『創作の為に聖書を読め』の真の目的

 『創作の為に聖書を読め』という言説が、小説家クラスタで話題になっていました。

 この言説自体は30年ほど前、新世紀エヴァンゲリオンが登場した頃から言われていることですが、現代でもこの言説は有効なのでしょうか。本エントリーでは『創作の為に聖書を読め』の真の目的について考えてみます。

Unlimited 読み放題 - 200万冊以上の本が読み放題 2ヶ月99円!

境界を超えろ!シリーズが特別キャンペーン中!5冊セット495円!

『創作の為に聖書を読め』の真の目的

 最初に『創作の為に聖書を読め』と言い出した人の意図とは異なるかもしれませんが、私はこの言説の真の目的を下記のように考えています。

『物語に付帯情報を付け加え、展開に理由を与える』

 例えば新世紀エヴァンゲリオンにおいて、ゼーレの目的は詳しく説明されていません(長い説明ゼリフなどはありません)。ですが、ゼーレの目的は多くの視聴者に推測されました。

 理由はエヴァンゲリオン全体に聖書をモチーフにしたキーワードが散りばめられていること。中でもオープニング映像に生命の樹(セフィロトの樹)が使われていることが大きいと感じます。

 旧約聖書における「生命の樹」はエデンの園の中央に植えられた木で、生命の樹の実を食べると、神に等しき永遠の命を得るとされるものです。エヴァンゲリオンのゼーレの目的はまさに永遠の命でした。

・ヒトは知恵の実(科学)を手にいれたが、それは罪であり、人類は楽園を追われた。

・ヒトが生命の木に近づく前に、神の使い(使徒)が現れて人類の邪魔をする。

・ゼーレの目的は知恵の実と生命の実を合わせれば神と同等になること。

created by Rinker
¥720 (2024/04/26 05:26:25時点 Amazon調べ-詳細)

 エヴァンゲリオン本編で上記は断片的にしか語られていませんが、聖書と対応させて理解することで、視聴者は物語を理解することができました。聖書にそっているから、次の展開はこうくるはずだと考察することを楽しむことができました。聖書によって、展開に理由が与えられているからです。

 制作側としても、聖書というバックグラウンドがあるので、本編では情報を断片的に出すことで「謎」によって視聴者をひきつけながら、多少突拍子のない展開でも「聖書にそっているから」と根拠をもってすすめることができました。これも聖書によって、展開に理由が与えられているからです。

 創作者が『物語に付帯情報を付け加え、展開に理由を与える』ことができたのも、視聴者が展開を考察できたのも、聖書という共通認識があるためです。この共通認識を利用するため『創作の為に聖書を読め』という言説があります。

※作者が聖書を利用し、利用していることを明示すれば、視聴者は勝手に聖書と照らし合わせてくれます。まずは作者が聖書を読むことからはじまります。だから作家は『創作の為に聖書を読め』ということです。

なぜ聖書なのか

 「物語に付帯情報を付け加え、展開に理由を与える」ために聖書を利用すると良い、と書きました。

 ではなぜ、聖書なのでしょうか。理由は聖書が世界で最も多く読まれている本であり、聖書に描かれた「神話」という物語は人類史に大きな影響を与え続けているということです。

 長く語り継がれてきた理由は、人類が普遍的に好む物語だからでしょう。

 物語の展開としても、聖書を知っておくことが役に立ちます。物語にワンポイントを加えるためのキーワードとしても使えます(生命の樹とか、ガフの部屋とか)。

 しかしながらポイントは共通認識を利用する点である、ことを覚えておきたいです。

共通認識の効果

 共通認識をつくることで、ただの出来事に別の意味を付与させることができます。

 例えば、私の地元のAとBがいたとして「AがBに告白してフラれた」という物語を語るとしましょう。正直、君たち誰ですか?って感じで誰も興味を持たないですよね?「AがBに告白してフラれた」という事実以外の考察もできません。

 しかしこれを「イエスがマリアに告白してフラれた」という物語にすればどうでしょう。

 聖書ですとイエスの母がマリアなので、イエスがフラレたのは母親と恋愛しようとしたためだ…などと考察ができます。フラれた理由の根拠付けにもなっています。

 作者と読者で共通認識をつくることで、読者は別の愉しみ方ができるということですね。
※つまり作品を2倍楽しんでもらえるということ!そう考えるとすごい効果です!

FGOでも使われている手法

 作者と読者で共通認識をつくることで、作品をより愉しんでもらうことができます。

 しかし共通認識をつくる方法は、聖書だけではありません。むしろ現代においては聖書よりもメジャーな方法があります。

 それは過去の偉人を使うということです。FGOでも使われている手法ですね。例えば宮本武蔵のように過去の偉人をキャラクターとして登場させることで、作中で特に描かれていなくても佐々木小次郎と因縁があるのだろうとか、二刀流をつかうのだろうと読者に想像させることができます。

 実際に佐々木小次郎と因縁をもたせてもいいですし、佐々木小次郎と共闘するような展開にすると読者の予想を裏切ることができて面白いですね。

 いまは一生で観きれないほどのコンテンツが溢れている時代です。読者全員が共通認識を持つのは難しい時代になってきています。過去の偉人というのは、誰もが教科書で教わるので、共通認識として強いんですね。聖書よりも断然強い。ですので私は、過去の偉人をサーヴァントとして登場させたFGOは革命だと思います。

※Web小説でファンタジー作品の世界観が、中世ヨーロッパ風の世界観(ナーロッパ)である点も、共通認識を利用した方法です。しかしドラクエやFF的なゲームをやってこなかった世代がメインになるとどうなるのか……とても気になります。

まとめ――共通認識を利用する

『創作の為に聖書を読め』という言説の真の目的について書いてみました。

 結論としては、目的は共通認識を利用することだと感じます。

 そして、かつて共通認識を利用するのに有効だったのが聖書を読むこと。なぜなら多くの人が聖書を読んでいたから、ということを書きました。そして現代においては聖書よりも過去の偉人のほうが、履修率としては高いんじゃないかと紹介しました。

 作家の皆さんはぜひ、読者と共通認識をつくるためのアイデアを考えてみてくださいね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
このホームページは創作者支援サイトです。
創作者の方向けの記事を発信しています。



下記ボタンを押して頂けたら
モチベーションが高まります。
応援よろしくお願いします!
にほんブログ村 小説ブログ ライトノベル(小説)へ腰ボロSEのライトノベル奮闘記 - にほんブログ村
ライトノベルランキング