セントラルクエスチョンとは|4つのエンディングから物語の結末を決める
「この物語、結局どう終わればいいんだろう」
プロットが行き詰まるとき、多くの場合、結末の設計が曖昧なまま走り出しています。
物語の結末を明確にするための概念がセントラルクエスチョン(CQ)。そしてCQから導かれる4つのエンディングを知れば、結末の選択肢が見えてきます。
セントラルクエスチョン(CQ)とは
セントラルクエスチョンとは、主人公の内面的な問いです。
物語の序盤(三幕構成でいう第1幕の終わり)で、主人公に突きつけられる根本的な問い——これがCQ。
例:
• リコリス・リコイル:「千束は"殺さず"を貫きながら、大切な人を守れるのか?」
• 鬼滅の刃:「炭治郎は禰豆子を人間に戻せるのか?」
• 進撃の巨人:「エレンは"自由"を手に入れられるのか?」
CQは物語全体を貫く一本の糸。読者はCQの答えを知るために読み続けます。
CQと「テーマ」の違い
CQとテーマは混同されがちですが、別物です。
• テーマ:作者が伝えたい抽象的なメッセージ(例:「自由とは何か」)
• CQ:主人公が物語の中で直面する具体的な問い(例:「エレンは自由を手に入れられるか?」)
テーマは抽象、CQは具体。テーマがCQという形で物語に埋め込まれると考えてください。
CQを早く提示する効果
Web小説のデータ分析で、CQを1話目で提示した作品はPV滞在時間が長いという傾向があります。
理由は単純。読者がCQを認識すると「この問いの答えが知りたい」と思い、読み続ける動機が生まれる。CQの提示が3話目、5話目と遅れるほど、その前に離脱される確率が上がります。
なろう系の追放テンプレが1話目で「追い出された→見返す」というCQを提示するのは、理にかなっています。
4種類のエンディング
CQの「答え」には、4つの分類軸があります。常識的に考えると「ハッピーエンド vs バッドエンド」の2択ですが、実はもう少し複雑です。
2つの独立した軸
軸1:CQの達成 / 未達成
• グッドエンド:CQが達成される(→ 禰豆子が人間に戻る)
• バッドエンド:CQが達成されない(→ 禰豆子は人間に戻れない)
軸2:結末の印象
• ハッピーエンド:読後感が明るい
• アンハッピーエンド:読後感が暗い・切ない
この2軸は独立しています。つまり4つの組み合わせが存在します。
「独立」とはどういうことか。CQが達成されたからといって、読後感が必ず明るいとは限らないということです。『まどかマギカ』が典型例で、まどかは魔法少女たちを救うというCQを達成しましたが、その代償として自分の存在が消えた。CQは「グッド」、読後感は「アンハッピー」——このずれが物語に覚えきれない余韻を生みます。逆に、CQは未達成だが主人公が別の幸せを見つける「バッド×ハッピー」も成立します。この「軸の独立性」を意識することで、結末の選択肢が一気に広がります。
4つの組み合わせ
| 結末パターン | CQ達成 | 読後感 | 例 |
|---|---|---|---|
| グッド×ハッピー | 〇 | 明るい | 鬼滅の刃(禰豆子は戻った+皆の未来が開けた) |
| グッド×アンハッピー | 〇 | 切ない | まどかマギカ(まどかは皆を救った+しかし存在が消えた) |
| バッド×ハッピー | × | 明るい | 初期目標は失敗したが、新しい幸せを見つけた系 |
| バッド×アンハッピー | × | 暗い | ⚠ 要注意パターン |
バッド×アンハッピーの禁忌
バッドエンド × アンハッピーエンドの組み合わせは、商業作品ではほぼ使えません。
CQも達成されず、読後感も暗い——読者にとって「読んだ時間を返してくれ」という体験になります。
なろうやカクヨムで「低評価」のコメントがつく作品の多くが、この「バッド×アンハッピー」で終わっています。主人公が負けて、救いもなく、わずかな成長もない——読者は「何のために追いかけてきたのか」と裏切られた気持ちになります。
ただし、例外がないわけではありません。文学作品やホラーでは「不条理で救いのない世界」を描くこと自体がテーマになる場合があります。重要なのは、その結末が「意図的なテーマ」なのか「構成不足」なのかを確認することです。
原則:グッドエンドとハッピーエンド、少なくとも片方は満たすべき。
リコリス・リコイルで読み解く
リコリス・リコイルは複数のCQ解釈が可能な作品です。
CQ解釈A:「千束は"殺さず"を貫けるか?」
→ 答え:YES → グッドエンド + ハッピーエンド
CQ解釈B:「千束は真島を止められるか?」
→ 答え:YES(千束勝利)→ グッドエンド
CQ解釈C:「千束は自分の余命と向き合えるか?」
→ 答え:曖昧に → グッドエンドだが、アンハッピーの余韻も
複数のCQが成立する作品は名作の証です。ひとつのCQしかない物語は「よくできた話」、複数のCQが重層的に絡む物語は「深い話」と評価されます。
作家がバッドエンドを好む理由
創作を続けていると、バッドエンドやアンハッピーエンドに引き寄せられる時期があります。
「ハッピーエンドは陳腐だ」「悲劇のほうが文学的だ」——こうした思考に陥りやすい。
しかし、バッドエンドを選ぶのは技術的に楽な側面があります。困難な状況を設計して、そのまま沈めれば悲劇になる。一方、困難を乗り越えて希望ある結末に着地させるには、より高度な構成力が必要です。
バッドエンドを選ぶ前に、「これは本当にこの物語に最適か? それとも楽をしていないか?」と自問する価値があります。
CQ設計のワークシート
以下のテンプレートをコピーして、自分の物語に当てはめてみてください。ポイントは「4パターンすべてを一度書く」こと。1つだけ考えて満足するのではなく、4つ全部の展開を想像してから「この物語に最もふさわしい」ものを選びます。特に「バッド×ハッピー」の欄を考えることで、思いもよらないオリジナルの着地点が見えてくることがあります。
「主人公は〇〇できるか?」
■ グッド×ハッピー案:
(CQ達成+明るい結末 → どんな展開?)
■ グッド×アンハッピー案:
(CQ達成+切ない結末 → どんな展開?)
■ バッド×ハッピー案:
(CQ未達成+別の幸せ → どんな展開?)
■ 選んだエンディング:
(理由も含めて)
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4パターンすべてを一度書いてみると、「この物語に最もふさわしい結末」が見えてきます。
まとめ
| 概念 | 定義 |
|---|---|
| セントラルクエスチョン | 主人公の内面的な問い。物語全体を貫く一本の糸 |
| グッドエンド | CQが達成される |
| バッドエンド | CQが達成されない |
| ハッピーエンド | 読後感が明るい |
| アンハッピーエンド | 読後感が暗い・切ない |
| 原則 | グッド/ハッピーの少なくとも片方を満たす |
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