうなります。一般の人からみた、銃と魔法の殺傷力に対する印象と外れてはいないのではないでしょうか。

 そして、こうしてまとめてみると、次のことが言えると思います。つまり、銃が面白くないのは、「モブと銃の才能がある人間の差が小さすぎるから」。

 大前提として、ライトノベルをはじめとする物語で重要なのは、主人公を際立たせることです。

 銃は、これを満たしづらいアイテムなのですね。

 一方の魔法のグラフを見てください。指数関数的に殺傷力が高まります。
 銃と比べれば、魔法のなんとロマンのあることか。魔法は銃と違って性能にブレもあるし、威力は無限大だし、主人公に使わせたら特別感を出せますね

銃の活かせる物語と悪手

 銃について、「面白くない理由」を延々と述べるエントリーでしたが、それだけだと建設的ではないので、銃をこうやって使っちゃダメだという悪手と、活かせる物語について描いてみます。

悪手の物語

・周りが魔法使いばかりの世界で、主人公だけが銃
→主人公がモブに見える気がします。魔法の才能がないから銃に手を出した……まではストーリー性があるのですが、その後はどう展開するか。難しい使い方だと思います。

・銃が生まれた当初の時代を舞台として、銃の性能のブレを見せる
→リアル志向の歴史物語を書くのであれば有りだと思います。けれど異世界で、銃の性能のブレを見せたときに、テンポを維持できるかな?という不安があります。モタモタするなと思われたりしないかな、とか。「銃」に期待してるのってそういうものじゃないと言われてしまうかもしれません。

・人に銃口を向けたあとの感情のブレを描く
→敵に銃口を向けて、ハァハァ、と言いながら引き金を引くかを迷うシーン。平成初期のアニメなどによく見られた描写です。こんな世界が正しいかはわかりませんが、今の時代のWeb小説だとこういった倫理的な迷いって求められていない気がしてます。ヘイトを溜めた相手は、容赦なく成敗する、それが平成末期から令和にかけての価値観でしょう。

活かせる物語

・周りが銃使いばかりの世界で、主人公だけが魔法
→銃はあくまで主人公をひきたてるためのサブとする。

・銃の威力が主人公の魔力(等の特殊能力)に左右される
→威力にブレを作り出し、面白さを引き出すことが重要です。幼女戦記なんかもこのタイプではないでしょうか(作中で出てくるエレニウム九五式という演算宝珠は、魔力を最適化し術式制御を容易にする事で高度な魔術行使を可能 とのことです)。

・一般人が銃を使えない世界で、主人公が銃をつかう
→ゴルゴ13やシティハンターみたいな物語ですね。一般人が銃を使えないことで、主人公と一般人との差を際立たせてくれます。

・主人公を王や隊長に位置づけて、部下(兵隊)に銃を使わせる
→主人公自身の戦闘力を際立たせるのではなくて、主人公のマネジメント能力を際立たせることで、主人公と一般人との差を見せる形です。

・銃を名誉の象徴にしてしまう
→例えば1930年代前半頃の陸軍大学校卒業者(「首席」1名と「優等」5名)には、恩賜の軍刀が送られたそうです。それと同じように、何かを達成した見返りに銃をもらえるという世界観にしてしまえば、銃を持つことが特別の証になります。

 以上、銃の活かせる物語と悪手について書きました。

「ファンタジー世界で銃が登場すると幻想の終わりの始まり」?「魔法と銃は共存しない」?

 物語の中での銃について書いてみました。
 なにより銃というアイテムが、現代日本人のイメージの中で優秀になりすぎて、面白さを作り出すのが難しい……という課題があると感じました(日常的に銃に触れている海外の人だと、また別の感覚を得ているかもしれません)。

 もちろん、物語の中で必ずしも銃をつかうなというわけではありません。登場させる場合は、魔法と組み合わせるなり、銃をもらうこと自体を名誉にするなり、いろいろなアイデアが必要だということです。
 なにより重要なのは、主人公を物語の中で特別な存在にすることですからね。


 では、冒頭でピックアップした2つの言葉に対しても見ていきましょう。

「ファンタジー世界で銃が登場すると幻想の終わりの始まり」
→これは、銃の安定性に要因があると考えられます。つまり魔法と比べて殺傷能力がありすぎたり、安定性が高すぎるため、銃を使える主人公を特別な存在にしづらい。銃の使い方について詳しく述べないといけなくなったり、銃をつかうモブキャラをどう運用するかを考えなくちゃいけない。
 結構小難しい話になる気配がします。何も考えず楽しみたいというユーザーからすると、現実的で嫌だ、になるのでしょうね。理解できる意見だと思います。

「魔法と銃は共存しない」
→これは少し、毛色が違う意見かなと思います。魔法という優秀な攻撃ができるなら、全員が魔法使いになるはずだ……という意見でしょう。この意見については、もう1つグラフを出します。その世界で魔法が使える人の割合と、魔法と銃の共存性のグラフです。

 「魔法と銃は共存しない」とおっしゃられている方は、このグラフの右端の方の世界(魔法が使える人の割合が非常に多い世界)で、銃がでてくるのはおかしいだろう、と仰られているのではないでしょうか。

 もちろん右端の世界で、(主人公を銃鍛冶とかにして)銃をつかうほうが魔法を使うよりも楽に成果が出せるよと示し、魔法世界の住人が全員銃をつかうようになる(魔法を失わせることが最終目的)……なんて物語はかけますけどね。

 ということで、冒頭の2つの言葉については、理解はできるものの、対策は可能ですよという回答になりますね。対策するにしても、そもそも銃自体が持つ特徴を把握する必要はありますので、そんなときにこのエントリーを役立てていただければ幸いです。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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