ファンタジー経済の作り方|魅力的な物語の世界観を作るための金融設計ガイド

ファンタジー作品の世界観を作る上で、金融や経済システムの設計は重要な要素となります。魔法や剣と盾だけでなく、お金の概念や流通経路、金融機関の存在なども、その世界の骨格を形作る大切な部分です。本記事では、ファンタジー経済の設計方法について、具体的な着眼点を解説していきます。

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通貨制度の確立

まずは通貨制度の設計から始めましょう。通貨とは、財やサービスの価値を表す媒体であり、経済活動の基盤となります。ファンタジー世界でも、何らかの通貨概念が必要不可欠です。

通貨の形態

硬貨や紙幣といった現実世界の通貨に似た形態を採用するか、あるいは独自の通貨形態を設定するかを検討しましょう。例えば、魔力を持つ宝石や特殊な金属を通貨と定めるのも一案です。そうすることで、その世界ならではの経済システムを作り出せます。

また、通貨の材質や意匠にも創意工夫が可能です。一般的な金貨や銀貨だけでなく、竜の紋章が刻まれた特殊な硬貨を流通させるなど、その世界の歴史や文化を反映させた設計が望ましいでしょう。

通貨の発行と流通

通貨はどのように発行され、流通しているのかも重要なポイントです。中央銀行のような機関が存在し、通貨を管理しているのか。あるいは、各都市国家が独自の通貨を発行しているのか。特定の宗教団体や商人ギルドが発行権を持っているのかもしれません。

さらに、通貨の発行量や流通量をどう設定するかによって、その世界の経済状況が大きく変わってきます。インフレや恐慌を描くのであれば、通貨の過剰発行や極端な不足状態を設定すると良いでしょう。

外貨との交換レート

ファンタジー世界が複数の国や地域から成り立つ場合、外国為替の概念も登場します。各地域の通貨がどのような交換レートで取引されているのか、またその変動要因は何なのかといった設定を行うことで、より現実味のある経済システムが作れます。

例えば、ある国が豊富な鉱物資源を有していれば、その通貨の価値は高くなるでしょう。一方、内戦などで政情が不安定な国の通貨価値は下落する可能性があります。このように、各地域の状況を反映させた為替レートの設定を心がけましょう。

金融機関の役割

次に、金融機関の存在とその役割について検討していきます。金融機関がどのように機能しているのかによって、その経済の成熟度が大きく変わってきます。

銀行や両替商の存在

まずは銀行や両替商の有無を決めましょう。銀行のような金融機関があれば、預金や融資、為替などのサービスが提供されることでしょう。一方、そうした機関がない社会では、金融活動は個人や商人ギルドなどが行う必要があります。

銀行の発達度によっても、その世界の経済状況が変わってきます。単なる預貸金庫に過ぎない銀行もあれば、株式市場の運営や企業への投資を行う高度な銀行もあり得るでしょう。

中央銀行の権能

中央銀行が存在する場合、その権能をどう設定するかが重要なポイントです。金融政策の立案や通貨の発行管理を行うことは最低限の役割ですが、さらに金融機関の監督や景気対策なども担う可能性があります。

中央銀行の力が強ければ、その経済は安定するものの、中央集権的な体制になりがちです。逆に中央銀行の権能が弱い場合、分権的でダイナミックな経済が生まれる一方、景気変動のリスクも高まります。このように、中央銀行の設計次第で、その世界の経済の性格が変わってくるのです。

新しい金融の形態

ファンタジー世界ならではの金融の形態を考えるのも面白いでしょう。例えば、魔力を持つ宝石やアーティファクトを金融商品として扱うなどの発想が可能です。あるいは、悪魔の力と引き換えに願いを叶える契約書のような、常識を逸脱した金融サービスを設定するのも一案です。

このように、既存の金融概念にとらわれずに自由な発想を行えば、より独創的な経済システムを作り上げられるはずです。しかし一方で、リアリティを失わないよう注意する必要もあります。

取引と流通の仕組み

通貨や金融機関に加えて、取引と流通の仕組みをどう設計するかも重要なポイントです。商品やサービスがどのように売買されているのか、物流経路はどうなっているのかなど、様々な要素を考慮する必要があります。

市場と店舗の役割

まずは市場と店舗の存在を検討しましょう。常設の市場があれば、そこを中心に経済活動が行われることでしょう。一方、移動する行商人に依存するような社会もあり得ます。また、店舗の形態も問屋や手工業者の工房、大규模な量販店など、様々な可能性があります。

市場や店舗の管理体制や流通ルートの設定も重要です。特定の組合や商人ギルドが運営しているのか、あるいは自治体や中央政府の監督下にあるのかによって、その経済のあり方は変わってきます。

物流と運送システム

商品の運搬や物流網の整備状況によっても、経済活動は大きな影響を受けます。陸路や水路など、輸送手段の発達度合いを設定する必要があります。また、安全な物流経路が確保されているか、強盗の脅威があるかなども考慮すべきポイントです。

さらに、魔法や特殊な技術を利用した運送システムを設定するのも面白い選択肢です。瞬間移動の魔法を使った宅配便や、空を自在に飛べる魔法の乗り物による長距離輸送など、ファンタジーならではのアイデアが生かせるはずです。

商業の規模と形態

その世界の商業がどの程度発達しているのかも重要な要素です。個人商店が中心なのか、大規模な商社があるのか。あるいは、ネット通販のような新しい商売の形態が登場しているのかもしれません。さらに、株式市場の存在や国際貿易の活発さなども、経済の成熟度を示す目安となります。

商業の規模や形態によっては、独占や競争がどの程度起きているのかも設定する必要があります。寡占状態なのか自由競争が行われているのか、経済のダイナミズムが変わってくるためです。

社会制度との関係性

経済システムを設計する上で、その世界の社会制度との関係性を無視することはできません。社会システムが経済に与える影響は計り知れません。

所有権と資産の継承

まず、土地や財産の所有権と相続のルールはどうなっているのかを確認する必要があります。単なる個人所有なのか、あるいは一族や氏族が共有しているのか。相続のシステムによっては、格差社会が生まれたり貴族制度が確立したりする可能性もあります。

また、奴隷制度の有無も重要なポイントです。奴隷が存在すれば、それが経済活動の原動力となる一方、人道的な問題も生じるでしょう。所有権とその継承ルールは、その世界の経済と社会に大きな影響を及ぼすのです。

身分制度と経済活動

その世界に身分制度が存在するのであれば、身分によって許される経済活動に制限がかかる可能性があります。例えば、商売を営む権利が特権階級にしか与えられていないような制度です。逆に、一定の身分以下の人間は金融業に携わることができないなどの設定も考えられます。

このように、身分制度が経済に規制をかける場合、その世界の商業活動は制限されることになります。一方で、ある程度の競争原理が働くことで、新しい産業が生まれる可能性もあります。

宗教や思想の影響

宗教や思想の教義が、経済活動に大きな影響を及ぼすこともあります。利子を重んじる宗教では金融業が発達し、逆に利子を否定する思想の下では金融業が制限される可能性があります。また、特定の職業や商売を禁止する宗教があれば、その種類の産業は発達しないでしょう。

さらに、倫理観や価値観の違いも無視できません。自然保護を重んじる思想の下では資源開発が制限され、快楽主義的な価値観では娯楽産業が栄えるかもしれません。宗教や思想は、その世界の経済に大きな影響を与えるのです。

経済と科学技術の関係

現実世界と同様、ファンタジー世界においても、科学技術の進歩は経済発展に大きな影響を与えます。この点についても、しっかりと設計を行う必要があります。

産業と生産技術の進化

ある世界の産業がどの程度発達しているのかを設定することは重要です。農業社会なのか工業社会なのか、あるいはハイテク産業が主流なのかによって、経済の様相は大きく変わってきます。また、生産技術の進化具合によっても、経済規模やグローバル化の度合いが違ってくるでしょう。

例えば、蒸気機関や電力が発明されていなければ、大規模な工場生産は難しくなります。一方、魔力や新しいエネルギー源を利用できれば、現実を遥かに超える生産力が手に入る可能性もあります。このように、産業技術の設定次第で、その世界の経済がどの程度発展しているのかが決まってくるのです。

交通と通信インフラ

交通と通信インフラの発達度合いも、経済に大きな影響を与えます。馬車や帆船しかない社会と、鉄道や汽船が発達した社会とでは、物流や人の移動が全く異なります。また、電信や電話、インターネットといった通信技術の有無によっても、情報伝達の速さが変わり、それが取引活動に影響を及ぼすでしょう。

さらに、魔法を使った瞬間移動や精神的な意思疎通など、ファンタジーならではの交通・通信手段を設定すれば、現実を遥かに超えた経済活動が描けるはずです。こうした特殊な技術の存在有無は、その世界の経済システムを大きく左右するポイントになります。

医療と軍事の発達度

一見経済とは無関係に見える医療や軍事技術の進歩も、実は重要な意味を持ちます。医療が発達すれば人口が増加し、労働力が確保できるようになります。一方、軍事力の強化は領土の安全保障につながり、経済活動を後押しすることにもなるのです。

また、ファンタジーならではの要素として、治癒魔法や不死の秘薬、破壊魔法や魔法の防御システムなどを設定することも可能です。こうした魔法の発達度合いによって、医療や軍事の力関係が変わり、その世界の経済にも大きな影響が及ぶはずです。

金融の概念をファンタジーに持ち込んだ作品

金融の概念をファンタジーに持ち込んだ作品として、『女騎士、経理になる。』を紹介します。

『女騎士、経理になる。』は、Rootportによる原作に三ツ矢彰が作画を担当した異世界ファンタジー×簿記の漫画作品です。2015年に連載が開始され、2025年6月時点で全8巻が刊行されています。

物語は、魔国で簿記を学んだ女騎士シルヴィアが、簿記の知識を活かして人間国の銀行や商店を救う姿を描いています。彼女は、ダークエルフのルカと共に、簿記会計に精通した仲間たちと共に、簿記の知識を活かして人間国の銀行や商店を救うお話です。

この作品は、簿記や会計の知識を物語に組み込み、読者にわかりやすく伝えることを目指しています。Rootportは、簿記を学ぶことで人生の選択肢が広がると考え、作品を通じて簿記の重要性を伝えています。

『女騎士、経理になる。』は、簿記や会計に興味がある読者や、異世界ファンタジーが好きな読者におすすめの作品です。

まとめ

以上、ファンタジー経済の設計における様々な着眼点を解説してきました。通貨制度から金融機関、取引システム、そして社会制度や科学技術との関係性まで、幅広い要素を検討する必要があります。現実世界の経済システムを参考にしつつ、その世界観に合わせて独自の設計を施すことが重要なのです。

経済は、ファンタジー世界の骨格を形作る大切な要素です。丁寧にその仕組みを作り込むことで、より魅力的で説得力のある世界観を構築できるはずです。作品を書く際は、ぜひ本記事の内容を参考にしていただければと思います。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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