《小説感想》本好きの下剋上 から学ぶ小説の書き方
本が好きで、司書資格を取り、大学図書館への就職が決まっていたのに、大学卒業直後に死んでしまった麗乃。転生したのは、識字率が低くて本が少ない世界の兵士の娘。いくら読みたくても周りに本なんてあるはずない。本がないならどうする? 作ってしまえばいいじゃない。目指すは図書館司書! 本に囲まれて生きるため、本を作るところから始めよう。
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本好きの下剋上をオーディオブックで聞いています。井口裕香さんの声が心地よいですね。第1巻を読み終えましたので、本好きの下剋上 第1巻から、物語づくりのヒント3点を抽出しました。
汚れの活用が上手い
以前、人が興味を持たずにいられない、10のキーワードという記事を書きました。
【読者を惹きつける】人が興味を持たずにはいられない10のキーワード
このなかのネガティブキーワード「けがれ」をフル活用していた作品でした。
髪の毛が洗えない、トイレがおまる、お風呂に入らない……。読者としても嫌だなという課題が示され、主人公が奔走し、それを解決することでスカッとさせる展開づくり(解決できず次の課題となるケースも多かったが)。これが読者を飽きさせなかったです。
本を作るという大きな目標と、それに向けた小さな起承転結
第1巻の展開をまとめると下記となります。
大きな目標が最初に提示されてたので、その後の小さな起承転結が、大目標にどうつながっていくんだろうと興味をもって見られました。
・本をつくるという大きな目標が最初に示される。
・その後、病弱で虚弱体質という問題が提示される。
・病弱を打開するために、衛生状態を高める起承転結を繰り返す。
・本を作るための起承転結を繰り返す(パピルスをつくったり木簡をつくったり)。
・次の展開に繋がりそうな登場人物とつなげていく(門番のオットー、商人ベンノ)。
Web小説には、世界観と目標は序盤で示す という常識がありますが、本好きの下剋上はさすが、わかりやすく世界観と目標が序盤で示されていました。
主人公はわがままなぐらいが丁度いい
主人公は、言い方は悪いが、本を手に入れるためならまわりを利用することを厭わないキャラクターとして描かれています。中身は22歳のはずですが、マインの見た目どおり5歳とか6歳とか、それくらいの我儘なキャラクターとして描かれているようです。
正直、主張が強すぎて嫌いなキャラクターですが(笑)
マインは幼女で、まわりの人間を動かしながら目標達成していかなければならないキャラクターですから、おとなしかったら何も果たせません。何かを果たしたいのなら、立場(マインの場合は子どもの立場とか病弱とかね)を最大限利用して我儘にふるまわなくちゃ、というメッセージも感じられます。
この視点は、あまり無かった視点だから勉強になりました。
とはいえ、自己中心的なだけではだめで、汚れをつかって読者の共感を得たり、病弱ということで心配させたりと、あわせ技で補完しなければならないのだと思います。「うざい」だけのキャラクターにならないように注意すれば、我儘なキャラクターは物語を牽引してくれる、魅力的なキャラクターになりますね。
まとめ
本好きの下剋上 第1巻をよんで、物語づくりのヒント3点を抽出しました。
それにしても有志まとめWikiができるほどの人気です。
https://w.atwiki.jp/booklove/pages/1.html
作者さんはオーディオブックのあとがきで、Web小説なので長さを気にせず、書きたいことを詰め込んだとおっしゃっていました。
時間をかけてじっくりと、描写を細やかに。世界を作られています。Web小説を書く上では、急がないこともひとつのポイントなのかもしれませんね。
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