長文タイトルはクリック率を上げる?データで読み解く読者心理
「タイトルが長い小説はクリックされやすい」という噂を耳にしたことはありませんか?確かに、タイトルが長ければリンクの表示領域も増えて目立つうえ、内容が詳しく書いてある分だけ興味を惹きやすいように思えます。実際、「異世界」「貴族」「チート」など人気ワードが盛り込まれたタイトルは読者の目を引き、クリック率(CTR)向上に一役買っているようにも見えます。では、この直感はデータ的に見て本当なのでしょうか?読者の心理を交えながら考察してみましょう。
長文タイトルは目立ち、興味を誘う
長文タイトルは、その視覚的インパクトでまず有利です。他の短いタイトルが一行で済む中、二行三行に渡って表示されるタイトルは否応なく目につきます。実際、「タイトルが長いとクリックできる範囲が広がるから有利」という指摘がSNSでバズったこともありました。リスト画面でタイトル部分が占める領域が大きいと、それだけで注目度が増すわけです。また、長文タイトルにはキーワードがたくさん含まれるため、検索にも引っかかりやすくSEO的にも優秀だと言われます。例えば「異世界」で検索しても「貴族」で検索しても該当作品がヒットする可能性が上がるわけで、読者が好きな要素を探す際にも目に留まりやすいのです。
読者心理:内容が分かると安心してクリック
読者の立場からすれば、タイトルが長い作品は事前に内容を想像しやすいため安心感があります。「何だかよく分からないタイトルの小説」を開くより、「〇〇したら△△だった件」のようにストーリーの概要が掴めるタイトルの方が読み始めるハードルが低いですよね。実際、「なろう」のように一覧ではタイトルしか表示されない環境では、タイトルが簡易なあらすじの役割を果たしています。
そのため、「タイトル=作品紹介」が徹底している作品ほど読者のクリックを勝ち取っているとも言えるでしょう。事実、ランキング上位を占める作品群を見ると、タイトル文字数が長めのものが多い傾向があります。「異世界ファンタジー」や「悪役令嬢もの」など人気ジャンルの上位作品は、概してタイトルで設定や見どころを説明しているのです。
データで見る傾向と例外
興味深いことに、2021年前後をピークにタイトル長文化が進行し、平均タイトル文字数が約40字近くまで伸びたという分析があります。当時は100文字フルに使った猛者も現れたほどで、「タイトルは長ければ長いほど有利」と思われていました。しかし、その後2022年以降は平均がやや短縮に転じたとのデータもあり、あまりに長いタイトル乱立に読者が慣れて飽和状態になった可能性も指摘されています。
「長文タイトルばかりでは逆に埋もれる」と感じた作者が差別化を図り始めたのかもしれません。実際、短めながら大人気になった作品も存在します(例:『ゴブリンスレイヤー』や『本好きの下剋上』などタイトル自体は短い作品)。このように、「長文=必ずクリックされる」とは一概には言えないものの、無名の新規作品がまず読者の目に留まるには長文タイトル戦略が依然有効であると考えられます。
注意:長すぎるタイトルの弊害?
マーケティングの観点では、タイトルを長くしすぎると覚えづらいというデメリットもあります。友人に「あの小説面白かったよ!」と勧める際、タイトルが長すぎてうろ覚えだと伝わりませんし、いざ検索しようにも途中までしか思い出せない…なんてことにもなりかねません。口コミで広がって欲しいなら、適度なインパクトと覚えやすさのバランスが重要です。また、内容と乖離した誇張しすぎのタイトルは期待外れを招き、読後の評価に響く恐れもあります。作者としては「盛りすぎ」には注意して、タイトルで約束した面白さを本文で裏切らないことも大切ですね。
おわりに:
長文タイトルがクリック率に与える影響は、サイトの仕様と読者心理に裏打ちされたものです。「なろう」ではタイトルのみがまず目に入る以上、そこに魅力を詰め込むのは理にかなっています。もっとも最終的に読者を掴むのは作品内容ですが、その内容を読んでもらうための入り口としてタイトルが果たす役割は絶大です。
「タイトルが長いほどクリックされやすい」という噂は、完全に正しいとは言えないまでも、一理あると言えるでしょう。少なくとも私は興味を引かれた長文タイトルを見ると「どんな展開なんだろう?」とついクリックして確かめたくなりますし、同じような読者も多いはずです。タイトルでしっかり読者の心を掴み、あとは本編でガッチリ離さない——それがウェブ小説成功の一つの形なのかもしれません。
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