異世界ジャガイモ問題の本質

2023年5月17日

昔からよく言われていることですが、「小説家になろう」で中世ヨーロッパ風ファンタジーを書いていると、なぜこの時代にジャガイモがあるのか?を問う「ジャガイモ警察」があらわれることがあります。

他にもトマトや異世界シャワーについても、その世界にあるわけないとツッコミが入るケースがあります。なぜジャガイモ警察はこれほど細かいツッコミをしていくのか?
本エントリーでは、異世界ジャガイモ問題の本質に迫ります。

「ジャガイモ」とは

論争の中心にある「ジャガイモ」について説明します。
ジャガイモは、南アメリカのアンデス原産で標高3000メートル以上の高地で主に栽培されていました。
なぜ「ジャガイモ」かというと、17世紀オランダ船によってジャワのジャガトラ(ジャカルタの旧名)から日本に伝来し、「ジャガタライモ」と呼ばれていたものが転じて「ジャガイモ」になったといわれています。

食物としては紀元前のアンデス文明時代から既に食べられていました。
ヨーロッパに輸入されたのは、16世紀後半(1570年ごろ、観賞用が始まり)で、食材として普及するのは17世紀頃からと言われています。
一般的に、中世ヨーロッパは5世紀から15世紀とされているので、中世ヨーロッパにジャガイモがない、は真実です。

下茎部のいわゆるジャガイモ本体を種芋として畑に埋める事で栽培が行われ、収穫時期は栽培の時期によって異なりますが、大きくは春に植えて夏に収穫、夏に植えて秋に収穫の2パターン。
冷害に強く、稲や小麦がダメになる中で「ジャガイモ」だけは生き残り飢饉に苦しむ人々を多く救った歴史的功績があります。

 

なぜ「小説家になろう」の中世ヨーロッパにジャガイモが登場するのか?

なぜ「小説家になろう」の中世ヨーロッパにジャガイモが登場するのかというと、私は以下の仮説を持っています。
・現代の感性で中世ヨーロッパを想像したとき、パッと思いつくのはイギリスの騎士です。
・そしてイギリスの食べ物としてフィッシュアンドチップスが有名なので、「中世ヨーロッパといえば英国騎士」→「英国ではジャガイモが食べられている」→「中世ヨーロッパの食べ物はジャガイモ」と連想されているように感じます。
・するとイギリスのフィッシュアンドチップス的な料理を、中世ヨーロッパを舞台に並べたくなります。

 

「ジャガイモ警察」とは

ジャガイモ警察とは、上記の「ジャガイモ」の歴史から、「ファンタジー作品の世界(中世ヨーロッパ)にジャガイモがない」ことを伝えて回る警察官のことです。中世警察とも呼ばれます。
彼らの目的は、正しい世界観の構築です。
歴史を逸脱した描写を許さない、現代のタイムパトロールのような存在です。

 

「ジャガイモ警察」に対するアンサー→日本人の「食」に対する執念がそうさせた?

ジャガイモ警察の方々は、「小説家になろう」の世界観を守っているのですが、あまり好かれていません。
というのも多くの人は、「小説家になろう」の小説に厳密な歴史的背景を求めているわけでなく、「現代日本と変わらぬ衛生面とご飯」を求めているからです。

※このことは異世界シャワー問題のエントリーでも書きました。

 

日本人は、世界的に見ても「食」に対する執念が半端ないそうです。例えば海外では毎日同じメニュー(しかも栄養バランスとか皆無でパン1つとか)を1週間続けるのが当たり前です。
「一汁三菜」かつ、毎食献立を変えていくのは日本人くらいです。そんな日本人ですから、作中では美味しそうなものを登場人物に食べさせたいものです。

ですので、おかゆとか草とかは物語から排除され、現代でもおいしく食べることができ、なおかつイギリスにもあるジャガイモが選ばれたと推測します。

 

「ジャガイモ」の登場するファンタジーを書いた

私も「ジャガイモ」の登場するファンタジーを書きました。しかし食卓に登場するのではなく、「神を語るジャガイモ」がキャラクターとして登場します。
今のところ「ジャガイモ警察」にツッコミを受けたことはありません。よければ読んでみてください。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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