小説家のための情報収集のコツ3点|Why・What・Howで調べれば、物語にリアリティが宿る

2024年10月28日

「資料を調べるのが面倒で、なんとなくで書いてしまう」

正直に手を挙げましょう。私も昔はそうでした。ファンタジーの戦闘シーンで剣の重さを調べず、適当に「片手で振り回した」と書いてしまう。中世ヨーロッパ風の食事シーンに、19世紀以降に一般化したフォークを平然と登場させてしまう。

読者は気づきます。そしてその瞬間、物語から醒めます。

創作のために普段からアンテナを張り、書くときに必要な情報をきちんと調べられること──これも一つの才能です。でも才能と聞くと身構えてしまうかもしれません。安心してください。才能というより「習慣」です。そして習慣には方法論があります。

今回は、情報収集のコツを3点に絞ってお伝えします。


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コツ1:情報収集の目的を明確化する(Why・What・How)

調べものを始める前に、3つの問いを立てましょう。

• なぜ調べるのか(Why)

• 何を調べるのか(What)

• どう調べるのか(How)

当たり前に見えますが、これを明確にしていないと、検索の海で迷子になります。

Why:「○○のシーンを書くため」を具体的に

「なぜ調べるのか」は、ほとんどの場合「作中で必要だから」でしょう。でも「作中で必要」のままでは漠然としすぎています。

たとえば「科学技術で世界を変えていく描写をするため」とWhyを設定したうえで「ペニシリンの作り方」を調べるとします。すると、作り方だけでなく「実用化の過程」にも目が向きます。ペニシリンを発見しただけでは世界は変わらない。量産し、戦場に届け、兵士の傷口に塗るまでの物流がなければ「世界を変えた」とは言えない──こういう発想が、Whyを具体化することで自然に広がるのです。

What:検索キーワードを決める

Whyが決まれば、Whatは具体的になります。「ペニシリン 作り方」で検索し、さらに「ペニシリン 量産 歴史」「フレミング ファイザー 実用化」と広げていく。

ここで重要なのは、一つのキーワードで完結させないことです。最初の検索結果の中から、次に調べるべきキーワードが見つかる。その連鎖を3回繰り返せば、かなり立体的な知識が手に入ります。

How:手段を使い分ける

調べる手段は大きく3つあります。

手段情報品質速度コスト
Web検索低〜中速い無料
図書館遅い無料
書籍購入遅い(電子なら速い)有料

すべての情報を高品質で取得できれば理想ですが、現実には時間が足りません。書くシーンの重要度に応じて使い分けましょう。

物語の核心に関わる設定(主人公の職業の専門知識など)→ 書籍や図書館で深掘り。背景として一瞬だけ触れる描写(街の風景、食事の内容など)→ Web検索で素早く確認。

神は細部に宿るとは言いますが、すべての細部を神レベルにするのは物理的に不可能です。メリハリをつけるのがプロの情報収集です。


コツ2:反対意見を取り入れる

情報収集で最もやりがちなミスは、「自分が書きたい世界に都合のいい情報」だけを集めてしまうことです。

たとえば異世界転生ファンタジーを書きたいと思い、異世界転生ものを読み込んで勉強する。これ自体は正しい。でも「チート無双する勇者の話」だけを読んでいると、視野が狭くなります。

ここで意識的に「反対」を取り込みます。

• 転生してきた勇者に迷惑をかけられるモブの話を読む

• 勇者に対する魔王側の立場を描いた物語を読む

• 魔王を倒す目的の物語と、魔王と共存する目的の物語を比較する

このように、立場の反対・目的の反対を意識的に摂取すると、世界の解像度が跳ね上がります。

勇者目線の物語を書くときに、魔王やモブが生き生きと動くのは、作者がその立場を「知っている」からです。知らなければ、敵はただの障害物になり、モブはただの背景になる。

反対意見を取り入れるとは、自分の作品の「敵キャラ」や「脇役」にも血を通わせるための投資です。


コツ3:アウトプット前提で集める

情報収集はあくまで手段であって、目的ではありません。

調べることが楽しくなって、いつの間にか「調査マニア」になっている──そんな経験はありませんか。私はあります。3時間かけて中世の鎧の種類を調べ上げ、満足感に浸って、結局1行も書かなかった夜が何度もあります。

だからこそ、「これを調べたら、その日のうちに1シーンを書く」と決めておくことが大事です。

アウトプット前提で調べると、情報の取捨選択が自然と上手くなります。「この情報は面白いけど、今書いているシーンには使えない」と判断できるようになる。使えない情報はメモだけ残して先に進む。

最初は拙くても構いません。まずは0から1を作り出すことが、モチベーション的にも一番難しく、一番大事です。0から1を作り出せれば、1から100にするのはそれからで十分です。

処女作で書籍化しなければ価値がないなんて考え方が話題になったこともありますが、0から100をいきなり出せるのは天才だけです。天才以外を切り捨てる世界は辛い。人によって0から1は得意だけど1から100は苦手、という個人差もあります。でも完璧じゃなくても、その人なりの強みがある。

その強みを見つけるためにも、まずは調べて、書いて、世に出す。この循環を回し続けることです。


情報収集のモチベーションは「好き」から生まれる

最後にひとつ補足します。

モチベーションを保って情報収集できるのは、その物事に興味があるからです。人間ドラマが好きな人がSFの科学考証を延々と調べるのはしんどいですし、逆もまた然りです。

だから、情報収集がつらいと感じたら、それは題材選びが間違っている可能性があります。自分が「もっと知りたい」と自然に思えるジャンルで書く。そうすれば情報収集は苦行ではなく、物語をつくるための楽しい冒険になります。


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