時代性を持つ作品とは?「今」だからこそ作れる作品とは?

私は「時代性を持つ」という言葉をよく使うのですが、「時代性」に関わる話をオタクペンギン社長が書かれていたので、シェアします。

ラノベでもなんでもそうだけど、『今』だからこそ作れる作品っていうのがあって、それが新規性みたいな曖昧な言葉に隠されているものな気がする。

この『今』っていうのは、時代や時間もそうだし、ジャンル内にある流れを汲み取ったもので、『今』を意識することでメッセージ性が生まれると思う。

私はこれを「時代性を持つ」と表現しています。私自身、「リコリス・リコイル」や「機動戦士ガンダム水星の魔女」のことを、時代性を持った作品と表現したことがあります。

では、時代性とは何なのか?気になる方も多いのではないでしょうか。時代性を持つ作品には何が必要なのでしょうか?

 

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時代性とは?

時代性とは「その時代を感じさせるもの」のことです。小説やアニメ、漫画などの物語における時代性とは、それが書かれた時代の空気を反映していることを示します。

ただ、2000年に2000年を舞台にして書いた物語が時代性を持つかというと、これも違います。SFでも時代劇でも、これから説明する要素を持っていれば時代性を持ちます(ただし、時代劇だと理屈上難しいはずです)。

 

時代性のポイントは「口語表現」と「バイオレンス」

作品が時代性を持つ際のポイントは、「口語表現」と「バイオレンス」です。ひとつひとつ説明します。

(口語表現とあるのが、理屈上、時代劇が時代性を持ちづらい理由です)

 

時代性をもつ「口語表現」とは

文学作品が好きで子供の頃から読んでいた作家がやりがちな失敗として、台詞を硬く書きがちなところがあります。

「なぜならば」や「であるからこそ」などのように普段の会話で使わない大袈裟な表現を使ったり、騎士や侍のような話ぶりだったり、「さもありなん」のように古語を使ったり、意味の誤用が定着した言葉の本来の意味にこだわったりします。

もちろん、上記のこだわりは異世界ファンタジー作品だと活きるので、メリットにもなります。しかし、だからこそライトノベル発で時代性を持つ作品が少ないのだと感じます。

時代性を持つために必要な語彙とは、いまここで話されている口語表現です。これは幅広い年齢層や背景を持つ人と話すことで磨かれます。そして、いまここで話されている口語表現を活かせる物語は現代を舞台にした作品です。

 

そして最も重要なポイントは、過去スタンダードだった表現から少し変えることです。

例えばリコリス・リコイルの主人公・錦木千束の口癖に「ちょいちょいちょーい」というものがあります。このセリフ、「ちょっち(葛城ミサト風・19 95年風」や「ちょま(2チャンネルニュース速報VIP風・2000年風)」だったら、ここまで受けてないはずです。私自身もなんか恥ずかしくなって、ブルーレイを買っていないかもしれません。

リコリス・リコイルのストーリーの主軸は徹底した二項対立や、「尊い日常を生きる(悪く言えば)生活保守VS血の雨降らせてでも欺瞞に満ちた安寧をぶち壊し正義を通す」という昔ながらの対立構造で目新しいものではありません。

しかしリコリス・リコイルは口語表現がずば抜けてセンスよく、新しかったです。ここから学べるのは、ストーリーは王道でよい(新規性は無くてよい)、些末な(といって差し支えない)表現を新規性は過去の表現とちょっと変えて新規性を出している点が、時代性を持つために重要ということです。

時代性をもつ「バイオレンス」とは

時代性をもつ作品に重要なもう1点のポイントは「バイオレンス」です。

いまから超重要なことを書きます。バイオレンスの定義は時代によって変わります。

バイオレンスとはもともと「暴力」を意味し、物理的な乱暴・強烈さなどを意味する言葉でした。しかし昨今、ドメスティック・バイオレンスといった時には、「身体的暴力」だけでなく「精神的暴力」「性的暴力」「経済的暴力」「社会的暴力」なども含まれますよね。

一般に言われるパワハラやセクハラといったハラスメントも、広義の意味ではバイオレンスでしょう。ハラスメントとは、相手の嫌がることをして不快感を覚えさせる行為全般を意味しますからね。そして、名前のついていないハラスメントも世の中にはたくさんあり、時代によって移ろいゆくのです。

例えば、恋人が道端で立ち小便していることを思い浮かべてみてください。昭和の頃は当たり前の光景でしたが、令和の今となっては絶対不快ですよね。そもそも軽犯罪ですし……。しかし厳密にいえば軽犯罪である行為を見逃すかどうかは時代によって変わるわけです。

時代性をもつ作品を書きたいのであれば、作品で描こうとしているバイオレンスが多くの人に理解してもらえるものになっているか?をチェックすることが重要です。

 

時代性をもつ作品はバイオレンスの理解が時代とマッチする

時代性をもつ作品は「バイオレンス」の理解が時代とマッチしている・もしくは作品の連載/公開中に時代とマッチしてしまうものです。

例えば、リコリス・リコイルでは、放送中に元首相襲撃事件が発生しました。リコリス・リコイル作中で日本の犯罪を隠蔽している組織DAの行動と、統一教会との関係を隠していた自民党が被る人もいたでしょう。

あの事件がなくてもリコリス・リコイルは大ヒットしたでしょう。しかし私個人はあの事件を通じて、DAの存在をよりリアルに感じ、DAのある日常の中でできるかぎり自由に生きようとする主人公・錦木千束の生き方に共感することができました。また敵方である真島の思想にもリアリティが出たと考えています。思想的にも意味が生まれ、時代を代表する作品になったと感じます。

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水星の魔女のバイオレンスも時代性をもったと感じました。水星の魔女で描かれているバイオレンスは、「母親からの洗脳で、無邪気な人殺しまでできる」というバイオレンスです。これは2022年にあった統一教会の問題が明るみに出なければ、多くの人が共感できなかったバイオレンス表現でしょう。しかし、今の時代ならみんな理解できます。

※後半、母親の情も描かれるようになりましたが、スレッタが受けた傷は……大きな傷なんですよね。

 

なお、2011年を代表するアニメ「魔法少女まどか・マギカ」は「ワルプルギスの夜」の厄災と3.11が被ったことで、厄災のリアリティが強烈な実体感をもって迫ったこと……鹿目まどかの「災害から悲しい人々を救う」という願いが時代性をもち、大ヒットしたと考えています。

 

時代性をもつと時代を超えられない可能性がある

ただし、時代性をもつ作品にも弱点があります。それは、時代性をもつと、時代を超えられない可能性があるということです。

「時代性をもつ作品」は一発芸人のネタと同じで、流行ったことが時代とリンクしてしまい、あとから振り返るとどこか懐かしさを感じてしまう可能性があります。

それどころか、前述の通り、バイオレンスの定義は移ろいやすいものですから、当時はバイオレンスだったけど、いまはバイオレンスじゃないとか、当時は主人公が正しかったけどいまは正しくないといった状況になるかもしれません(例えば、男は女を守るもの、と主人公が語る少年週刊ジャンプ作品はたくさんあったでしょう。現代でこの価値観は正しくなくなってきていますよね)。

 

では、時代を超えて愛されるためにはどうすればよいか? 実はそれって聖書に習うしか無いんですね。

淡々と出来事を描写する、抑揚は最低限、わかりやすく説明的で、のちの解釈に任せるもの……でしょうか。私の、聖書のようと表現された作品「境界を超えろ!」を参考にしていただくのもいいかと思います。

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ただ、正直、現代の小説界隈では売れませんね。

書籍化をしてヒットすることを目指すのであれば、時代性のある作品を目指すのが近道です。口語表現とバイオレンスに着目して、物語をつくってみてくださいね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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