ファンタジー小説の参考になる、貴族の衣装の歴史と特徴
この記事では、貴族の服装の歴史的な特徴について解説しています。
中世ヨーロッパで貴族が着ていた服の種類や、公服と私服の違い、貴族と服の関係などを詳しく解説しています。この記事では、貴族の服装がどのような特徴を持っていたのか、史料をもとに解説していきます。貴族の服装に興味のある方は、ぜひご一読ください。
貴族の服装の変遷
貴族の服装は時代とともに変化します。特に中世ヨーロッパで変化が顕著でした。中世初期の簡素な衣服から、豪華な生地や装飾を施した凝ったスタイルの衣服へと変遷していきました。中世後期には、貴族の男女ともに、より派手な装いが求められ、カラフルな布地やエキゾチックなデザインが特徴的でした。ピーター・コス著『Heraldry, Pageantry and Social Display in Medieval England』によると、ヨーロッパ貴族の服装は「豪華で贅沢な範囲で、富と地位を完璧に示すものだった」(2018年)そうです。
貴族の重ね着
中世の貴族は、一般的に何重にも衣服を重ねており、一番外側にはマントやケープを着用していました。マントやケープの下は、タキシードをベースにチュニックやガウンを重ね、そしてブリーチズやズボンをはくことが多かったようです。貴族の女性は、中世から比較的変わらずに長く流れるようなガウンを好む傾向がありました。
その中で最も人気があったのはキルト(表地と裏地の間に綿や羽毛などの芯を挟み、ステッチで押さえる手芸技法、またはそのようにして作られた生地)のドレスで、体にフィットするようにデザインされ、着る人の足が隠れるほど非常に長いスカートを持つことが多かったです。また、ベルトや頭飾りなど、さまざまな装身具を身につけるのが一般的ででした。
体にフィットするものが好まれたということは、体型がスリムで見栄えの良い人はそれだけで評価が上がったかもしれませんね。
・チュニックのイメージ
・ガウンのイメージ
・ブリーチズ(乗馬用ズボン)のイメージ
・ズボンのイメージ
・キルトドレスのイメージ
貴族装束へのギリシア服の影響
ギリシャの壷絵(本来実用品である陶器の壺の表面に、装飾として描かれた絵)や古代彫刻の彩色痕から、貴族の衣服は鮮やかな色彩と精巧な意匠で飾られていたことがわかります。女性も男性も、チュニックとマントという2つの衣服で構成されているのが一般的です。
これは古代ギリシアの衣服の影響を受けたもので、ペプロス(古代ギリシアの女性が着用していた長衣)やキトン(亜麻で作ったペプロス)のような内衣と、ヒマチオンのような外衣の2つの衣で構成されていました。
貴族の衣装が重ね着する部分や、上に羽織るチュニック、ガウンはギリシャ服の影響を受けていると考えられます。
・ペプロスのイメージ
・ヒマチオン(商品説明にマロン色のドレープとありますがヒマチオンも似たようなものです)のイメージ
中世ヨーロッパにおける貴族と衣服の関係
中世ヨーロッパの貴族は、衣服に非常にこだわりがありました。服はステータスシンボルであり、貴族は服を下層階級と差別化するための道具と考えました。貴族の道徳や品格を反映するものとも考えられていたのです。
ですから冒頭でピーター・コスが説明したように、「衣服は単に富や社会的地位を示すだけでなく、貴族を反映することが期待された」(2018年)のです。貴族はまた、ファッションの流行に大きく依存していました。リッチで高価な生地は、アクセサリーやジュエリーと同様に、貴族が望むイメージとステータスを維持するために需要がありました。
つまりヨーロッパにおいては、豪華絢爛な服を着る貴族が有力であったということです。ファンタジー小説を書くときには、権力者の服装は豪華絢爛に描写することが重要ですね。
貴族の服装デザインに有益な資料
ヨーロッパ風の貴族衣装のデザインに有益な資料を共有します。オススメは任天堂ファイアーエムブレムシリーズの設定資料集です。
貴族による物語で、日本で一番支持されているシリーズです(ファイアーエムブレム風花雪月は全世界で300万本以上を売上)。衣装デザインは大変参考になります。設定資料集自体が発行部数が少なく、希少性があります。
※年月が経ってもメルカリやヤフオクにて高額取引されていますので、コレクションとしても価値があります。今後も値上がりすると予想されますので、持っておいて損はありません。
まとめ
本稿では、中世ヨーロッパにおける貴族の服装の歴史的特徴について解説しました。貴族が着用した衣服の種類、ギリシア服が貴族衣装に与えた影響、貴族と衣服の関係などを考察し、衣服は身分を示す重要な指標であると同時に、貴族の道徳や威厳を反映するものだとわかりました。
貴族の服装の特徴を理解することは、中世ヨーロッパの文化や生活様式を知ることにつながります。
ファンタジー小説を書くときには、キャラクターの貧富をあらわすシンボルとして、服が使えますね。その参考になれば幸いです。