小説に飽きた?|飽きっぽさは才能だという話

2019年9月18日

突然ですが、私はとても飽きやすい性格です。

ゲームも飽きた。お酒も飽きた。趣味である創作、小説ですら飽きる時があります。10万字の長編を書いている途中で、5万字あたりでふっと熱が冷める。あの感覚を何度味わったことか。

「飽きっぽい人間は作家に向いていない」──そう言われたこともあります。

でも飽きっぽいと言いながら、私は9冊の本を出しました。なぜ飽き性の人間が本を出し続けられたのか。それは「飽きっぽさ」を欠点ではなく特性として扱う方法を、試行錯誤の末に見つけたからです。


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なぜ人は飽きるのか

飽きの心理を分解すると、3つの要因に行き着きます。

要因1:同じ刺激の飽和

人間の脳は、同じ刺激を繰り返し受けると反応が鈍くなります。これは神経科学的に実証された現象で、「馴化(じゅんか)」と呼ばれます。

小説を書くことに当てはめると、淡々とした日常シーンを何話も続けて書いていると、書き手自身が退屈になる。読者が退屈になる前に、まず書き手が飽きる。これは脳が「新しい刺激をくれ」と叫んでいるサインです。

要因2:「やった」という満足感による弛緩

元の記事で引用した心理──「正しいことをした後は自分に甘くなる」。1日1話投稿した。よし、今日は頑張った。明日は休んでもいいよね──。この弛緩が3日続くと、筆を取ること自体が億劫になります。

これは意志力の問題ではなく、報酬系の問題です。脳が「もう十分やった」という報酬を先払いしてしまうから、続きに対するモチベーションが消える。

要因3:成果が見えないことへの不満

10万字書くという目標に対して1日100字しか進まない時、「このペースで本当に終わるのか?」という不安が飽きに変換されます。Web投稿サイトのPVが伸びない時も同じ。努力に対するリターンが見えないと、脳は「別のことをしたほうが得では?」と判断する。


飽きっぽさが「才能」である理由

ここからが本題です。

飽きっぽい人は、3つの点で創作者として有利です。

有利な点1:展開の引き出しが多い

飽きっぽい人は、1つのジャンルに留まりません。ファンタジーに飽きたらミステリーを読み、ミステリーに飽きたらSFを観る。この「飽きては次へ」の繰り返しが、ジャンル横断的な知識のストックを生みます。

創作のアイデアは「異なるジャンルの知識の掛け合わせ」から生まれます。飽き性の人間は、意識せずにこの掛け合わせの素材を大量に蓄えています。

有利な点2:テンポの速い物語が書ける

自分が飽きるということは、読者も飽きるということです。飽き性の書き手は、自分が退屈だと感じたシーンをダラダラ書き続けることができません。結果として、テンポの良い物語になりやすい。

Web小説の世界では「テンポの速さ」は大きな武器です。読者の離脱ポイントを自分の「飽きセンサー」で事前に検知できるのは、飽き性の人間だけの特技です。

有利な点3:「やめる」ができる

創作において最も危険なのは、つまらない作品を「ここまで書いたから」という理由だけで書き続けることです。サンクコストの罠。飽き性の人間は、この罠にかかりにくい。面白くないと感じたら手を止められる。それは判断力です。


飽き性の私が9冊出すためにやったこと

具体的な対処法を書きます。すべて私自身が実践して効果があったものです。

対策1:飽きる前にプロットを完成させる

飽きは「先が見えない不安」から生まれることが多い。だからプロットだけは、熱量がある最初の段階で最後まで作り切ります。

書いている途中で飽きが来ても、プロットがあれば「あと何シーンで終わる」が分かります。ゴールが見えている苦痛と、ゴールが見えない苦痛は、まるで別物です。

対策2:変化に富んだ展開を意識する

元の記事で「変化に富んだ展開の早い物語を書く」と書きました。これは自分の飽き対策であると同時に、読者へのサービスでもあります。

具体的には、同じトーンのシーンを3つ以上連続させない。日常シーンの後にはバトルか転機を挟む。会話劇が3ページ続いたら場面転換する。自分が「飽きそう」と感じたら、そこが転換点です。

対策3:数値目標は1日単位にしない

「1日1,000字」という目標を立てると、達成した日に満足し、翌日サボる。これを防ぐために、私は週単位で目標を立てました。「週に5,000字」であれば、月曜に3,000字書いて火水を休んでも、木金で2,000字書けば達成です。

飽き性の人間にとって、毎日同じことをする義務感は天敵です。ムラがあることを前提にした目標設計のほうが、結果的に継続できます。

対策4:並行して別の作品を書く

これは賛否が分かれますが、私にとっては効果がありました。メインの長編に飽きたら、息抜きとして短編を書く。短編に飽きたらメインに戻る。

ただし注意が必要です。並行執筆は「どちらも中途半端になるリスク」があります。私の場合は「メインが1本、サブが1本」以上は増やさないルールを設けていました。

対策5:完成のハードルを下げる

10万字の長編を1作完成させるより、2,000字の短編を5本完成させるほうが、飽き性の人間には向いています。「完成させた」という報酬が頻繁に得られるから。

最初から大作を目指す必要はありません。短編で「完成の快感」を何度も味わってから、長編に挑戦する。このステップを踏むだけで、飽き性による挫折は大幅に減ります。


飽きは「終わり」ではなく「信号」

飽きたという感覚が来た時、多くの人は「自分には向いていないのかも」と感じます。でもそれは違います。

飽きは終わりの合図ではなく、「何かを変える必要がある」という信号です。展開がマンネリになっていないか。同じタイプのシーンが続いていないか。書いている自分自身が、今この場面を楽しめているか。

信号を無視して走り続ければ事故が起きます。信号を見て立ち止まり、方向を調整する。飽き性の人間がやるべきことは、飽きを克服することではなく、飽きに従って軌道修正することです。

9冊の本を出した飽き性の人間として断言します。飽きっぽさは弱点ではなく、創作者にとってのセンサーです。上手く使えば、あなたの物語はもっと面白くなります。


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