二項対立で物語を設計する|Or/Andの軸で4つのエンディングを発想

2020年4月4日

物語のエンディングが決まらないとき、二項対立を使えば選択肢が自動的に見えてきます。

善と悪。愛と憎悪。自由と秩序。

物語に対立軸を1つ組み込むだけで、4種類のエンディングが導出される——この記事では、そのメカニズムと設計方法を解説します。

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二項対立とは

二項対立(binary opposition)は、言語学者ソシュールの概念です。世界は対になる2つの要素で認識される、という考え方。

• 善 / 悪

• 生 / 死

• 男 / 女

• 富 / 貧

• 自由 / 束縛

人間の認知は二項対立で世界を整理しています。「善」の意味は「悪が存在する」ことで初めて成立する。悪のない世界では、善という概念自体が消えます。

文化人類学者レヴィ=ストロースは、この考え方を物語にも適用しました。あらゆる神話は二項対立で構成されている

物語に二項対立を組み込む

物語に使う二項対立は、抽象的な概念(善/悪)だけでなく、具体的なものでも構いません。

人間 / 魔族(種族の対立)

個人の自由 / 社会の秩序(価値観の対立)

過去に生きる / 未来に進む(時間軸の対立)

対立軸が物語に組み込まれると、主人公はその対立のどちら側に立つか、あるいは両方を超えるかという選択を迫られます。この選択がプロットを動かし、結末を決めます。

Or/Andの軸で4つのエンディングを導出する

ここが核心です。1つの二項対立(A / B)から、4つの結末パターンが導出されます。

これは記号論的四角形(Semiotic Square)と呼ばれるフレームワークに基づいています。

パターンA(Or:一方が勝つ)

対立の一方が勝利し、もう一方が敗北する。

善 vs 悪 → 善が勝つ

桃太郎の定番パターン。鬼を退治し、善が悪を打ち負かす。最もオーソドックスな結末です。

パターンB(And:両立・和解)

対立する両者が共存・和解する。

善 vs 悪 → 善と悪が共生する

るろうに剣心の京都編が近い。志々雄真は敗れたが、剣心もまた「人斬りの過去」を消せない。善も悪も自分の中にあることを受け入れる。

パターン-A(Or:逆転勝利)

対立のもう一方が勝利する。

善 vs 悪 → 悪が勝つ

ダークファンタジーや悲劇で使われるパターン。ただし、単純に悪が勝つだけでは読者は満足しません。悪の勝利にテーマ的な必然性が必要です。

『進撃の巨人』の中盤がこのパターンに近い構造を持っています。壁の中の人類(善)がマーレ(悪)に敗北し続ける——しかしそこには「善悪は立場によって反転する」というテーマ的な必然性があった。単なる「悪が勝って終わり」ではなく、勝利した側もまた別の苦しみを抱えていることを描くと、読後感が「虚しい」から「考えさせられる」に変わります。

パターン-B(Neither:どちらでもない / 未決着)

対立が解消されないまま終わる。

善 vs 悪 → 善も悪も消えない。ただ隣り合う

最も高度で、最も余韻の強いパターン。読者に「答え」を委ねる終わり方です。

村上春樹の作品が典型例で、主人公は問いを抱えたまま物語が閉じる。エンタメ系だと使いにくいと思われがちですが、Web小説でも「第一部完」の区切りとしてNeitherを使い、第二部で決着をつける構成は有効です。対立を未決着のまま残すことで続編への強力なフックにもなります。ただし、読者が「結局なんだったの?」とストレスを感じるリスクもあるため、対立の構図だけは明確に提示しておくことが大切です。

4パターンの一覧

パターンロジック結末印象
A(Or)一方が勝つ善の勝利王道・爽快
B(And)両立する共存・和解成熟・深い
-A(逆Or)逆が勝つ悪の勝利衝撃・悲劇
-B(Neither)未決着対立持続余韻・文学的

図にするとこうです。

具体例で設計してみる

対立軸:「個人の自由 / 社会の秩序」

パターン結末
A主人公が社会のルールを打ち破り、自由を勝ち取る
B主人公が自由と秩序の両立する新しい社会を作る
-A主人公が社会に飲み込まれ、自由を失う
-B主人公は自由を得たが、秩序も残ったまま。戦いは続く

4つの結末を全部書き出してから、最も面白いものを選ぶ。これが二項対立を使った結末設計の手順です。

注意点:二項対立が「ない」物語には使えない

この手法は物語に明確な二項対立が埋め込まれている場合にのみ有効です。

「自分の物語に二項対立が存在するのかわからない」と感じたら、こう自問してください。「この物語の主人公は、何かと何かの間で選択を迫られているか?」。答えがYesなら二項対立がある。Noなら、この手法ではなくセントラルクエスチョン型の設計が向いています。

日常系の「何も対立がない」物語では、無理にOr/Andを当てはめても機能しません。ただし「対立がないように見える」だけで、実は内面に二項対立が潜んでいるケースもあります。『よつばと!』のような日常系でも「子どもの視点(無垢)vs 大人の視点(複雑さ)」という対立は存在する。表面的な対立がなくても、テーマレベルで対立軸が見つかることがあります。

どうしても対立が見つからない場合はセントラルクエスチョンからのアプローチが有効です。

二項対立とCQの違い

二項対立とセントラルクエスチョンは、どちらも「4つのエンディング」を導出しますが、アプローチが異なります。

二項対立セントラルクエスチョン
出発点構造的な対立主人公の内面的な問い
4パターンOr / And / -A / -Bグッド/バッド × ハッピー/アンハッピー
向いているジャンルバトル、対立もの内面成長もの
併用可能可能

両方を使うのが最強です。二項対立で構造的な結末を設計し、CQで主人公の内面的な着地点を設計する。2つの結末が一致していれば、物語の結末は盤石です。

善悪のグラデーション:現代の二項対立

ここまで「善 vs 悪」という明確な対立を例にしましたが、現代の物語では二項対立がグラデーション化しています。

「善人だが弱点がある主人公」と「悪人だが理由がある敵」。単純な善悪ではなく、どちらも正しい / どちらも間違っている状態で対立する。

グラデーション型の二項対立では、パターンBやパターン-Bが特に力を発揮します。「完全な勝利」が存在しないからこそ、共存や未決着に説得力が生まれる。

まとめ

ポイント内容
二項対立対になる2つの要素。物語の対立軸になる
4パターンA(一方勝利)/ B(両立)/ -A(逆転)/ -B(未決着)
Or/AndOrは排他的選択、Andは共存
使い方4つ全部書き出して、最も面白い結末を選ぶ
注意二項対立が物語に存在する場合のみ有効

次に読むべき記事

• 内面的な問いからの結末設計 → セントラルクエスチョンとは

• 二者択一の「正解」 → 「究極の二者択一」の正解は?

• 結末の感情設計 → 感情曲線6パターン×物語類型12パターン

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