Kindle ダイレクト・パブリッシング(KDP)に登録して電子書籍を出版しよう!
小説を書いたなら、次は出版です。
「出版」と聞くと、出版社に原稿を持ち込んで、編集者と打ち合わせを重ねて、印刷所に入稿して……という大掛かりなプロセスを想像するかもしれません。かつてはそれが唯一の道でした。在庫の山に囲まれて途方に暮れる自費出版の悲劇も、少なくなかったと聞きます。
しかし、状況は変わりました。Amazon KDP(Kindle ダイレクト・パブリッシング)を使えば、原稿データとAmazonアカウントさえあれば、世界中に自分の本を届けることができます。在庫リスクはゼロ。印刷代もゼロ。必要なのは、あなたの作品と、少しの手続きだけです。
この記事では、KDPの登録から出版、タイトル設計、価格設定、収益化の考え方までを一気に解説します。私自身、KDPで複数の作品を出版してきた実体験をベースに書いていますので、「実際やってみたらどうだったか」の温度感もお伝えできるはずです。
なぜ電子書籍なのか──作家にとっての4つのメリット
具体的な手順に入る前に、そもそもなぜ電子書籍なのか。紙の本と比較したとき、作家にとって決定的に有利な点が4つあります。
出版のハードルが圧倒的に低い
紙の本は、基本的に出版社を通さなければ世に出せません。同人誌という選択肢もありますが、印刷コストと在庫管理が発生します。一方、KDPなら原稿のテキストデータを用意してアップロードするだけ。費用は一切かかりません。知識もスキルも最小限で「出版」という行為が完了します。
印税率が高い
KDPセレクト(Amazon独占販売)に登録すると、印税率は最大70%になります。紙の商業出版の印税率が8〜10%であることを考えると、桁違いの還元率です。もちろん、商業出版とは販売部数の規模が異なるため単純比較はできません。しかし、1冊売れたときに手元に入る金額が大きいのは、兼業作家にとって精神的な支えになります。
作品が劣化しない
Kindleで出版した作品は、Amazonのサービスが存続する限り、データとして残り続けます。紙の本は絶版になれば書店に並ぶことはありませんが、電子書籍には「絶版」という概念がありません。5年前に出した作品が、今日この瞬間も誰かの目に留まる可能性がある。これは作家にとって、静かに大きなメリットです。
書籍化への足がかりになる
「電子書籍で出したら商業出版の道が閉ざされるのでは?」という不安を抱く方もいるかもしれません。しかし、実際にはKDP発の書籍化事例は存在します。「魔女の旅々」は、もともとKDPで自費出版された作品でした。ネット上で話題になったことをきっかけにGAノベルから刊行され、アニメ化まで果たしています。KDPは書籍化のゴールではなく、通過点にもなりうるのです。
STEP 1:KDPに登録する
まず、Amazonアカウントが必要です。すでに持っている方は、そのままKDPにサインインできます。
KDPの登録ページにアクセスしてください。
> https://kdp.amazon.co.jp/ja_JP
Amazonアカウントでサインインし、Kindleダイレクト・パブリッシング利用規約に同意すれば、KDPへの参加自体は完了です。ここまでは数分で終わります。

アカウント情報の入力
初回ログイン時、画面上部に「アカウント情報を更新してください」というメッセージが表示されます。このまま放置すると本の出版ができないため、以下の情報を入力しましょう。
• 著者/出版社情報(本名を記載。ペンネームは出版時に別途設定可能)
• 銀行口座情報(KDPの売上振込先)
• 税に関する情報
税務情報の入力──つまずきやすいポイント
「税に関する情報」の入力は、慣れない方にとって最大のハードルです。ポイントだけ押さえれば難しくありません。
Amazonはアメリカの企業のため、米国での源泉徴収税(30%)に関する情報を求められます。「アメリカに税金を落とすのか」と構えるかもしれませんが、Amazon.co.jp(日本のKindle)での売上には影響しません。Amazon.com(米国)で売上が発生した場合の話です。
入力のポイントは以下の通りです。
1. 「米国のTIN(納税者番号)を持っていますか?」→「いいえ」を選択
2. 日本のマイナンバーをTIN欄に入力
3. 「租税条約上の優遇措置を請求しますか?」→「はい」を選択(日米租税条約の対象国)
4. 署名欄は半角英数字で氏名を入力(漢字不可)
これで税務情報の登録は完了です。プレビューを確認して送信してください。
STEP 2:原稿を準備する
KDPがサポートするファイル形式は以下の通りです。
• Microsoft Word(DOC/DOCX)
• HTML(ZIP、HTM、HTML)
• MOBI
• ePub
• リッチテキスト(RTF)
• プレーンテキスト(TXT)
• Adobe PDF
最も手軽なのはWord形式です。Microsoft Wordを持っていなくても、Googleドキュメントで作成してDOCX形式でダウンロードすれば問題ありません。
原稿のフォーマットで注意すべき点は、章立て(見出し)を適切に設定することです。Kindleは見出しを自動で目次化するため、「見出し1」「見出し2」などのスタイルを適用しておくと、読者にとって親切な電子書籍になります。
表紙を用意する
KDPでは表紙画像のアップロードが必要です。この表紙がAmazonの商品ページに表示されるため、読者の購買判断に直結します。
表紙デザインに自信がない場合、イラスト依頼サービスを利用するのも一つの手です。SKIMAやココナラといったプラットフォームでは、数千円から表紙イラストを依頼できます。プロに任せることで、作品の第一印象が格段に良くなります。
STEP 3:Kindle本の詳細を入力する
原稿の準備ができたら、KDPの管理画面で「タイトルの新規作成」をクリックし、本の情報を入力していきます。
基本情報
• 言語:日本語
• タイトル/サブタイトル
• 著者名(ペンネーム可)
• 内容紹介(5,000文字以内。ここが販売ページの「あらすじ」になる)
• キーワード(最大7個。検索で見つけてもらうための重要要素)
• カテゴリー
DRM設定
DRM(デジタル著作権管理)の有効化は「はい」を推奨します。これにより、購入者本人のアカウントでのみ閲覧可能になります。著作権保護の基本的な防御壁として、オンにしておくべきです。
ちなみに、私は初めてKDPで出版したとき、DRMの意味を理解しないまま「いいえ」にしてしまいました。出版後にDRM設定は変更できないため、今でも少し後悔しています。同じ失敗をしないでください。
成人向けコンテンツの判定
「成人向けコンテンツが含まれますか?」という質問があります。エロ・グロに特化した内容でなければ「いいえ」で問題ありません。ただし、Amazon側の審査でアダルトカテゴリに分類されると、検索結果に表紙が表示されない、ベストセラーランキングに載らないなど、致命的なデメリットが発生します。グレーゾーンの表現がある場合は、慎重に判断してください。
STEP 4:タイトルの設計──5つのアプローチ
タイトルは作品の「看板」です。KDPでは無限の本がカタログに並ぶため、タイトルで目を引けなければ内容紹介すら読んでもらえません。
電子書籍のタイトル設計で使えるアプローチを5つ紹介します。
① テーマを英語で抽象化してから日本語に戻す
物語のテーマを一度英語に翻訳し、そこから連想を広げて日本語タイトルに落とし込む方法です。
例えば「すれ違い」がテーマなら、英語で「Passing」→「並行しない」→「交差点」→「人生の岐路」→「crossroad」。このプロセスで余計な具体性が削ぎ落とされ、抽象化されたテーマだけが浮かび上がります。日本語→英語→日本語と変換することで、思考のフィルターが二重にかかる効果があります。
② キーワード3つを組み合わせる
物語から気になった単語を3つ選び、並べてタイトルにするパターンです。「心臓病」「天空」「丘」なら「心臓病と天空の丘」。コツは、「誰が」「何のために」「何をした」から1つずつ選ばないこと。1つずつ選ぶと文章になってしまい、想像の余地が消えます。
③「名詞の名詞」パターン
「涼宮ハルヒの憂鬱」「機動戦士ガンダム」「葬送のフリーレン」。古くからある王道のタイトル構造です。語順を逆にするとポップな印象になることもあります。「世界の果て」を「ハテの世界」にするだけで、重厚さが消えてカジュアルな手触りに変わります。
④ 起承パートの要約
いわゆる「長文タイトル」の手法です。物語の導入部を一文に圧縮すると、続きが気になるタイトルになります。「タイトルから中身を考える」というアイデア出しの逆引きにも使えます。
⑤ SF作品タイトルからの着想
SF作品のタイトルには想像力をかきたてる力があります。エヴァンゲリオンの「世界の中心で、愛を叫んだケモノ」、ナディアの「星を継ぐもの」など。もちろん、タイトルの引用が成立するのは物語の内容とリンクしている場合だけです。短い語句のタイトルには著作権が発生しないのが一般的ですが、商業利用の場合は商標法等に注意してください。
STEP 5:価格設定と収益モデル
いよいよ最後のステップ、価格設定です。
KDPセレクトへの登録
KDPセレクトに登録すると、以下の特典があります。
• 印税率が70%になる(通常は35%)
• Kindle Unlimitedの対象になる(読み放題会員に読んでもらえる)
• キャンペーン価格の設定が可能
代償は、Amazonでの独占販売です。楽天Koboやhonto等、他のプラットフォームでは販売できなくなります。
価格の考え方
「主なマーケットプレイス」でAmazon.co.jpを選択し、希望小売価格を入力します。ロイヤリティ(印税額)が自動計算されるので、確認してください。
ここで押さえるべきポイントが1つあります。KDPセレクトの70%ロイヤリティが適用されるのは、価格が250円〜1,250円の範囲のみです。1,250円を超えると一律35%になるため、ラノベの価格帯であればこの範囲に収めるのが合理的です。
Kindle Unlimitedの仕組み
KDPセレクトに登録すると、作品はKindle Unlimitedの対象になります。Kindle Unlimitedで読まれた分の報酬は、希望小売価格ではなく「既読KENP(Kindle Edition Normalized Pages)」に基づいて計算されます。
世界中のKindle Unlimited会員の月額料金がプールされた「KDPセレクトグローバル基金」から、読まれたページ数に応じて分配される仕組みです。1ページあたりの単価は月によって変動しますが、おおむね0.4〜0.5円程度です。
つまり、200ページの小説が1冊通読されると80〜100円の収入になる計算です。ダウンロード販売の印税と合わせて、二段構えの収益モデルが組めるのがKDPセレクトの強みです。
出版ボタンを押す
すべての入力が終わったら、「Kindle本を出版」をクリック。Amazonの審査(通常24〜72時間)が完了すれば、あなたの作品がKindleストアに並びます。
最初の出版は、ボタンを押す瞬間に不思議な緊張感があります。「自分の本がAmazonに並ぶ」という事実は、小さいようで、けっこう大きな体験です。
収益化の現実と戦略
最後に、KDPの収益化について正直な話をしておきます。
KDPで出版しただけでは、作品はほぼ読まれません。Amazonのカタログには無数の本が並んでおり、新作は一瞬で埋もれます。紙の本が本屋という購買意欲の高い場所に並ぶのとは違い、電子書籍はEC(電子商取引)サイト上の無限の棚に置かれるだけです。
だからこそ、出版したあとの導線設計が重要になります。
• SNSでの告知と継続発信
• ブログや作家サイトからの誘導
• 投稿サイト(小説家になろう、カクヨム等)で読者を獲得し、KDP版への動線を作る
• KDPのキーワード設定を最適化する
「書く力」と「届ける力」は別のスキルです。両方を磨くことで、KDPは兼業作家にとって現実的な収益チャネルになります。
まとめ
| ステップ | 内容 | 所要時間目安 |
|---|---|---|
| STEP 1 | KDP登録・税務情報入力 | 30分〜1時間 |
| STEP 2 | 原稿・表紙の準備 | 作品による |
| STEP 3 | 本の詳細入力(タイトル・カテゴリ等) | 30分 |
| STEP 4 | タイトル設計 | じっくり時間をかけるべき |
| STEP 5 | 価格設定・出版 | 15分 |
KDPは「書いたものを世に出す」ための、最も手軽で、最もリスクの低い手段です。完璧を目指す必要はありません。まずは1作、出してみてください。出版という行為を一度経験すると、「書く」ことへの意識が変わります。
読者に届くかどうかは、そのあとの話です。まずは、あなたの物語をKindleの棚に並べましょう。






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