「伏線と布石」違いは目に見えるか否か?!小説の「伏線の効果」も解説
推理小説などでうまく使われている「伏線」。「伏線」がうまく使われて、さらにきれいに回収されている話は、「面白い上にもう一回読み返したくなる」などとよく言われますよね。一方「布石」という言葉があります。
「伏線と布石」どちらも「未来のための何か」というような意味だと予測はつきますが、一体何が違うのでしょうか。ここでは、「伏線と布石の違い」や「伏線の効果」について考察していきます。これを読めば「伏線」を有効に使えるようになるかもしれません。どうぞご参考になって下さい。
「伏線」と「布石」の違い
物語用の専門用語かどうか
単純に「伏線」は物語用の専門用語、「布石」はもともと囲碁の用語で、現在は事業のプランなど将来に向けての準備を表す言葉として使われています。
目に見えるか見えないか
「伏線」とは、物語の展開に備えてそれに関する何かを「ほのめかすこと」です。しかし、「布石」はほのめかしたりはしません。「布石」は将来に向けての準備を「公言すること]です。「伏線」は目にみえないもの、「布石」は目に見えるものという違いがあります。
「布石」とは「準備」
「布石」とはもともとは碁石を配置することで、序盤戦で今後の戦いを有利にするための要となる石の配置のことです。後々効くように先回りして手を打つ所から、将来に向けての準備を表すようになりました。
「布石を置く」「布石を投じる」という言葉も見かけますがこれは間違いで、正しい使い方は「布石を打つ」です。
【使い方の例】
「今後の仕事ための布石を打っておいた」
「彼は卒業後に向けた布石をしっかり打っている」
仕事をとるために取引先に名前を売る、人脈を作る、就職のために資格をとる、貯金をするなど、生活の中で後々必要となってくることのためにする「準備」を意味します。
「伏線」とは「ほのめかし」
「伏線」は、基本的には日常生活には使わない物語専用の用語です。小説の中で以後の展開に備えてそれに関する何かをほのめかしておくことをいいます。
ポイントは、「隠れている」「ほのめかされている」ということ。面白み・楽しみは最初からわかっていたらつまらないですよね。発覚するまで隠れているというところが「布石」との大きな違いです。
「伏線を引く」という使い方も見受けられますが、「伏線を敷く」「伏線を張る」などが正しい使い方です。
「伏線」の効果
もう少し深く伏線の仕組みを見ていきます。因果(原因と結果)にあてはめて考えた場合、伏線にはこの「因」が隠されていて、「果」が表現された後で「あれが『因』だったのか!」とわかるというのが伏線の仕組みです。
【例1】
「因」:夫が不倫をした。
「果」:私は誰に対しても心を閉ざすようになった。
普通の「因果」であれば、「夫が不倫をしたので、私は誰に対しても心を閉ざすようになった」で終わりです。
【例2】
「伏線」:急に週末の出張が増えた夫は、どこか落ち着かない様子である。
「果」:私は誰に対しても心を閉ざすようになった。
「伏線」の「急に週末の出張が増えた夫」という表現が、「因」である「夫が不倫した」という事実を隠しています。また隠すことで、同時に「他の目的」も果たしています。この場合は、「どこか落ち着かない様子である」という表現が、夫婦の空気感や距離感などを読者にわからせるという目的も果たしています。
この様な他の目的も果たしつつ、「果」に対する「因」をほのめかす。そうすることで読者に「因」を推測させることができ、面白み・楽しみがでてくる。これが「伏線の効果」です。
まとめ
布石はもともと囲碁の用語で、将来への「準備」を示します。伏線は物語の専門用語で、「ほのめかし」を示すものです。大きな違いは目に見えるかどうか。布石は「公言するもの」ですから目に見えて、伏線は「隠しているもの」ですから、あえて見せないものです。
あえて見せないことで読者の「推測」を促して、物語に面白みや楽しみを与える効果があります。小説でうまく伏線を設けることで、物語が単調でなくなり、読者が能動的に小説の世界に入り込めるようになります。ぜひどの文も「伏線」を入れるとしたらどうなるだろう?と考えて、膨らみを持たせて物語を書く練習をしてみましょう。
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