小説の書き方は2タイプ|トップダウンとボトムアップ、あなたはどっち?
物語を書きたい。けれど、そもそもどうやって「書き始めれば」いいのかわからない。
テーマやプレミスは決まった。ネタ帳にアイデアも溜まっている。ストーリー構成の型も学んだ。――なのに、最初の一文字が出てこない。
その原因は「自分に合った作り方」を選んでいないからかもしれません。
物語の作り方には大きく分けて2つのアプローチがあります。「トップダウン型」と「ボトムアップ型」です。どちらが正解ということはありません。自分の思考パターンに合ったほうを選ぶ(あるいは混ぜる)ことで、執筆の歯車がぐっと噛み合います。
トップダウン型――プロットを先に組む
トップダウン型は、オープニングからエンディングまでストーリーの筋(プロット)を先に決めてから書く方法です。英語圏では「プロッター(Plotter)」とも呼ばれます。
トップダウン型の進め方
1. ゴールを決める ── 物語の結末、達成すべきテーマを明確にする
2. 逆算する ── そのゴールに到達するために必要なイベントを洗い出す
3. 並べる ── イベントを起承転結や三幕構成に沿って配置する
4. 執筆する ── プロットに沿って一章ずつ書いていく
キーワードは「そのためにどんな展開が必要?(How)」と「なぜ、その展開は起こった?(Why)」です。
トップダウン型のメリットと注意点
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| ゴールが明確なので迷走しにくい | プロット通りに書くと「予定調和」になりがち |
| 伏線を計画的に張れる | 途中でキャラが動きたがっても軌道修正しづらい |
| 長編でも構造が崩れにくい | プロット作成に時間がかかる |
実例:『境界を超えろ!』1〜3巻
筆者の『境界を超えろ!』第1〜3巻は、トップダウン型で書きました。
「世界中から愛される最高の王を描く」というゴールを先に設定し、そのためにはどんなエピソードが必要かを逆算しています。
• 最高の王には最高の師匠が必要(ヴォルター・K・グイン)
• 最高の参謀が必要(ライロック・マディン)
• 最高の伴侶が必要(リングリット・ラインカーネーション)
このように、テーマ(=ゴール)が明確なら、そこに至るまでのピースを埋めるだけで本1冊分の分量になります。
ボトムアップ型――キャラクターを先に動かす
ボトムアップ型は、キャラクターの設定を先に詰め、冒頭のシチュエーションだけ決めて書き始める方法です。英語圏では「パンツァー(Pantser)」と呼ばれます。"Fly by the seat of your pants"(ぶっつけ本番でやる)が語源です。
ボトムアップ型の進め方
1. キャラクターを作り込む ── 性格・目的・弱点・口癖まで詳細に設定する
2. 対立関係を設定する ── 主人公の目的を邪魔するキャラクターを置く
3. 冒頭だけ決める ── 最初のシチュエーションを用意する
4. 衝突させる ── 「このキャラならどう動く?」を自問しながら書く
キーワードは「目的は?(To be)」「そのために何をする?(What to do)」「どうなる?(What will happen)」です。
ボトムアップ型のメリットと注意点
| メリット | 注意点 |
|---|---|
| キャラクターが生き生きと動く | ストーリーが迷走するリスクがある |
| 想定外の展開が生まれて面白い | 伏線の回収が場当たり的になりやすい |
| 書き始めのハードルが低い | 着地点が見えず「エタる」危険がある |
実例:『ディバイド・エックス』
筆者は『ディバイド・エックス』でボトムアップ型を使いました。
まず5人のキャラクターを設定します。
• クラリス・レイヤー(優柔不断な美しい偶像)── 主人公
• タイナ・ミノウ(男尊女卑の陰陽術士)── 否定者
• ファリス・レイリーン(ハキハキ喋る社長)── 協力者
• エンドラル・パルス(英雄アインの影を追う青年)── 変化する者
• ユン・ウェイ(元アイドルの親友)── 支持者
クラリスに「ルクシオンを蘇らせたい」という目的を与え、タイナを邪魔する存在として配置したら、あとは「タイナならどう妨害するか?」「クラリスならどう乗り越えるか?」と自問するだけで物語が動き出しました。
最終的にクラリスもタイナも変化・成長して着地できたので、ボトムアップ型でも美しく完結できる好例になったと思います。
第3のアプローチ――ハイブリッド型
実は多くの作家が、トップダウンとボトムアップを混ぜて使っています。英語圏では「プランツァー(Plantser)」と呼ばれることもあります。
ハイブリッド型のパターン例
| パターン | やり方 |
|---|---|
| 骨組み+自由演技 | 大まかなプロット(3〜5行)だけ決めて、シーンごとはキャラに任せる |
| 序盤ボトムアップ→中盤トップダウン | キャラを走らせて方向性が見えたら、後半のプロットを組む |
| 章単位で切り替え | 主人公パートはプロットで管理し、サブキャラパートはボトムアップで書く |
2025年以降、AIとの壁打ちが普及したことで、ハイブリッド型はさらに身近になりました。
たとえばChatGPTやClaudeに「こんなキャラがこの状況に放り込まれたらどうなる?」と聞けば、ボトムアップ的な展開案が瞬時に10パターン返ってきます。その中からプロット的に整合性のあるルートを選べば、自然とハイブリッド型の執筆になります。
自分のタイプを見極める3つの質問
どのアプローチが合うか迷ったら、以下の質問で自分の傾向を探ってみてください。
| 質問 | トップダウン寄り | ボトムアップ寄り |
|---|---|---|
| 旅行の計画は? | 事前にスケジュールを組む | 行き先だけ決めてあとは現地で |
| ゲームの遊び方は? | 攻略情報を調べてから進める | まず触って試行錯誤する |
| 作文の書き方は? | 構成メモを作ってから書く | とりあえず書いてから並べ替える |
3つともトップダウン寄りなら、まずプロットを組むところから始めましょう。ボトムアップ寄りなら、キャラクター設定シートを書くのが先です。混在しているなら――おめでとうございます。ハイブリッド型の素質があります。
トップダウン型の参考フロー
ゴール(テーマ・結末)
↓ そのためにどんな展開が必要?(How)
クライマックス
↓ なぜその展開に至った?(Why)
中盤のイベント群
↓ 物語を始動させるきっかけは?
オープニング

ボトムアップ型の参考フロー
キャラクター設定(目的・性格・弱点)
↓ 目的は?(To be)
冒頭のシチュエーション
↓ そのために何をする?(What to do)
対立と衝突
↓ どうなる?(What will happen)
変化と結末

まとめ
物語の作り方には2つのアプローチがあります。
• トップダウン型(プロッター) ── プロットを先に組み、計画的に書く
• ボトムアップ型(パンツァー) ── キャラを作り込み、冒頭から走らせる
• ハイブリッド型(プランツァー) ── 両方を混ぜる。AI壁打ちとも相性◎
どれが正解ということはありません。自分の思考パターンに合ったアプローチで、まず1作書いてみてください。書き上がったら、次の作品では別のアプローチを試してみるのも面白い実験になります。
構成の組み方をもっと深く知りたい方は「ストーリー構成の基本」へ、テーマの決め方が気になる方は「テーマとは何か」へどうぞ。








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