「無駄描写、無駄設定、無駄台詞」の3無駄カットの重要性

2020年12月29日

 書籍化作業で一番良かったことは、「無駄描写、無駄設定、無駄台詞」を徹底的にカットしていくことを学んだこと、というツイートが目に留まりました。

 私も、「アイン・スタンスラインの波瀾なる軌跡と彼が起こした奇跡について」を書籍化する際、文章の圧縮作業をさせていただきました。

アイン・スタンスラインの波瀾なる軌跡と彼が起こした奇跡について〜コロナウイルス禍だからこそ出来た特別な本〜

 もともとこの作品は、初稿120,004文字でした。不足していた描写の追記を繰り返し、一次完成稿では144,616文字+外伝28,006字の172,622文字。これを約1割減らして、158,214文字で最終稿としました。

 

減らすために「無駄描写、無駄設定、無駄台詞」を意識した

 この作品を最後に1割減らすのは、大変な作業でした。私は本作をつくるにあたって、最高のリーダーを描くために必要なイベントを、プロットの時点で練りに練り、何度も並べ替えて、この順序でイベントを起こさなければ、何かが足りないという流れをつくりました。

 そして初稿から10年をかけて、膨れ上がる文字数を削ぎ落とし、不足した部分を継ぎ足していきました。できあがった原稿は、自分的には完璧なもの。それ以上減らすとなれば、イベントごと捨てていくしかありません。

 初稿執筆中は、当然、無駄なエピソードなどひとつも無いつもりで書いていますから、たちが悪い。どこを削ろうと悩み……「無駄描写、無駄設定、無駄台詞」はないか考え、今まで自分が大事だと思っていた長文台詞をバッサリ削りました。

 私は、関係者全員の顔を立てながら、自分の所属している組織を称賛しながら、過不足がまったくなく、目的と目標を理路整然と長台詞を語る様子に、知性を感じるのですが、普通の人はそう感じないのだと教えてもらったからです。

 短い台詞で、伝えたいことを端的に伝えること。それが表現では大事なのだと知りました。

 「血筋じゃない、生き様だ」という金言が浮かんだのは、このときです。「無駄描写、無駄設定、無駄台詞」を削ろうと頭を悩ませなければ、あの長台詞は残っており、金言が生まれることもなかったでしょう。

 

初稿は「無駄描写、無駄設定、無駄台詞」の山でいい

 私がこの経験から感じたのは、初稿をガチガチに作り込む必要はないということです。

 10数年もかけて、自分的に過不足のまったくない完璧な原稿をつくりあげてしまったら、それを徹底的にカットすることを躊躇してしまいます。

 愛着はもちろん持つべきですが、過度な愛は不要だということです。それこそ、自分ひとりで完璧な文章なんて書けるはずがないのですから、駄文でも構わないので20万文字、25万文字と書いてしまって、完結させてーー

 その後で「無駄描写、無駄設定、無駄台詞」を徹底的にカットするのが断然早いでしょう。

 

『直す前提でやると結果早い』理論

 少し前、福地翼@fukuchi_tsubasaさんのツイートが話題になっていました。

 福地翼さんの気付きは、昔は余計なところを掘らないように時間をかけて慎重にネームを書いてきましたが、今はとりあえず大まかに一気に掘って彫り過ぎたらパテで固めればいいという考え方でした。

 私は、普段の仕事でこれが意識できています。というより、100%で出す必要ないから、60%の出来で早く提出しようと指導する立場です。それなのに趣味の小説ではそれができませんでした。とにかく手を動かして、未完成でも出せばいいのに……。それができないのが何故か考えました。

 一番の理由は、創作物を自分の分身と捉えているからでしょう。

 創り上げたものは自分の魂そのもので、否定しないでほしい……全て受け止めてほしい……「この人、こんな下手な文章しか書けないの?」と笑わないでほしい……そう考えているからでしょう。

 けれど、一度書籍化作業をするとわかります。書籍も、自分が普段の仕事で出している成果物と、似ているのだと。

 本を読んでくれる読者がいて、その人の望むことを叶えて上げる必要があること。読者に伝わらなきゃ意味がないこと。そして読者は、当たり前だけど作者よりも世界観の理解が格段に遅いこと。段取りを組んで説明しないと伝わらないこと。

 

 ギュッと一冊に圧縮してお届けしたつもりでも、一冊で伝わることなんて、ほんの一つや二つかもしれません。一度書いたことは二度と書かないなんて言ってないで、何度も同じテーマを繰り返し書いたっていいや、と感じることも出来ました。

 つまりは『直す前提でやると結果早い』ということ。
 私も垂れ流しでいいので、自分の発想を文章にすることから始めて……駄文含みの20万文字を書いてみて、それから直す方向に、かじを切りたいと思います。

 2021年、3月から連載チャレンジ。やったるかー! 乞うご期待!

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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