《小説感想》徳川家康 あまりに長い欣求浄土への道
こんにちは。
杞優橙佳です。
3月頭から5ヶ月かけて、徳川家康(全26巻)読破しました。
※本は中古で購入しています。
我ながら歴史小説好きだね。
この26巻はなかなか読み応えがありました。
徳川家康の母親(於大の方)の時代から始まり、今川、信長、秀吉、石田、真田、伊達と戦国時代のスーパースターの物語がこれでもかと詰まっています。
あまりに長い欣求浄土への道、最後まで歩みきった家康に拍手です。同時に26巻を読み切った自分にも拍手したくなる作品です。
このエントリーでは、下記の3つのテーマにそって、感想を書いていきます。
・戦国時代最高の天才と感じた武将
・日本の治め方
・現代ラノベでは絶対見られない女性陣
戦国時代最高の天才と感じた武将
これは、秀吉でした。
信長も天才なのですが、倫理や常識というタガを外せば、同じことをできた人もいたように思います。
現代社会でも、信長や家康の真似をできる人はいると思います。とにかく冷酷、ワンマン、論理的に振る舞えば信長ぽいと言われるでしょうし、ビジョンを語り辛抱強ければ家康ぽいと言われることもあるでしょう。
ですが秀吉の、誰からも好かれて、自分で話しているうちに感動して泣いてしまうような人間味……これは生まれつきのものでしかありません。
生まれつきの天才であるがゆえに、年老いてからは自分を磨くことができず、落ちぶれていったともいえます。
日本の治め方
徳川家康26巻を読んで感じたのは、日本人がどれほど天皇家を慕っているかということでした。と書いても、ただ読んだだけでは伝わらないと思いますので、解説を。
・天下を秀吉が治められず、家康が治められた理由
私はこれを、家康が源氏の末裔だったからと考えます。
※もちろん秀吉は信長と似て、稀代のリーダータイプで、突っ走る能力は高いけれど忍耐なく、多くの人から支持されるルール作りを行う能力がなかったことも原因ですが、それ以上に血筋が原因だったと感じます。
とかく国民(それもあったこともないような一般庶民まで)を治めようと思うと、自分が上に立つ理由が必要です。
秀吉は何とかその理由をつくろうと、征夷大将軍を望みますが、源氏の末裔ではない秀吉に、征夷大将軍は与えられません。そこで苦し紛れで公家となり、関白になるという手を使って人心をつかもうとしました。
ですが結局、庶民出身であるという事実が、秀吉をあくなき虚栄(朝鮮出兵、醍醐の花見)へと急がせ、最後には身を滅ぼしました。一方の家康は、源氏の末裔であるという血筋を活かし、人心をつかみ、征夷大将軍へ上り詰めました。
・天皇家から分家した源氏と平氏
源氏と平氏は、もとは天皇家の一族だったと言われています。
天皇家が大きくなりすぎて、養いきれなくなったため、源、平、藤原、橘の4氏に分家していったのです。
※戦国時代でいうと、織田家は平氏の末裔、徳川家は源氏の末裔でした。
戦国時代には、天皇が神様の血筋という物語は、もはや信じられていなかったかもしれません。
ですが、源氏の血筋を引く家康が最終的に戦国を治め、国民へ教育をするなかで、神が日本をつくり、その子孫が天皇家であること、天皇家の分家の末裔である源の家康が日本を治めることの正当性は浸透させていったはずです。
人を治めるには、正当性が必要。その正当性の説明として、国をつくった一族であるという説明は天下を300年治めるのに十分な説得力があったのでしょう。
ちなみに、こんな話は物語の中には書いていません。ですが秀吉が国を治められなかった理由の一つは、血筋かなあと感じました。
・公家から武家への政権移行、武家から庶民への政権移行、その次は
鎌倉時代に公家から武家(武力)への政権移行がありました。明治時代に武家から庶民(自由民権)への政権移行がありました。次は、庶民から富豪(金)への政権移行があるんじゃないかと感じます。
天皇家につらなる血筋で、天下泰平を目指す大富豪がいたら、みんな喜んでついていくんじゃないかなあ。
天皇家につらなっていること、これが日本の国民を治める上では本当に大事なのだろうなと感じた次第です(最後に病床の家康が、体を張って禁裏を出迎えた理念が根付いているのでしょうね。これは26巻のネタバレ)。
現代ラノベでは絶対見られない女性陣
築山御前と淀御前。
この二人は現代のラノベではまず見られない女性でしょう。なろう小説であれば、一話で殺されるか改心させられるレベルの悪女です。
※何度も何度も家康に反乱を仕掛けてきます。何度情けをかけて許してあげても、何度も歯向かってきます。
ですが、現実の人間は、戦国時代でも簡単に人は殺さないのでしょうね。私達は嫌いな人を簡単に排除できる時代にいるのかもしれません。もう一度人付き合いというものを考え直さなければと感じました。
多くの学び
徳川家康26巻の学びは様々ありました。
家康の生き様は、準備に準備を重ねて、時を待つことが大事だと教えてくれます。
秀吉の生き様は、自分の欲をどこかで捨てることが人間の幸せにとって重要だと教えてくれます(家康は途中で自分の幸せを捨てて天下泰平を目指し始めました。人の上に立つ人間の心がけです)。
自分の志を貫いた石田三成も立派ですし、人の世に戦はなくならないと家康へ教え込むために最後まで戦った真田の心意気も立派でした。
最後に伊達が涙した慈悲の心、これも大切だと感じました。
庶民が太平を望んでいたから、天下泰平を目指した家康が天下を取りました。時代は庶民がつくりだしていくのだという事実は、これからも変わらないのでしょう。
一庶民として、長い日本の歴史を背負い、良い世の中をこれからも続けていかなければ。そう気を引き締めてくれる名著でした。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません