《映画感想》最高の人生の見つけ方 押し付けがましい優しさをどう美しく描くか

2019年11月5日

自分を大切にする喜びを知った彼女たちの輝きが、まわりの人たちの人生も変えていく――

家庭のために生きてきた幸枝と、会社のために生きてきたマ子。全く違う世界に暮らしてきた2人が偶然に出会い、自分たちの唯一の共通点は余命宣告を受けたことだと知る。主婦業と仕事以外に何もやりたいことのない人生の虚しさに気づいた幸枝とマ子は、たまたま手にした12歳の少女の「死ぬまでにやりたいことリスト」を実行するという無謀な旅に出る。“スカイダイビングをする”“ももクロのライブに行く”“好きな人に告白する”──今までの自分なら絶対にやらないことに、自ら殻を破って飛び込む2人。初めて知った生きる喜びに輝く2人は、家族や周囲のものたち、さらには旅先で出会った人々も巻き込み、彼らの人生さえも変えていく──。

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ネタバレあります。

スカイダイビング、エジプト観光、ももクロライブ、誰かに優しくする、逆上がりができるようになる、パパとママにありがとうを言う、好きな人に告白する、宇宙旅行へいく。たった115分の物語ですが、怒涛の展開にワクワクが止まりません。後半は涙も止まりませんでした。

登場人物の心が変わる、それが物語です。

家庭のために生きて、余命宣告を受けても自分のやりたいことが思いつかないような主婦、幸枝。12歳の少女の「死ぬまでにやりたいことリスト」をなぞる中で、彼女自身も自分の気持ちを正直に話せるようになっていく。

問題を抱えた夫、息子。この二人に縛られたくない娘。

一見問題のなさそうな、しかし誰もハッキリものを言えない関係の家族。

誰かが自分の気持ちを正直に言うことから、関係は変わっていくのでしょう。

※私も同じ境遇だったことがあるので、よくわかります。母親だから変えられたわけではないですよ。死と向き合った人間が正直に自分の気持ちを伝える、それが家族の関係性を変えたのです。

幸枝と共に旅に出たマ子もまた、自分の過去と向き合い克服することが出来ました。老人ホームでの出来事です。それには幸枝の押し付けがましい優しさが必要でした。この二人は二人だからこそ完璧になれたバディだったのでしょう。

押し付けがましい優しさを持つキャラクターって、嫌われないように描くのって難しいです。純粋に自分のことを気遣われると、なんだか鬱陶しく感じませんか? 天の邪鬼ですけどね。

そんな優しい人物を、家族に尽くしてきた母親という登場人物で表現することで嫌悪感を消したのは、素晴らしいアイデアだと思います。

そして最後。

亡くなったと思っていた12歳の少女と再会したシーンですよね。

ここで少女の言う「私、死なないので」のまばゆさ。

切なさもあるともうのですよ。

視聴者の思いとしては、「死ぬまでにやりたいことリスト」を届けてくれたことに「ありがとう」と言ってくれるのかな? そして幸枝は、「あなたのおかげで私は最高の人生の見つけ方を知ったわ」とか言って、綺麗に締めるのかなと想像しましたから。

けれども彼女は「私、死なないので」と言って「死ぬまでにやりたいことリスト」の受け取りを拒否します。幸枝の物語が完結することを、少女は拒否するのですね。

これが最高に切なかったです。

そして幸枝とマ子の人生を完結させたのは、幸枝の夫であり、マ子の秘書でありました。彼女たちの人生は孤独に終わるわけじゃなかった。思いを引き継ぎ、願い、叶えてくれる人たちがいた。それが最高の人生であり、この物語の伝えたかったことなのではないかと感じました。