トートロジーとは何か?【トートロジーで説得力を増す方法】
2020年12月26日(土)開催、全日本フィギュア男子は、羽生結弦選手が優勝!5年ぶりの全日本王者に返り咲きました。あらゆるジャンプが美しく、息をするのも忘れてしまうほど圧巻の演技でした。感動をありがとう!
さて、そんな感動の中。アナウンサーの方がこんなことをおっしゃっていました。
「羽生結弦が、羽生結弦であることを示した」
ん? 羽生結弦くんは羽生結弦くんだよね。どうして二回いうんだろう。何となく引っかかる文法です。
また、2021年1月5日(水)には、小説を書く上でいちばん大事なことについて、下記のツイートが話題になっていました。
小説を書く上で一番大事なことって小説を書くことなんですよね。 これがなぜ大事なことかというと、小説を書かないと、小説は出来上がらないからなんです。
つまりこれができないと、小説は書きあがらないということですね。 なので小説を書くために必要なことは、小説を書くということなんです。
ものすごい説得力。ですが、小説を書く上で一番大事なことが小説を書くこと……なんとなく引っかかる……どこかで聞いたような?
おわかりの方はおわかりでしょう。これらはトートロジーと呼ばれる手法です。
トートロジーとは
「トートロジー」とは、 同語反復・同義語反復(文法的に同じ語の無意味な反復)のことを指します。つまりは同じことを繰り返すことです。
エヴァンゲリオンの台詞に「僕は僕だ」という言葉がありました。このように「僕」という同じ単語を繰り返す以外にも、「僕は碇シンジだ」というように文法的に同じ語を繰り返しても、トートロジーと呼ばれます。
代表的な構文は下記のとおりです。
「AはAだ」
「Aである。だから~Aだと思う。」
「Aだと思う。つまりAである。」
人材マネジメント研修などを手がける株式会社ウィルPMインターナショナルの代表取締役・石田淳氏は、マネジメントにおいてトートロジーを使わないよう注意を促しています。「堂々巡りで、何の問題解決にもつながらない」からです。
トートロジーを用いて発言されている政治家の方が話題になったこともありました。小泉進次郎さんです。
「今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけないと思っている」
「小泉進次郎構文」「あの構文」「セクシー構文」なんて揶揄されてしまったのは、堂々巡りを生み出してしまう、トートロジーだったからでしょう。
トートロジーをつかうのであれば、あわせて何をするか、という話がでてこないと、先に進めないということですね。
良いトートロジー
冒頭で書いた「羽生結弦が、羽生結弦であることを示した」というフレーズは、力強く魅力的でした。もちろん羽生結弦という言葉自体に、言いしれぬ魅力が宿っていることもあるでしょう。それでも「羽生結弦は凄かった」で済ませるより、「羽生結弦が、羽生結弦であることを示した」のほうが、より印象的……ポジティブな誇張だと感じました。
また、「小説を書く上で一番大事なことって小説を書くことなんですよね。 (中略)なので小説を書くために必要なことは、小説を書くということなんです」というツイートには、力強い説得力があります。
トートロジーには、活きる使い方があるのです。
では、どんな場合にトートロジーを使うと良いのでしょうか。
パターン①要素分解
ひとつは要素を分解するために使うパターンです。
物事の構成要素を過不足なく示すのは、説明する上で重要です。
①構成要素を過不足なく示す
例:「2は1と1からなっている」
「体は剣で出来ている」(Fate)
※Aという物事を構成しているのは、XとYだというように、構成要素を明らかにする
パターン②強調
もうひとつは要素を、強調するために使うパターンです。
ある言葉を繰り返すことで、言葉の印象がどんどん強くなります。冒頭の「小説を書く上で一番大事なことって小説を書くことなんですよね(以下略)」というフレーズは、何度も「小説を書く」と書くことで、「小説を書く」ことが強調されているわけですね。
①当たり前のことに、改めて関心を向けさせる
(当たり前のことというのは、案外気がつかないものです)
例:「小説を書く上で一番大事なことって小説を書くことなんですよね」
「あなたは、あなたのままでいい」
②アイデンティティを強調する
例:「羽生結弦が、羽生結弦であることを示した」
「iPhoneじゃなきゃ、iPhoneじゃない」(Apple)
③勘違いを厳しく非難し、反省をうながす
例:「ルールはルールだ」
「遅刻は厳禁だと何度も言った。遅刻は厳禁だ」
まとめ
例文をご覧いただくとわかるとおり、トートロジーは『要素分解』や『強調』のレトリックとして使うことが出来ます。
『要素分解』は、状況説明の際に役立ちます。Fateシリーズの「体は剣で出来ている」のように、一見繋がりのなさそうな単語を並べることで、え!体って剣でできているの?と驚きを与える技もあります。
『強調』は、ここぞという場面で使うと、フレーズが引き立ちます。冒頭のフレーズがどちらも印象に残ったのは、トートロジーのもつ強調の効果でしょう。
文章を書くときに『要素分解』『強調』というトートロジーの特徴を理解して、書いてみると、台詞の力強さが変わるかもしれませんね。
トートロジーで文章の説得力を増す方法
最後に、トートロジーをつかって、文章の説得力を増す裏技を紹介します。
冒頭でご紹介した、「小説を書く上で一番大事なことって小説を書くことなんですよね。 (中略)なので小説を書くために必要なことは、小説を書くということなんです」というツイートには、力強い説得力があるのはなぜでしょうか。
この文章、説得力を増す方法として有名な、PREP法に近い書き方になっているんですね。
PREP法
結論重視で説得力がある文章構成の型。下記①〜④の順で文章を記載する。
①Point = ポイント・結論
最初に、文章内で解説するポイント・結論を書く。
②Reason = 理由
結論に対するその理由を書く。
③Example = 実例・事例・具体例
理由を裏付けするような具体的な実例・事例を書く。
④Point = ポイント・結論を繰り返す
最後に、ポイント・結論を繰り返し書く。
つまり人は、「〜(結論を説明)。なぜなら〜(理由を説明)。例えば〜(例を記載)。だから〜(結論をもう一度述べる)」という論調で書かれると、説得されやすいということです。例えばひとつ書いてみましょう。
(結論)小説を毎日投稿するために重要なのは、小説を毎日投稿することです。
(理由)なぜなら小説を毎日投稿しなければ、毎日投稿にならないからです。
(具体例)例えば私は、毎日小説を投稿することで、毎日投稿を実現しました。
(結論)だから小説を毎日投稿する上で重要なのは、小説を毎日投稿することなのです。
冒頭の文章と比べると、面白みもユーモアもありませんが、「毎日投稿する上で重要なのは、小説を毎日投稿すること」だと思っていただけたのではないでしょうか。
トートロジーとPREP法の併用で、文章に説得力を増やす方法を紹介しました。
ただし、核となる文章がトートロジーだと、説得力があるように見えるだけで、中身は何もありません。
良いトートロジーの使い方とあわせて考えるならば
PREP法の(理由)のところで要素分解のトートロジーをつかったり、PREP法の(結論)のところで強調のトートロジーをつかうのが良いでしょうね。
・トートロジーとPREP法の併用というアイデア
・良いトートロジーの使い方
これら二点をご紹介しました。創作活動や学生生活、社会人生活のいち場面でお役に立てば幸いです。
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