10のインプットで1のアウトプットを出す取捨選択

2020年7月25日

 あなたは「受け手」にスムーズに伝わる文章を書く。圧倒的な「アウトプット」の技術を持っていると自信を持って言えますか?

 小説家として必要なこの技術、どうやって身につけたらいいものか。日々奮闘中です。

 そして最近、圧倒的な差が出る「アウトプット」の方法を見つけたのでシェアします。

 感情や事実の描写については、微に入り細を穿つ必要はないと気づきました。

大事なことは10のインプットで1のアウトプットを出す取捨選択

 「大事なことは10のインプットで1のアウトプットを出す取捨選択」です。

 つまり人間の複雑な感情や、物語の中で伝えたい事実を1から10まで事細かに伝える必要はないということ。

 1行40文字を書く前に、400文字の具体的で事細かな設計図をつくり、そこから40文字の物語を紡ぎ出すという方法です。

 では実際に
・人間の複雑な感情
・事実
 について、事細かに書く必要がないことを示していきますね。

 

人間の複雑な感情を、複雑なまま書く必要はない

 人間の感情は複雑です。悲しい出来事がおきたとしても、悲しいフリをする自分に酔っているだけだったりするし、実はズルいことを考えていたりもするし、お腹はすく。こんな複雑な感情を、複雑なまま小説に書く必要はないんです。

 例えば家族(おじいちゃん)が脳卒中で倒れたときの描写をするとしましょう。

 私の実際の経験を踏まえて、感情のゆらぎを書いてみます。

 私はおじいちゃんに駆け寄った。
『おじいちゃん!あ、頭に衝撃与えないようにしないと。左手でそっと持ち上げて、畳に寝かせて。だから冷奴にあんなに醤油かけるのやめてっていったんだよ、どうして私のいう事聞いてくれないの……もう……蚊がブーンって飛んでるのが気になるな、妹の真面目な顔初めてみた……おじいちゃんとあんまり仲良くなかったから他人事だと思ったのに。だめだ、なんだか頭が冷静になっちゃった。今は悲しまないと』

 おじいちゃんが倒れても冷静に対応している主人公が書きたいのか、蚊の鬱陶しさを書きたいのか、妹とおじいちゃんの関係を書きたいのか……わちゃわちゃしすぎですよね。

 複雑な感情を全て羅列するのが小説ではありません。わかりにくくなるなら、感情をバッサリ切ること。リアルさは必要ないんです。

事実を事細かに書く必要はない

 続いては事実を事細かに書く必要はない、とお伝えします。

 例えば彼女との関係がギクシャクしてきたときに、彼女から呼び出された思い出をノンフィクションとして書くとしましょう。

「お願い、いますぐ来て」

 彼女の声は悲痛な色を帯びていた。僕は彼女と会うため品川駅に入り、山の手線のホームへ走った。しかし電車を一本逃したため、次の電車が来るまでの3分間、落ち着かないままスマホをいじり、喉の乾きを感じたので自販機に向かい、いろはすの購入ボタンを押してSUICAで支払ったタイミングで電車が来てペットボトルを取り忘れた。くそっと舌打ちしながら電車に乗り、入口付近の手すりにもたれかかって渋谷方面に二駅。大崎駅の南改札口へ走った。

 クセが強い。

「お願い、いますぐ来て」
 彼女に会うため、僕は大崎駅の南改札口へ走った。

 でいいじゃん。ペットボトルを取り忘れたくだりは事実かもしれませんが、絶対いらないですよね。

 物語はあくまでも、面白く読ませるために再構成したフィクションです。読者を楽しませることを第一に考えるべきですね。

第三者が受け止めやすいよう情報を選別する

 つまりは伝えたいことを絞ることが大事です。

 10の情報をインプットして、1をアウトプットするイメージ。90%の事実は捨てて、10%に集中するんだ!という意気込みです。

 作家さんであれば、本編でつかっていない膨大な裏設定資料を持っているはずです。

 緋宮閑流の溶けたやつさんが興味深いことを書かれていました。

ファンタジー。妄想。基本的にナンデモアリだけど、だからこそ無秩序に作るといろんな面でインフレ起こすから世界観とキャラクターはある程度同時進行でその時点で考えられるそこそこの完成度まで起こす。現実的に近似の時代と場所、規模、勢力図、キャラが使いたい能力、一般人の強度等々。

自分が描きがちなのは大抵創世記や中世ベースなんだけど、設計していて意外に面白いのが治水。どの街でどう水を治めるか考えると経済状況を設定し易くなる。井戸?用水路?水道管?水道橋や水力装置を作れる技術は?港は有る?水源は海?川?池? ちなみに、ここまで考えておいて本編には殆ど出ないw

 もったいないからと設定を全部詰め込むのではなく、選別が必要ということですね。

 

※経験値があがってくると1のインプットで10のアウトプットを出せるようになるかもしれません。ですが、1のインプットで10のアウトプットが出せるのは、これまでに99のインプットをしてきたからです。ピカソが30秒で描いた絵を、「30年と30秒」で描いた絵です、と主張した小話は有名ですね。

ピカソが市場を歩いていると、ある婦人が呼び止めた。彼女はピカソの大ファンで、絵を描いて欲しいという。

快諾したピカソは、さらさらと絵を描き上げた。婦人は喜び、いくらなら絵を譲ってもらえるか尋ねた。ピカソはこう言った。

「このスケッチは100万ドルです」

婦人は驚き、高すぎると言った。たった30秒で描いた絵が、どうして100万ドルもするのか尋ねた。するとピカソはこう答えた。

「いいえ、30秒ではありません。私は、これまでに30年もの研鑽を積んできました。だから、この絵を描くのにかかった時間は、30年と30秒なのです」

「ピカソの30秒」

圧倒的な差が出る!「アウトプット」技術を磨く練習方法

 「大事なことは10のインプットで1のアウトプットを出す取捨選択」だと説明してきました。

 では、10の情報をインプットして、1をアウトプットする練習ってどうすればいいでしょうか。

 これには短編がいいでしょう。

 10のインプットが1のアウトプットを生み出すとしたら、10万文字をアウトプットするには100万文字のインプットがなくてはいけません。これは初心者にはしんどいです。

 ですが2000文字の短編なら、20000文字のインプットから作れます。この作業が一番の修行になるのではないでしょうか。

 一本の話をオチまで作るという作業は、文章力や表現力を上げるために絶対に必要な経験です。
 「自分が何を書きたいのか」を、最後までブレずにキープして、物語を完成させること。読者からのコメントや、自身での推敲を経て改善点が出てきたら、また別の話を作りながら技術を磨いていけばいいですね。

 短編といえども、わかりやすく書くことは、わかりにくく書くことよりはるかに難しいです。伏線の付け方や、オチのつけ方など、学びになることは多いです。

 このホームページでは必ず完結する短編小説の書き方のコツ7+3を紹介しています。ぜひ読んでみてください。

 短編作家から長編作家になるのは、小説家の理想のキャリアです。ぜひ短編で確かな力を身につけて、小説家としてステップアップしてみてくださいね。

ここまで読んで頂きありがとうございました。
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