【短編の書き方】エンジンとシャフトで物語のテーマを伝える

2020年7月29日

 小説を書きたいけど、10万文字の長編をいっぺんに書くのは大変だし……完結できる自信がない。そんなあなたは、短編を書いてみてはどうでしょうか。

 昨今は投稿サイトで短編のコンテストを目にすることも多くなりました。時間がないので長編は読めないけど、短編なら読みたいという社会人も多いはず。

 それに、10万文字の長編だって、1万文字の短編を10本書くと考えることもできるはず。長編は短編の積み重ね。短編を書く能力は長編を書く際にも活用できます。

 さあ、あなたも短編を書いてみませんか?

 本エントリーでは、短編を書いてテーマを伝えることを目指し、書き方を紹介します。

描きたいものは失わせる

 せっかく短編を書くのですから、読んだ人の心に残る作品を書きたいですね。実は読んだ人の心に残る作品を書く方法があります。それは、物語で最も伝えたいテーマを、主人公から失わせることです。

 人は欠けている部分があると、その部分が気になります。例えば、Cだと右側の欠けが気になるのに、○だと気にならないというように。

 物語を読む読者も同じです。主人公にたったひとつ欠けているものがあると、読者は気になって仕方なくなるのです。

 失わせるものは、「友情」「恋人」「約束」「誇り」「祖国」……なんでも構いません。読者が失いたくないものを、失わせると決めましょう。

エンジンとシャフト

 失わせるもの(ロスト)を決めたら、これを「旅を始めるエンジン(動機づけ)」として使うか、「転がりだした物語の中心にあるシャフト(関係したいもの)」として使うかを考えましょう。

 ロストをエンジンにする。
 ロストをシャフトにする。

 これらは似て非なるものです。

 「旅を始めるエンジン(動機づけ)」

・例えば最初に「祖国」を奪ったとします。そうすると主人公は、「祖国を取り戻したくなるはず」「祖国を取り戻すために誰かを頼るはず」。というふうに、「主人公を動かす」ことができます。

 よく考えてみると、追放系のWeb小説も、主人公が仲間を失ったところから物語が始まります。それによって、主人公が「失ったもの」をどう取り返すかが気になり、読み進めてしまうのでしょう。

 エンジンとして使う場合の注意点は、最後まで同じロストを追い続けることです。

 特に短編では、「祖国」を取り戻す話だったのが、途中で「恋人」を取り戻す話に変わると、「祖国」のくだりは何だったの!?と落胆されます。失ったもの(ロスト)をエンジンとして使う場合は、最後までロストを追い続けること。それだと予想できるようなエンディングにしかならない……と心配の方は、下記エントリーも参考になるかと。

物語に二項対立を組み込むことで4つのエンディングを想定する

 ロストを手に入るか手に入らないかは作者の自由ですが、エンジンは固定するのが大事です。

「転がりだした物語の中心にあるシャフト(関係したいもの)」

・失わせるもの(ロスト)をカップにする場合の例を見ていきます。

 「転がりだした物語の中心にあるシャフト(関係したいもの)」として使う場合に大事なのは、ロストをエンジン(動機づけ)として使わないことです。

 「祖国」をシャフトとします。

 この場合、主人公は「祖国」を失って(奪われて)行動するわけではありません。例えば「祖国」から遠いところで、一人暮らしをしているようなシーンに始まり、「祖国」ではこうだったな、「祖国」ではこういうことが嫌だったな、というように、「祖国にいないことによる、主人公と祖国の関係性」を描きます。

 物語の中で、大嫌いだった「祖国」が、急に輝いて見えてきたり、帰りたくなったり、でも帰らなかったり……こうした関係性の変化により、主人公の心を揺さぶっていきます。

 結果として、読者も主人公と一緒に心を揺さぶられ、読み終わった時には、読者も自分の「祖国(故郷)」に思いを馳せているかもしれません。

まとめ

 読者の心に残る短編を書きたい人は、下記の2ステップを考えてみてください

①主人公から失わせるもの(ロスト)を考える

②ロストを「旅を始めるエンジン(動機づけ)」として使う(ロストを求めて主人公が行動する)、又はロストを「転がりだした物語の中心にあるシャフト(関係したいもの)」として使う(主人公とロストの関係性を描く)。

 これによって物語の骨格が決まりますから、あとはロストがぶれないように注意しながら、あなたらしい文章で味付けをしていくだけです。ぜひ試してみてくださいね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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