物語の雛形3パターン|「何が変わるか」でストーリーが生まれる

2019年6月25日

小説を書きたい。でもアイデアが出ない——。

この悩みを解決する、シンプルな原則があります。

物語とは「何かが変化するお話」です。

変化がない文章は「報告書」です。変化があって初めて「物語」になる。では、何が変化すればいいのか? 大きく分けて3パターンあります。

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物語=変化、という大前提

まず、この大前提を叩き込んでください。

「今日は6時に起きて、朝ごはんを食べて、電車に乗って、仕事をして、帰って寝ました」——これは日記であり報告書であり、物語ではありません。

ここに変化が入ると物語になります。

「今日は6時に起きて朝ごはんを食べ、電車に乗った。しかし乗り過ごして知らない駅に着いてしまった。そこで不思議な喫茶店を見つけ、コーヒーを飲んだら人生が変わった

変化の種類は3つ。気持ち(内面)が変わる役割(立場)が変わる状況(環境)が変わる

Case 1:気持ちが変わる(旅に出て、帰ってくる)

主人公が旅に出て、帰ってきたとき、同じ場所なのに見える景色が違う

これは最も古典的で普遍的な物語の型です。英雄の旅(キャンベル)の構造もこのパターンに基づいています。

特徴

• 主人公の外的な状況は変わらなくてもいい。内面の変化が物語を成立させる

• 始まりと終わりが同じ場所であることで、変化が明確になる

具体例

るろうに剣心(京都編):
緋村剣心は京都に行き、瀬田宗次郎や志々雄真実と戦い、東京に帰ってくる。帰った場所は同じ神谷道場。でも剣心の中で「逆刃刀に込めた想い」が不動のものになっている。場所は同じ、気持ちが変わっている。

アイデアへの応用

「主人公が X をしに行って戻ってきたとき、Y について考えが変わっている」

Xに冒険・旅行・転校・入院・留学を入れ、Yに友情・正義・家族・夢を入れれば、それだけでストーリーの骨格ができます。

Case 2:役割が変わる(過去を捨てて、新しい場所で生まれ変わる)

主人公のテーマに対する振る舞いが物語を通じて変わるパターン。

Case 1が「同じ場所に戻る」のに対し、Case 2は元の場所には戻らない。主人公は生まれ変わる。

特徴

• 物語の前半と後半で、主人公の「社会的な役割」が変化する

• テーマと主人公の関係が反転する

具体例

保育ものの定番:
子供が嫌いだった先生が、ある子供との出会いを通じて「子供好きの保育士」になる。テーマは「子供との関わり」で、そのテーマに対する主人公の振る舞いが180度変わる

変化を図式化すると——

フェーズテーマへの態度
序盤子供嫌い。保育の仕事を嫌々やっている
転機ある子供の事情を知り、心が揺れる
後半子供を守るために全力を尽くす
結末新しい保育園で、自ら望んで働き始める

アイデアへの応用

「主人公は最初 A のことが嫌い(苦手)だが、B という出来事を通じて、最後は A を愛するようになる」

Aに料理・音楽・戦い・魔法を入れ、Bに師匠との出会い・大切な人の死・ライバルとの対決を入れれば、物語が生まれます。

Case 3:状況が変わる(目覚めて、なぜここにいるのかを思い出す)

物語の冒頭では既に主人公が「変化後」の状態にいて、そこに至った経緯を遡って描くパターン。

Case 1、2は「変化していく過程」を描きますが、Case 3は「変化した結果」から始まるのが特徴です。

特徴

• 冒頭で読者の興味を引きやすい(「なぜこの人はこんな場所にいるのか?」)

• 過去編が物語の核になる

• 最強キャラの過去を描く構成と相性が良い

具体例

夏目漱石『こころ』:
先生はなぜあんなに厭世的なのか? その理由が「先生の遺書」で明かされる。物語は「変化した後の先生」から始まり、過去に遡って「なぜこうなったか」を描く。

バーフバリ:
「なぜこの赤ん坊は川を流されてきたのか?」から始まり、親世代の壮大な王国紛争が描かれる。

アイデアへの応用

「主人公は物語の冒頭で Y という状況にいる。なぜそうなったのか? 遡ると X という出来事があった」

Yに「世界最強の剣士」「記憶喪失で知らない街にいる」「刑務所に入っている」を入れ、Xに「恩師との約束」「禁忌の魔法の代償」「親友をかばった冤罪」を入れれば、物語の核ができます。

「変化しない主人公」という選択肢

2020年代に入って注目されているのが、主人公自身は変化せず、周囲が変わるタイプの物語です。

葬送のフリーレン:
フリーレンはエルフであり、1000年以上生きています。彼女自身の価値観はほとんど変わりません。しかし周囲の人間(フェルン、シュタルク、旅先で出会う人々)が変わっていく。フリーレンは彼らの変化を通じて、過去の仲間との旅の意味を再発見する

この構成は、Case 1の変形と考えることもできます。気持ちが「変わる」のではなく「気づく」。変化は外側にあり、主人公はそれを鏡として自分を映す。

「変化しない主人公」を書くなら、周囲の変化をより丁寧に描く必要があります。主人公の代わりに周囲が物語を動かすことになるからです。

3パターンの掛け算

もちろん、3パターンは組み合わせて使えます。むしろ名作と呼ばれる作品は、複数のパターンが重なっていることがほとんどです。組み合わせる際のコツは、「どのパターンがメインで、どれがサブか」を意識すること。全部同じ比重で描くと焦点がぼやけるので、「災害後の回復」が70%、「主人公の成長」が30%といったバランスをまず決めましょう。

• Case 1+Case 2 → 旅に出て帰ってきたら、役割も変わっていた(ロード・オブ・ザ・リング)

• Case 2+Case 3 → 最強の主人公の過去を描きながら、テーマへの態度変化も描く(バーフバリ)

• Case 1+Case 3 → 冒頭で変化後の主人公を見せ、過去を遡り、最後に現在に戻る(『こころ』)

まとめ

物語 = 変化するお話。変化がなければ報告書

Case 1:気持ちが変わる → 旅に出て帰ってくる型

Case 2:役割が変わる → 過去を捨てて生まれ変わる型

Case 3:状況が変わる → 変化後から始めて遡る型

• 3パターンは掛け算で組み合わせられる

• 「変化しない主人公」も、周囲の変化を描くことで成立する

次に読むべき記事

• 感情曲線で変化を設計する → 感情曲線6パターン×物語の類型12パターン

• プロットの骨格を作る → プロットとは何か

• 物語のスケール感を設計する → 小説のスケールを大きく見せる

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