「コツだけ教えて」で上手くなれない理由|読まない創作者が見落としているもの

2020年9月10日

こんにちは。腰ボロSEです。

「どうすればポイントが取れますか?」「書籍化のコツを教えてください」。Web小説界隈で、こうした質問を見かけたことはありませんか。

書籍化作家のとびらのさんが、かつてこう書いていました。「聞いてくる人の8割以上が、マジ人のを読んでない。言っても読まない。わたしが読んで何を得たのかだけ聞き出そうとしてくる」と。

これを読んだとき、私は胸が痛みました。なぜなら、かつての私がまさに「読まない側」の人間だったからです。この記事では、読まなかった人間が読むようになって気づいたことを、正直に書きます。


創作ノウハウ200超|小説の書き方ガイド

「コツだけ教えて」の人に共通する3つの特徴

かつての自分を振り返ると、読まない側の人間にはいくつかの共通パターンがありました。

1. 読む時間がもったいないと感じる

1秒1秒の大切さを知っている、とも言えます。しかし裏を返せば、「生産性第一」主義に陥っている状態です。

ライトノベル1冊を読むのに約2時間。シリーズものなら20巻で40時間。「40時間あったらビジネス書を10冊読めるのに」と考えてしまう。私もまったく同じでした。

しかし、ここに落とし穴があります。ビジネス書を10冊読んでも「面白い物語の書き方」は身につきません。ITエンジニアとして15年、技術書は山ほど読んできましたが、物語を書く力は1ミリも上がりませんでした。

2. 要領がいい(と思っている)

このタイプの人間は、コツさえ教えてもらえれば実践できる自信があります。実際、ある程度はできてしまう。小学校のテストで勉強しなくても高得点を取れた、そういう成功体験を持っていることが多いです。

しかし要領のよさは、その領域の基礎が身についていないと機能しません。ボウリングでもそうでした。最初は手先の器用さで高スコアを出せましたが、練習を重ねた人に半年後には追い抜かれていました。

『SLAM DUNK』の桜木花道も、身体能力だけで最初はある程度やれていました。しかし本当に強くなったのは、安西先生のもとで2万本のシュート練習をこなした後です。要領のよさだけでは、基礎を積み上げた人間には勝てない。

3. 聞いたことを忘れやすい

要領がいい人は、相手の話を瞬時に理解して実行できます。しかし、それは自分の言葉で咀嚼した理解ではないので、すぐに抜け落ちます。

教えてもらったコツを実践して、一時的に結果が出る。しかし時間が経つと忘れて、また別の人にコツを聞きに行く。永遠にこのループが続きます。

特徴強み弱み
時間を大切にする効率が高いインプットを省略しがち
要領がいい短期的に成果を出せる基礎が身につかない
理解が速い即座に実行できる習得が浅く、忘れやすい

なぜ「読む」ことでしか得られないものがあるのか

ここからが本題です。なぜコツを聞くだけではダメで、自分で読まなければならないのか。

答えはシンプルです。コツとは、読んだ人が自分のフィルターを通して抽出したものだからです。

たとえば、ある作家が「テンポが大事」と語ったとします。しかし「テンポ」とは何か。その作家が読んできた作品、経験してきた失敗、好みの文体——そのすべてが「テンポ」という一語に圧縮されています。あなたと同じバックグラウンドを持つ人間は一人もいません。だから、同じコツを聞いても、得られるものが違うのです。

そもそもプロの作家であっても、自分のノウハウを100%言語化できるわけではありません。暗黙知というやつです。IT業界では「属人化した知識」と呼ばれるもので、ベテランエンジニアの勘はドキュメントに書き切れないのと同じです。コツを聞いて回ることは、近道しているつもりで実は遠回りになりかねません。

では、読むとは具体的に何を得る行為なのか。

読むことで得られる3つの「筋力」

1. 構造を見る目——物語がなぜこのタイミングで転換するのか。なぜこのキャラがここで退場するのか。読むことで「物語の骨格」を感じ取る力が鍛えられます

2. 引き出しの量——『鬼滅の刃』の呼吸法、『ジョジョの奇妙な冒険』のスタンド、『ワンピース』の悪魔の実。面白い作品には独自のシステムがあります。それらを100個知っている人と10個しか知らない人では、発想の幅がまったく違います

3. 自分の好みの解像度——たくさん読んで初めて「自分は何が好きで、何が嫌いか」がわかります。そしてそれが、「自分にしか書けない物語」の輪郭になるのです


コツコツ読む人は、気づいたら遠くにいる

正直に告白します。私がこのブログを書き始めた頃は、創作論の記事ばかり読んで、肝心の小説をほとんど読んでいませんでした。

しかし、ブログで映画分析や作品構造の記事を書くようになってから、インプットなしにはアウトプットが枯れることを痛感しました。「分析する対象がない」のです。

それから少しずつ読むようになりました。最初は月に1冊。それが2冊、3冊と増えていった。すると、自分の書く文章が明らかに変わりました。語彙が増えたとか、技術が上がったとかではなく——何を書きたいかが明確になったのです。

要領のいい人は、瞬発力では誰にも負けません。しかし、コツコツ読んで、コツコツ書いている人は、ある日気づくともう追いつけない場所にいます。

10年前にボウリングで負けたあの感覚を、私は創作でも味わいました。そしてようやく理解したのです。近道はなかったのだと。

社会人になって痛感するのは、「コツコツ積み重ねるのが結局いちばん強い」という単純な事実です。生産性を求めるあまりインプットを省略すると、アウトプットの引き出しがどんどん空になっていきます。物語を書くという行為は、自分の中にあるものを出す作業です。中に何も入れていなければ、出るものがありません。


まとめ

「コツだけ教えて」は、近道しているつもりの遠回りです。自分で読んで、自分のフィルターを通して理解する——その手間を省いた瞬間、成長は止まります。

とはいえ、「何から読めばいいかわからない」という気持ちもよくわかります。それなら、今期のアニメの原作を1冊読んでみるところから始めてみてはいかがでしょうか。

どうですか、書ける気がしてきましたか? もし悩むことがあったら、このブログに戻ってきてください。同じように初心者だった私が、基礎から応用まで気づいたことを書き綴っています。

さあ、今日も物語を書きましょう。筆は折らない。あなたの傑作を待っています。

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腰ボロ作家について
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